Enterprise Watch
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連載終了と2.0化のお知らせ
[2007/01/23]
トヨタ川本氏に聞く、bBのプロモーションで見せたWebキャンペーンの狙い
[2007/01/23]
「B2Cサイトとしてロングテールは強く意識」ケンコーコム後藤社長
[2006/12/27]
「海外旅行商品の取り扱いナンバーワンを目指す」GTO後藤氏
[2006/12/26]
「iタウンページは検索ビジネス」NTT BJ小畠氏
[2006/12/05]
マガコマースを実現する雑誌専門オンライン書店「Fujisan.co.jp」西野社長
[2006/11/28]
ベクター梶並社長、「シェアウェア的なサービスを展開する」
[2006/11/21]
「海外に自分たちのサービスを出すのが次のテーマ」ネットエイジグループ西川社長
[2006/11/07]
「Windows Liveは、ソフトウェア+サービスこそが本質」マイクロソフト浅川氏
[2006/11/01]
「旅行をもっとたのしくするインタラクティブメディアを目指す」フォートラベル津田社長
[2006/10/13]
「テクノロジーよりも人となりが見えるサービスを提供」エキサイト木下氏
[2006/10/06]
「RSS広告の高度化を担う」GMOアドネットワークス村井取締役
[2006/09/26]
「リッチメディアをケータイで湯水のように使ってもらえる世界を作りたい」フロントメディア市川社長
[2006/09/14]
「インターネット上に『どこでもドア』を作りたい」マイネット・ジャパン上原社長
[2006/09/12]
「ネットでビジネスを加速させる」アクセルマーク田島氏
[2006/09/05]
「企業の2.0的流れをスムーズに支援する」、日本オラクル三原氏
[2006/08/22]
「PCをはるかに超えるトラフィックを持つケータイの世界」DeNA守安氏
[2006/08/08]
「キャリアに縛られず提供できるのがjigブラウザのよいところ」、jig.jp岸氏
[2006/07/28]
「企業のニュースを翻訳してPRするのがNews2u」ニューズ・ツー・ユー神原社長
[2006/07/25]
Lunascape近藤CEO、「多様性を大事にしたい」
[2006/07/21]
「消費者のこだわりに応える編集力を重要視」オールアバウト江幡社長
[2006/07/18]
「“ASPは使えない”という既成概念がコンペティター」セールスフォース宇陀社長
[2006/07/04]
ニッチビジネスモデルでグローバルビジネスを目指す-エニグモ須田氏&田中氏
[2006/06/30]
「消費者と企業を結びつけていくインフラを提供」、レッドクルーズ増田CEO
[2006/06/13]
「サイボウズはイントラネット2.0にコミットする」サイボウズ札辻執行役員
[2006/06/09]
「Pheedoは、Web 2.0的企業のビジネスモデルを支援する」トランスコスモス長谷川氏
[2006/06/06]
ミクシィ笠原社長、「世の中にない、新しい価値を生み出す会社に」
[2006/05/30]
「Movable Typeで世の中のWebをXHTML+CSSに変えていきたい」スカイアークシステム小林社長
[2006/05/26]
ブログが生むパラダイムシフト=Web 2.0?-シックス・アパート関社長
[2006/05/23]
携帯電話とRSSリーダーでフィードサーフしよう-エル・カミノ・リアル木寺社長
[2006/05/19]
ネット企業のラボとソフトウェア企業のラボの違いとは-サイボウズ・ラボ奥一穂氏
[2006/05/16]
三井物産ヴィクシア坂田社長に聞く「Feedsterの日本参入でFeed検索は普及するか?」
[2006/04/28]
ウチダスペクトラム紀平氏「エンタープライズサーチこそ企業内Web 2.0のプラットフォーム」
[2006/04/25]
「メディアソリューションをワンストップで」インフォバーン小林会長
[2006/04/18]
「ショッピングサーチのトップ企業へ」ECナビ宇佐美社長
[2006/04/14]
「化粧品購買原因をデータベース化する」アイスタイル吉松社長
[2006/04/11]
フィードパス小川氏「Feedsphereのトップ企業に」
[2006/04/04]
「ネットとテレビの視聴体験を融合しよう」メタキャスト井上CEO
[2006/03/31]
サムライワークス吉尾取締役「デスクトップからユーザーを支援する」
[2006/03/28]
検索エンジンの次のトレンドはフォークソノミーとアルゴリズムの組み合わせ?-ヤフー井上氏
[2006/03/16]
ネットエイジ後藤取締役「Idealabがロールモデル」
[2006/03/14]
アスクドットジェーピー樋口副社長「Ask.jpはたのしさを提供する検索エンジン」
[2006/03/10]
グリー田中社長、「継続してこそ、世の中に影響を与えることができる」
[2006/03/07]
ゆめみ片岡会長「ニッチタイムをいかせ!」
[2006/03/01]
フェンリル牧野氏「SleipnirはF1カーのようなWebブラウザ」
[2006/02/21]
gooは果たしてWeb 2.0なのか?―gooブログ村井チーフプロデューサーに聞く
[2006/02/16]
グルコース大向氏、「Webを使う“ヒト”の変化の結果がWeb 2.0」
[2006/02/14]
ドリコム内藤社長「Web 2.0はソーシャルデータベース」
[2006/02/10]
ルート塚田社長「企業のRSS化をお手伝いする」
[2006/02/07]

