「富士通ならではの垂直統合を強みにクラウドを推進」
山本正已社長が経営方針を説明

2015年度のクラウドビジネスは1兆3000億円の売り上げ規模に


 富士通株式会社は9日、2010年度経営方針説明を行った。

富士通の山本正已社長

 そのなかで、富士通の山本正已社長は、「2015年度にはクラウドサービスの市場構成比が20%、2020年度に50%という予測があるが、富士通はこの上を行きたい。2015年度にはテクノロジーソリューション事業において、30%がクラウドビジネスが占めるだろう。それに向けた投資を行っていきたい」と語り、「2015年度にはクラウドビジネスで、1兆3000億円~1兆5000億円の売り上げ規模をイメージしている」とした。

 また、「過去数年に渡る構造改革の成果により、赤字のビジネスセグメントがなくなり、有利子負債も過去数10年で最低レベルとなった。下期からの回復基調を考えると、富士通にとって守りから攻めにシフトする絶好のチャンスを迎えた。ビジネス展開の柱を、攻めの経営とする」と発言。クラウドビジネスの強化や、グローバル化への取り組みを強化する姿勢を示した。

 2010年度の計画は、すでに公表通り、売上高で前年比2.6%増の4兆8000億円、営業利益で96.2%増の1850億円、経常利益が139.1%増の1700億円、当期純利益が2.2%増の950億円とした。また、2011年度には売上高5兆円、営業利益2500億円、当期純利益1300億円。営業利益率で5%以上、海外売上高比率で40%以上を目指す。

 2010年度の営業利益1850億円の達成に向けては、「攻めの構造改革」を打ち出し、増収増益基調の確立による「本業の収益力強化」、「クラウド関連ビジネスの立ち上げを加速」によって、本業で550億円の増収を図るとする一方、2011年度の営業利益2500億円の目標については、「攻めの成長シナリオ」を打ち出し、「真のグローバル化の加速」、ヒューマン・セントリックなインテリジェント・ソサエティによる「新しいサービスビジネスの創造」に取り組むことで、本業だけで650億円を増加させ、「2500億円の営業利益達成に、全社をあげて取り組んでいく」とした。2011年度の増益の650億円のうち、100億円が新たなビジネスによるものとしている。

攻めの経営を打ち出す攻めの構造改革
攻めの成長シナリオ2011年度の目標達成に向けた計画
IAサーバーは、2012年までにグローバルで50万台出荷をターゲットにする

 一方、IAサーバーに関しては、全世界50万台の出荷目標の旗は降ろさなかったものの、これまで2010年度としていた目標を「中期目標」と置き換え、2012年度までに達成する計画に変更した。

 2010年度は国内で15万台のIAサーバーを出荷。シェア1位の獲得を目指すほか、中期計画では2012年度までに20万台を目指す。

 「IAサーバーは単体でビジネスを考えるのではなく、波及効果を期待している。IAサーバーが1台売れると、垂直統合を展開する富士通では売上高で4倍の波及がある。現在、全世界のIAサーバーの出荷実績は25万台。50万台になればその2倍となり、そこに4倍の波及効果がある」とした。

 さらに、PC事業に関しては、2010年度は全世界580万台(2009年度実績で563万台)を目標としているが、「将来的には全世界1000万台を目指し、グローバルでのボリューム確保に取り組む。富士通テクノロジーソリューションズとの統合、中国を中心とした新興国市場向け低価格製品の投入、PCと携帯電話のシナジー端末の投入を経過している。1000万台の目標に向かって、中国、インド、ブラジルといった新興国のビジネスを拡大する」と語った。

 

クラウド事業に注力、富士通ならではの垂直統合を強みとした展開を進めていく

 今回の事業方針説明では、クラウド事業に関して時間を割いたのが特徴だといえる。

 山本社長は、クラウド時代の新たなサービスの形として、「これまでは、サービスとプロダクトがそれぞれに拡大するという事業の形だったが、今後は、強いプロダクトとテクノロジーが支える総合サービスをけん引役として、富士通ならではの垂直統合を強みとした展開を進めていく」とした。

 垂直統合の強みとしては、「コンピューティング技術、ネットワーク技術、運用管理技術・ノウハウのすべてを富士通は持っており、これらの垂直統合型モデルにより、高い信頼性を実現できる。安心、安全、環境に配慮したトラステッドなクラウドを提供できる」とした。

クラウド時代の新しいサービスモデル確立を目指す富士通の強みである「垂直統合」
クラウド基盤の上で、新しいサービスを提供するクラウド関連ビジネスの立ち上げを加速

 クラウド・コンピューティングをはじめとするサービス事業を、中期的な成長の柱ととらえて、2010年度のサービス事業における営業利益を、前年度から388億円引き上げ、過去最高益となる1700億円とし、営業利益率を6.5%にまで高める。

 「ソリューション/SIにおいては、攻めのクラウドビジネスを推進する。クラウド・スペシャリストを1000人育成して、クラウド時代に即した新たな開発手法に対応できる人材を育成する。また、インフラサービスではソーシングビジネスの確立とともに、グローバルクラウド事業の展開を図る」という。

クラウドプラットフォームのグローバル展開

 クラウドプラットフォームの展開については、2010年度中に、英国、オーストラリア、シンガポール、ドイツ、米国の海外5拠点に、日本と同じ品質を持ったデータセンターを開設する計画をこれまでにも明らかにしていたが、新たに2011年度中に中国南部に、政府機関との協業で数10億円を投資したデータセンターを新たに開設することを明らかにした。

 「すでにくわ入れが終了しており、データセンターの建設に着手する。2011年度の稼働を目指す」とした。

 サービス事業においては、欧州でサービスモデルを再編。サービスを提供する富士通サービスと、プロダクトを展開する富士通テクノロジーソリューションズとを、地域ごとの営業体制として、サービスの傘の下にプロダクト・ソリューション事業を配置する形とした。「日本、欧州で新たなサービスモデルが構築でき、これを今後はグローバルに展開していく」とした。

 また、フィールド・イノベータが300人体制に拡大し、これらを通じて149社356件の取り組み実績があること、顧客とのリレーション強化活動「ACTION 5」の成果や、パートナーとの協業による中堅企業向けフォーメーションの確立、グローバルでの顧客サポート体制の強化などに取り組む。

システムプラットフォームの2010年度目標

 なお、システムプラットフォーム事業においては、IAサーバーの、全世界50万台の販売規模への拡大に加え、UINXサーバーでは、Oracle/Sunとのパートナーシップの強化、ストレージについては海外の戦略的アライアンスを推進するとした。ネットワークについては、新規サービスビジネスの立ち上げなどに取り組むという。

 これにより、システムプラットフォーム事業では2010年度には前年比236億円増加の450億円の営業利益を計画している。

ユビキタスプラットフォームの2010年度目標

 一方、ユビキタスプロダクトでは、PC事業のグローバル展開強化のほか、携帯電話ビジネスでは、ドコモ向け端末でのナンバーワンシェアの堅持、東芝のモバイル事業の統合などがあるものの、29億円減少の200億円の営業利益を目指す。営業利益率は2.4%となる。

 デバイスソリューション事業は、構造改革に引き続き取り組むことで、営業利益では387億円増加の300億円と黒字転換を計画している。

 山本社長は、「変革への挑戦は富士通のDNAである。構造改革の手は緩めない」とし、さらなる体質改善、利益率向上に向けて、攻めの構造改革を継続すると語った。

攻めの成長シナリオのマイルストーン2011年の中期目標は堅持する
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