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AIファクトリーの構築期間を短縮する、Vertivのモジュラーデータセンター
2026年9月28日 09:00
データセンター向けインフラをグローバルに展開するVertivは、2025年2月に日本法人を設立した。日本における事業の現状や主力製品について、カントリープレジデントの倉橋健氏に伺った。
データセンターインフラのVertivが日本法人を設立
米国オハイオ州に本拠地を置くVertivは、かつて米エマソン・エレクトリック(Emerson Electric)の一部門だった「エマソン・ネットワークパワー(Emerson Network Power)」が、2016年に独立した会社だ。エマソン・ネットワークパワーが手がけていた電源装置(UPS)や冷却システム(空調)などを引き継ぎ、データセンター向けインフラをグローバルに展開している。
日本においては、当初は代理店販売を行っていたが、日本におけるデータセンター市場の伸長を受け、2025年2月に日本法人であるバーティブジャパン合同会社を設立。同年5月に倉橋健氏がカントリープレジデントに就任している。
「Vertiv Japan設立から約1年半ですが、まずはグローバルアカウントのお客様の需要にお応えするだけで、当初予定を上回る受注をいただいています。日本には電源や空調の非常に強いメーカーがいらっしゃいますが、AIデータセンターでGPUを使うとなると、例えばCDU(Coolant Distribution Unit:冷却液分配装置)など、それに適応したファシリティ側の設備が必要になります。
そうなると、我々の出番と言いますか、お手伝いできる部分が増えてきます。日本のお客様からのお問い合わせも非常に多くなってきましたので、そちらにも力を入れていこうと考えているところです」(倉橋氏)
また、Vertivは、AIデータセンターの需要拡大に伴う「電力」と「冷却(熱管理)」の強化を目的に、近年複数の戦略的買収を行っている。マイルストーンとなっているのは、2023年にCDUの会社である英国のCoolTeraを買収したことだ。その後、2024年に中国BSEからチラー(ターボ冷凍機)の技術と資産を買収、さらに2025年にはPurgeRiteという米国の水処理の会社を買収した。これは、水冷サーバーの冷却水の水質管理のためだという。
「二次冷却水はプロピレングリコールですが、液体なので機械というよりケミカルの領域になります。配管、洗浄、クーラントの注入、運用後の水質検査、問題発生時の対応まで、一貫して対応します」(倉橋氏)
さらに今年に入って、イタリアのThermoKeyというドライクーラーの会社を買収している。また、今年買収したStrategic Thermal Labsはコールドプレートの会社だ。これは、コールドプレートを販売するということ以上に、コールドプレートの技術発展を理解することで、CDUなどの二次冷却水ネットワークを理解するためだという。
「パワートレインとサーマルチェーンをより長くしていく、そして周辺部分の理解を深めるという方向で買収を進め、ポートフォリオを拡充しています。これにより、Vertivの設計能力やトータルソリューション力を強めていく方針です」(倉橋氏)
主力製品のモジュラー型データセンター
Vertivの製品ポートフォリオは、電源、冷却、そしてITルーム内の機器(KVMスイッチやPDUなど)の3つがあるが、最近の主力はデータセンター向けインフラとしてパッケージ化してあるモジュラーデータセンターだ。
事業者は、とにかく速くAIビジネスを立ち上げたいと思っている。このため、データセンターをいかに速く建設するかが重要になり、モジュール型やプレファブリックが注目されている。特に、大規模なAIファクトリーを速く立ち上げたいというニーズに応えるのが「OneCore」(図上段の右端)だ。
モジュラーデータセンターは、パワーモジュール、サービスモジュール(エンジニアの詰め所など)、クーリングモジュール、SmartRun(ITルーム内のラック列に必要な機材をまとめたもの)、水配管モジュール、チラーなどをシステムとして一体化したもの。その中で最も大規模なのがOneCoreで、主にAIの学習用データセンターで導入される。
「NVIDIA Omniverse DSX Blueprintのメタバース上で、Vertivの各モジュールを使ったインフラ設計が可能です。デジタルで設計が完成したら、プレファブリックのモジュールを持ち込んで組み上げればいいので、個別に機材を調達して現地で構築するよりも速い。海外の実績では、最短6~12カ月で完成します。
事前にデジタルツインで検証するので、全体最適なデザインになり、スペックの無駄が発生しませんし、運用開始後の拡張や設備変更などもデジタルツイン上で検討・検証可能です」(倉橋氏)