Lunascape近藤CEO、「多様性を大事にしたい」


 今回のゲストは、国産WebブラウザメーカーのLunascape株式会社 代表取締役兼CEOの近藤秀和氏です。Webブラウザメーカーとしては、フェンリル以来の登場になります。OSからWebブラウザにプラットフォームが移り、それが今ではWebの上にソフトウェアやデータが存在する、つまりWebがプラットフォーム化している、という考え方がWeb 2.0です。それでは、Webブラウザメーカーはどういう位置づけになるのでしょうか?


ソニーを辞して起業

代表取締役兼CEOの近藤秀和氏
―恒例ですが、自己紹介をお願いできますか?

近藤氏
 Lunascapeの近藤です。もともと、2001年8月にLunascapeの最初のバージョンをリリースして、配布したことから始まっていますが、そのときはまだビジネスをやろうと考えていたわけではなくて、大学院生のときの研究で、プラットフォームとしてWebブラウザが必要だったので、作った、というのが本当のところです。たまたま、配布し始めたらインプレス(現、Impress Watch)の「窓の杜」でとりあげられたことで、一年未満で10万ユーザーにまで達して、話題になりました。

 そのあと、ソニーに就職したんですよ、いったん。(創業者である)井深さんのソニースピリットに共感していて、ソフトウェアエンジニアとしてソニーなら何かできるかと思ったので入社したんです。

 ところが僕が入ったときのソニーは、やっぱりハードメーカーだったんですね、コンピュータサイエンス学科からの出身からすると、ちょっとダメかな、この会社じゃないと思いました。

 当時の社長も技術者ではなくビジネス思考で、優秀な技術者が辞めていたようにも思います。で、2003年3月に辞めて、とりあえず早稲田大学の大学院の博士課程に入って様子をみていたんですが、その後、IPA未踏ソフトに応募して、そこでお金をいただいたことで自分でやるためのメドがたってきたわけです。2004年の8月だったかな。


―Googleの創業者たちの起業の流れに通じるものがありますね。

近藤氏
 そうですか?(笑)確かに僕は、2001年にGoogleに関する論文を出しています。「サーチエンジンGoogle」というタイトルなんですが、当時はそこそこ話題になりました。評価された点は、技術のことより、ビジネスモデルからGoogleが成長する過程を書いたところでしたね。Googleの創業者たちは、自分たちで検索エンジンを作って、2テラバイトのサーバーをつくって、それで30億円投資してもらった。これはすごいな、と。自分で起業したのも、そんな思いが動機にもなったのかもしれません。


Webブラウザがコアではなく、Webブラウザを作る技術がコア

―最初の資金はIPA未踏ソフトの援助だったわけですね?

近藤氏
 ええ。


―従業員数は?

近藤氏
 今は15名ほどです。


―事業モデルを教えてください。

近藤氏
 ひとつはWebブラウザというものを、Webよりも前にあるものとしてみたときに、Yahoo!などのポータルが展開しているような広告モデルが成り立つと思いました。で、サードパーティのツールバーのバンドルや、検索窓をWebブラウザに設けて、広告を出していただこうと。Webブラウザのビジネスは、有償販売か、当時Operaがやっていた広告のモデル、あるいはマイクロソフトにおけるInternet Explorer(IE)のように他のビジネスモデルとのセットしかなかったと思います。もう少し上手な広告モデルを展開することは、IE 6が進化していない状況であれば、チャンスがあると思えたんです。


―なるほど。

近藤氏
 そのアイデアを膨らませるために、コンテンツマッチ広告の分野ではRSS広告社さんと提携して、実証実験を進めています。そして、もうひとつのビジネスモデルは、WebブラウザのOEM提供です。われわれは、会社としてのコアを、Webブラウザを作る技術そのものであって、Webブラウザそのものがコアであるとは考えていないのです。だから、他社ブランドでの展開を自然と考えました。トヨタさんに提供しているTOYOTA browserがいい例ですね。

 Web 2.0の考え方にからむと思うんですが、Webブラウザもただ一つである必要はないと思っています。Webブラウザはネットの入り口ですが、もっと多様であってもいいはずです。ユーザーの好みに合わせたり、企業側のブランドに合わせたWebブラウザがあっていい。そこで、ブランディング・プロモーションのツールとして、Lunascapeを企業にOEM提供することを考えたわけです。


―その製品の特徴はなんでしょう? エンジンは? Macには対応してないんですよね。

近藤氏
 IEもGeckoも使っています。Macでは動かないですね(笑)。

 特徴としては、タブ型、はいまさらかな(笑)。まあ、まずはIEとの互換性でしょうね。IEのサイドバーやツールバープラグインはすべて使えるんですが、これはIE 7でさえうまくいってないんですよ(笑)。Firefoxのプラグインもまあまあ使える、だからユーザーに親切で、難しくない、といえると思います。

 RSSリーダー機能もついています。お気に入りをクリックするとポップアップします。RSSだとは意識させたくないですけど、FirefoxやSafariよりは使いやすいと思いますよ。


ケータイ版Webブラウザには興味がない

―国内のシェアは?

