■ マイクロソフトのLive戦略はUser In Control
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オンラインサービス事業部 事業部長兼プロダクトマネージメントグループ ディレクターの浅川秀治氏
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―今日はよろしくお願いいたします。
浅川氏
マイクロソフト オンラインサービス事業部長の浅川です。よろしくお願いします。11月1日から現職に就きまして、プロダクトマネージメントグループのディレクターも兼任しております。
―オンラインサービス事業部は、MSNとWindows Liveの2つのコンシューマ向けネットサービスを担当しているとお伺いしていますが、まずLiveについて、どのようなサービスなのか説明いただけますか?
浅川氏
Live戦略としてわれわれが考えているのは、ネットの世界だけで完結するというのではなく、ソフトウェアとサービスをうまく組み合わせていく、というものです。既存のOSやOfficeとの連携を考えていかなければならないと思っているわけです。
―ネットですべてを巻き取る、というのは、たとえばGoogleの立場のようなものと思います。あるいはSaaSのような考え方ですね。
浅川氏
そうです。われわれの考え方は、Software as a Serviceというより、Software+Serviceです。今後リリースされる予定のVista日本語版とのスムーズな連携を図っていきます。
また、Windows Liveのサービス戦略を一言でいうと、User In Controlということです。Web 2.0においては、ユーザー参加型のサービスであったり、リスティング広告であったり、ブログといったさまざまなサービスやモデルが存在します。そういう要素はこれまでも、これからも、とても重要な部分であるとは考えていますが、実はそれ以上に、参加するユーザーにいかにいま以上にこのプラットフォームを好き勝手に利用してもらえるか、ということなんです。つまり、コンテンツのバリエーションを増やして、その中から好きなものをピックアップしてもらうというのではなく、もっと深いところでコントロールしてもらいたいわけです。それを実現するためのコンセプトがUser In Controlです。
―具体的にいうと?
浅川氏
Windows Liveでは、Informed、つまり受信できる情報の利用方法として、Liveサーチという検索サービスを提供します。Connected、つまりユーザー同士をつなぐためのサービスとしてはLiveメールなどのコミュニケーションツールを提供します。それらを安全に使っていただくために、Protectedというコンセプトのもと、OneCareというセキュリティサービスを提供していきます。これらをWindowsとシームレスにインテグレートすることがわれわれの価値になります。
さらに、マイクロソフトは多くのデベロッパーとおつきあいさせていただいており、OS上にさまざまなガジェットを作っていただけています。APIによるマッシュアップではなく、OSと密接に連携した機能を作っていただけるのがわれわれの強みです。たとえば、gallery.live.comのサイトでは、デベロッパーやユーザーが作ったさまざまな素晴らしいツールを公開しています。多くの皆様にGalleryに参加していただいて、コミュニティとして盛り上げたいですね。
まとめますと、User In Controlは、パーソナライゼーションやカスタマイズ以上のユーザー体験を目指す考えであり、ユーザー参加型よりも、ユーザー主導型を実現するためのコンセプトです。検索ひとつとっても、APIを利用したプログラムというよりは、サーチエンジン自体をカスタマイズするためのインデックスを提供し、マルチなサイトを自由に検索できるようにしようと考えています。
■ OSとWebブラウザ、Webをシームレスに
―Windows LiveはIEでしか動かないんですね? Web 2.0的企業は、Webがプラットフォームであるという認識でサービス構築していますが、WebブラウザやOSに準拠するということは、御社はOS+Webブラウザがプラットフォームであるとお考えになっているということでしょうか?
浅川氏
OSはともかく、Webブラウザは確かに現時点ではIEを優先していますが、それは自社ブラウザということではなく、ユーザーシェアが多いから優先しているということに過ぎません。Webがプラットフォームであるという考え方にも異論はないのです。しかし、ユーザー体験を思えば、Webですべてが完結しているわけでもありません。たとえばイメージ検索をしようと思えば、Web上の検索だけではなく、デスクトップ検索だって必要ですね。デスクトップとWebの検索が連動して初めて役に立つわけです。あるいはOfficeで作ったドキュメントをサーチする場合でも一緒です。
また、プラットフォームであれば、PCとモバイルのプラットフォームは違います。マルチプラットフォームを考えねばならないわけです。
―Web専業のサービス業者と比べて、不利であることはありませんか?
浅川氏
Webブラウザの中だけで考えると、他社と同じ立場になりますね。ただ、実際にはOS上、あるいはOfficeなどのアプリ上での作業と、Webブラウザ上の作業は別のレイヤーで、まだまだシームレスではないわけです。つまり、OSとWebブラウザ、そしてその上のWebの世界を区切りのないものに変えることができるのはわれわれだけのように思います。
―デスクトップ検索についてはGoogleもかなり熱心に進めています。あるいはシェアは少ないとはいえ御社と同じスタンスではAppleがいます。特にエンターテイメントの領域ではAppleは脅威になっているのでは?
浅川氏
われわれにとってどこの企業がライバルということはないのですが、ともかくデジタルワークスタイルやライフスタイルを想起できるのはマイクロソフトの強みです。かなり有利であると思いますね。他社はWebブラウザの中で一所懸命にやっているわけで、限界を感じているのではないでしょうか。
エンターテインメントの領域でいうと、われわれもWindows Media Playerというアプリケーションの普及に取り組んでいますし、(iPodに相当する音楽プレーヤーである)Zuneなどのリリースを米国では既に行っています。デジタルライフの中では、テキストだけはなく、画像、音楽などの取り扱いは非常に重要です。コミュニケーションやセキュリティ、検索、などはベースに過ぎないわけで、そのうえでそうしたコンテンツを動かしていかないと。
―最後の質問になりますが、MSNとLiveはどのように分けていくのでしょう? 初心者には分かりづらいと思うのですが。
浅川氏
Liveも今後は広告をうちますよ。検索、メッセンジャー等を訴求していきます。われわれがユーザーを混同させるようなメッセージングをすることはありえないですね。MSNはロングテールのヘッド部分を担うサービスですし、Liveはテール部分をカバーするサービスになります。
ただ、今後はマイクロソフト全体としては、Liveにフォーカスしたプロモーションをしていくことになるとは思います。
―分かりました。本日はありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/11/01 08:49
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