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“9ドルコンピューター”の衝撃 クラウドファンドに飛び出した「CHIP」

 アイデア次第で巨額の資金調達もできるクラウドファンド「Kickstarter」で、また一つ画期的な製品が産声を上げた。ベンチャーのNext Thingが発表した9ドルのコンピューター「CHIP」が記録的な資金と支援者を獲得ようとしている。締め切りまで20日間を残すところで、調達目標の5万ドルに対して27倍の135万ドルを集め、支援者(backers)は2万6000人に達した。9ドルコンピューターのインパクトは――。

電源と出入力デバイスがあれば動作

 「CHIP」は、クレジットカードよりも小さい6×4センチのボードコンピューターで、CPU、RAM、フルサイズのUSB、コンポジットビデオなどのI/Oを備える。スペックは、1GHzのARMコアプロセッサ「Allwinner A13」、512MBのRAM、4GBのストレージに、Wi-FiとBluetoothを内蔵し、そのままでワイヤレスにも対応する。ストレージには、Debian Linuxをプリロードし、オープンソースのオフィススイート「LibreOffice」が立ち上がる。

 9ドルのCHIPは電源と出入力デバイスを接続すればそれだけで動作するが、拡張用のオプションパーツも用意されている。例えば、バッテリー(追加10ドル)、VGAアダプター(同10ドル)、HDMIアダプター(同15ドル)があり、さらに、4.3インチ液晶やキーボード、バッテリーが一体になったインターフェイス&ケース「Pocket CHIP」(同49ドル)を合わせれば、「ゲームボーイ」風のミニパソコンになる。

 想定される用途は広い。Webチェックや、LibreOfficeを立ち上げてのちょっとしたオフィスワーク、教育アプリケーション、レトロゲーム、音楽・MIDIプレーヤーなどに利用できる。また、1000を超えるオープンソースのアプリケーションも動作させることができるという立派なコンピューターだ。

 9ドルという価格は、このスペックとしては例のない安価だろう。Next Thingの説明によると、CHIPが安価にできる理由はずばり「量」。一般的なチップを使い、数万の単位で発注することで単価を引き下げるという。製造を担当するのは中国広東省のチップメーカー、Allwinner Technology(珠海全志科技)だ。

 Allwinnerのチップは、50ドル程度の安価なAndroidタブレットなどに採用されており、同社は2013年からタブレットでは世界2位の地位にある。このAllwinnerが「Next Thingの意図を理解し、全面的にサポートしてくれた」という。

(行宮翔太=Infostand)