近藤氏
 シェアは国内数パーセントくらいでしょうね。


―競合相手は誰でしょう? 他のWebブラウザをどう意識しますか?

近藤氏
 あまり意識しませんが。IE 6はタブじゃないし、RSS機能がないから自然に乗り換えてくれると考えています。IE 7は、機能アップしていますが、第三の切り口(トヨタの例のように、ブランデッドされたもの)で勝負できるかなと。

 同じWebブラウザでもマイクロソフトのものはOSに近いと思うんですよ。でも、われわれのWebブラウザはユーザーに近いところにあることが大きな違いですね。


―RSSリーダーは競合であると思いませんか?

近藤氏
 いや、方向性は違うでしょう。分野が違うというべきかな。RSSを読むことに特化したものであって、Webブラウザとは別物と考えます。


―では、Webブラウザとはなにか、という問いにはどうお答えになりますか?

近藤氏
 ネットへの入口、ですね。

 ただそれはHTMLではなくてもいい、フルフラッシュのWebブラウザがあってもいい。日本語を縦に表示してもいい、そういうWebブラウザがあってもいい、と考えています。


―今後の御社の方向性を教えてください。

近藤氏
 われわれは、Webブラウザ制作に特化するとともに、それを支援するサーバーシステムの開発に集中していくつもりです。


―Webブラウザはわかりますが、サーバーシステムとはなんでしょうか?

近藤氏
 GoogleはWeb上ですべて解決しようとしていますが、われわれはクライアントソフトも必要だと考えています。とはいえ、クライアントソフトだけでもだめで、サーバーサイドからの支援システムが必要になるとは思っています。RSSフィードの共有などはサーバーサイドでないとだめでしょう。


―なるほど、そういう意味ですね。ケータイ用のWebブラウザには興味ないですか?

近藤氏
 ないですね。日本の場合、キャリアが強すぎて自由がないですから。ケータイが全部Windowsベースになったらやりますよ。


―今の資本金はまだ少ないとお聞きしましたが、資金集めはしないのですか?

近藤氏
 今は足りてます。ただ、事業モデルとしては、今後戦うとすればマイクロソフトだったりGoogleに、突きつめるとなってしまうので、資金需要もでてくるかもしれないですね。タブブラウザというと、正直知名度はどんぐりの背比べです。非IT業種では誰も知らないんじゃないですかね。アクティブなネットユーザーは日本には1000万人もいないのではないかなあ? その意味で、すそ野を広げたいと思ってはいますね。そういうすそ野を広げていく最初のソフトがWebブラウザなんだろうと、思っています。


―なるほど。そういえば、社名の由来を聞いてなかったです。

近藤氏
 Lunaは月、IEは地球のモチーフなので、われわれは月でいこうかと。Scapeはネットスケープからとりました。


Web 2.0にはいまさら感があるが、APIの公開はありがたい

―Web 2.0というトレンドについてお聞きしておきましょう。

近藤氏
 Web 2.0自体には懐疑的な立場です。概念をまとめたということは意味があるが、いまさら感はあるかな、と。みんながいっせいにそちらに動き出したことはいいことなんですけど。ただ、意味するところはネットのあるべき姿ではあるし、トレンドとしてYahoo!やGoogleがAPIを公開してくれるようになったので、Webブラウザ側としてはありがたいと感じています。


―わかりました。では、最後になにか言っておきたいことがあれば、お願いします。

近藤氏
 そうですね、では学生に向けて。

 みんな、まだまだ大企業志向だけど、もっと多様性があってもいいと思っています。大企業に入って辞めたくなった人から、よく相談受けるんですけど、まず自分でやってみれば?ということは言っておきたいですね。ベンチャー業界を盛り上げたいという気分です。


―近藤さん自身はベンチャーの経営者として、いまはどんな気分でしょう?

近藤氏
 僕自身は、もし(アメリカのように)優秀なプロの経営者がいて、僕と代わってくれるならすぐに代わります。すぐ代わります、ほんとに(笑)。CTOでいるほうがたのしい。やはり僕はエンジニアなんですね。経営を優秀な方に任せられたら、どんなにいいか、と思っています。


―わかりました(笑)。本日はどうもありがとうございました。




小川 浩(おがわ ひろし)
フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。

2006/07/21 00:00

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