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IntelがVR市場に参入 オープンな「Project Alloy」

PCからの脱却

 Project Alloyは新鮮な衝撃を与えたが、Intelにとって重要な使命も担っている。Wall Street Journalは、PC時代に地位を確立した同社の運命が「PC業界の健康状態に左右されてきた」とする。だが、PCがもはや主導的なデバイスではないことは明らかで、市場は縮小、もしくは停滞状態だ。Intelの第2四半期の純利益は前年同期の半分と落ち込み、従業員の約1割にあたる1万2000人を2017年中旬までに削減する計画も発表している。

 Krzanich氏は就任以来、PC依存からの脱却を図っている。中でもIoTは重要な分野であり、ウェアラブルにも投資している。Project Alloyの発表は、Intelが半年に一度開催する開発者イベント「IDF(Intel Developer Forum)」で行われた。Fast Companyは「これまでIDFといえば、PCの世界の次のトレンドを知る場だった。だが、今年のIDFは違う役割を持っていた。Intelは世界のPCプロセッサが大きな事業ではなくなり、成長エンジンにならない将来に向けて自社を再開発していることを見せようとした」と、その変容に注目している。

 Krzanich氏の基調講演ではProject Alloyのほか、ロボット向けモジュール「Euclid」(ユークリッド)も披露された。基調講演の模様を詳細に報じたPC Magazineによると、自動運転車のセッションでBMWの幹部が登場し、産業IoTではGEのCEO、Jeff Immelt氏をステージに招いた。盟友Microsoftとは、PCでなくVRで新たに提携した。

 だが、VR関連分野への参入を明らかにしているチップメーカーはIntelだけでなく、同社はNVIDIA、AMD、Qualcommなどと争うことになる。Wall Street JournalはIntelがNVIDIAなどのようにハイエンドのグラフィックチップを得意としていない点に触れ、Peoject Alloyで利用されるチップは、まだ登場していない製品だろうとのアナリストの予想を紹介している。

 Intelにとって“PCのIntel”からの脱却は待ったなしだ。PCの次に成長カテゴリとなったモバイル(スマートフォン)でIntelはARMの後塵を拝したままだ。次のトレンドに乗り遅れるわけにはいかない。Fast Companyがスマートフォンで独占できなかった点についてKrzanich氏に質したところ、同氏は次のように答えたという。

 「自社独自のビジョンを確立するのではなく、さまざまな業界標準の企業と協業することが大切だという教訓を得た」。Intelはスマートフォンの教訓を生かそうとしているようだ。