このOneCore自体も、ひとつのモジュールとして組み合わせて拡張できる。最小単位で12.5MWの電力供給が可能で、2つなら25MW、4つなら50MW、8つにすれば100MWという具合だ。それを10個集めて、1GWまで拡張できる。
もう少し小規模なのが図では左側のもので、SmartMod、MegaMod、MegaMod HDXは、コンテナに近いイメージだ。空冷環境に液冷を追加する場合や、推論のためのデータセンターを地方に置く場合などはこちらが選択肢になる。
データホール構築をスピードアップする「SmartRun」
先の図で下の段は個別機能のモジュールだが、その中でもSmartRunが興味深いので、少し詳しく紹介しよう。
データセンターの従来の工法では、建物が出来上がったら、冷却水の配管、バスバー、ケーブルトレイ、アイルコンテインメントなどを、サーバー-ルーム内で組み立てる。しかしSmartRunは、それらを工場で組み立て、足を畳んだ状態で搬入し、サーバー-ルーム内で立ち上げるというものだ。あとはサーバーラックを持ってきて下に入れ、機械室に置いたクーリングモジュールの大型CDUから冷却水の配管を引き込んで接続する。
「このSmartRunが今、非常に引き合いをいただいています。実は、高所作業や上向きの作業は地味に難しい。SmartRunは配管などを下ろした状態で作業をして、最後にぐっと上げればいいので、非常に使いやすいというものです。工場で作って、テストした状態で持ってきますから、現地でのテストの手間も、少し短縮されます」(倉橋氏)
サステナビリティへの取り組み
一時期、データセンター設計においてはPUEが話題の中心だった。サーバーに使う電力と設備に使う電力の比率で、設備側は極力省電力にするという考え方だ。現在は、GPUサーバーが莫大な電力を使うため、設備電力との比率という指標はあまり意味がなくなったのかもしれないが、倉橋氏は以下の点がVertivの優位性だと言う。
- 水冷は空冷よりも電力消費を抑える
- PUEの観点ではドライクーラー(フリークーリング)に対応している
- システムとして提案するため、消費電力の無駄がない
「AIの時代になって、コンピューティングの性能競争から、トークン生成のスピードやコスト効率が重視され始めています。ファシリティも含めて一連で動いてサーバー能力を最大限出すことが重要です」(倉橋氏)
チップメーカーはどんどん高性能で大きな電力を使うGPUを開発している。そこまで高性能かつ高価なチップが、一般企業で本当に必要だろうかという疑問に、倉橋氏は以下のように答えた。
「データセンターは15年くらい使うものですが、サーバーは1年でどんどん新しいものが出てきます。高性能ということは高集積になりますので、同じMWのデータセンターでラックの数が減っていくだろうと思います。
Vertivでは、今のジェネレーションのサーバーがフルで埋まっているデータホールが、何世代か後になっても、ラック数は少なくなるが、適切に動かすことができるという設計をしています。OneCoreもそうです。
また、オンプレミスでGPUサーバーのラックを置きたいという場合は省スペースの方がいいし、これから出てくるロボティクスも通信遅延を考えたら近くにサーバーを置きたいので、小さい方がいいですよね」(倉橋氏)
日本市場に向けて
日本市場には、特有の要件がある。例えば耐震基準だ。日本向けSmartRunでは、構造を支える柱部分を補強するなど、対応を進めている。また、設置工事もアフターサービスも全部一括でやってほしいという要望も多いという。そこでVertiv Japanでは、ゼネコン、サブコン、SIerなどとコミュニケーションをとる協業推進の担当を置いた。
「保守・サポートは自社で行う体制を構築しています。以前の代理店経由で販売しているお客様もいますので、そちらの保守を引き継いで、既に弊社のエンジニアで保守をやっています。現時点で社内エンジニアは15~20名程度ですが、全国で大規模に展開するには不足していますので、数社の協力会社と共同でやっています。自社エンジニアは、まだこれから数倍にしていく予定です」(倉橋氏)
Vertiv Japanの元年が終わり、2年目に突入している。日本法人のビジョンとして、倉橋氏は以下のように意気込む。
「想定以上の伸びは経験しました。しかし市場も想定以上に伸びていますので、AIデータセンターを作るならVertivと言われるようなトップを目指しています。外資系のお客様には、OneCoreを中心としたデザインを含めた提案ができるのがVertivの最大の強みです。日本のお客様に対しては、ゼネコンをはじめとする日本の中の生態系において、きちんと協業できる体制を作り上げて、ローカルコンペティターとして捉えていただける形が、直近の目標です」(倉橋氏)





