Novellついに売却 SUSEは? 882件の特許は?


 Novellが企業向けソフトのAttachmateに22億ドルで買収されることになった。Novellについては、ここ数カ月間、買収のうわさが絶えなかったが、最終的に、あまりなじみのないAttachmateという企業の手に渡ることになった。ポートフォリオを強化する狙いがあるとみられ、Novellは2つの事業部門に分割される。同時に、882件の特許をMicrosoftが率いるコンソーシアム「CPTN Holdings」に、売却するという発表もあり、今後が注目されている。

NetWareで名を上げ、2003年のSUSE買収でオープンソースベンダーへ

 Novellは1983年創業。ネットワークOSの「NetWare」で名を上げたが、「Windows NT」の登場で劣勢に追いやられた。大きな転機は2003年のSUSEとXimianの買収で、人気のLinuxディストリビューション「SUSE」と、デスクトップアプリというオープンソース技術を手に入れて、オープンソースベンダーとして再生を図った。

 最後の方針転換は2006年のMicrosoftとの提携だった。LinuxとWindowsの相互運用性にフォーカスしたもので、「SUSE Linux Enterprise Server(SLES)」のクーポン代金として3億4800万ドルの前払いをMicrosoftから受け、業績は一時的に改善した。だが、その後の4年間で売り上げが増加したのは1年だけ。Novellは根本から事業を建て直すことができず、時間切れを迎えた。

 買収話が最初に表面化したのは2010年3月で、ヘッジファンドのElliot Associatesの提案だった。Novell側はこれを拒否し、ほかの可能性を探るとしていた。その後、買い主としてVMware、Oracle、CAなどの名もあがったが、最終的に決まったAttachmateは、ほとんどの人には初めて聞く名前だったはずだ。

SUSE事業とopenSUSEプロジェクトの関係はどうなる?

 Attachmateは、ターミナルエミュレータなどのホスティング、セキュリティなどを事業とし、2006年に買収したアプリ/システム管理のNetIQ事業部も持っている。発表によると、Novellの買収後は、SUSEとそれ以外(“Novell”)の2つの事業部に分けて独立した事業として運営するという。

 また、SUSEのオープンソースプロジェクト「openSUSE」については、別途、声明を発表。「SUSE事業にとって重要な部分」は取引のあとも存続し、SUSE事業とopenSUSEプロジェクトの関係は従来のまま維持されるだろうとしている。

 だが、オープンソース関係者からは懐疑的な声も多い。Linux Magazineは、買収後のNovellを多角的に分析した。特にopenSUSEについて、買収はコストカットを意図したものであり、コミュニティへの投資とは合わないと指摘。SUSEを、長く維持するつもりがあるのだろうか、と懸念を示している。

 元Novellのコミュニティマネージャ、Joe Brackmeier氏はNetworkWorldに寄稿したコラムで、openSUSEコミュニティへの投資継続や製品開発は難しそうだと述べている。Attachmateの製品は買収で獲得したものばかりで、革新的な側面がないというのがその理由だ。やはり元Novell社員で、Linux戦略を担当していたMatt Asay氏(現Canonical COO)は、AttachmateにOSの経験がないことなどを挙げ、SUSEは今後、廃れてゆくだろうと悲観的だ。

 一方でオープンソースのデータ統合企業TalendのCEOであるBertrand Diard氏は、楽観しており、オープンソース開発モデルが評価された証拠だとブログで述べている。

買収に介在したMicrosoftの意図は?

 もうひとつ取りざたされているのが、取引に参加しているMicrosoftの意図だ。CPTN Holdingsは11月まで登記情報がなかったことから、この取引のために新たに作られたコンソーシアムではないかと見られている。そしてCPTNが4億5000万ドルの現金で取得する882件の特許の内容は公表されていない。判明しているのは、UNIXの著作権をNovellが引き続き所有するということだけだ。

 オープンソースブロガーのSteven J. Vaughan-Nichols氏は、Microsoftを“ダークホース”とする。同氏が消息筋の話として伝えたところによると、Novellの取締役会が買収提案を受け入れやすいよう、MicrosoftとAttachmateの両社が事前協議していたという。そして、Microsoftの意図は、NovellがVMwareの手に渡るのを阻止することにあったとみている。

 つまり、仮想化で対立関係にあるVMwareがNovellを買収すると、VMwareがSUSEを手に入れることになる(両者はすでにOEM関係を結んでいる)。Microsoftとしては、Attachmateに買収させることで、これを回避できるだけでなく、長期化しているWordPerfect訴訟を終わらせることもできる。これがVaughan-Nichols氏の分析だ。

 Infoworldの見方は、また違う。「(Microsoftは)VMwareによる買収を阻止し、自社でNovellを買収したかったが、規制のためあきらめるざるを得なかった」というところまでは同じだが、買収合意を知らせるプレスリリースで、自社の名前を出してしまったことはマイナスなはずだ。思惑通りではなかったと見る。また、ITWorldは、Novellとの提携が2011年に終了することへの防御的な動きではないか、と控えめな分析をしている。

 アナリストはNovellの今後をどうみているのだろう。Gartnerのリサーチ・バイスプレジデントのEarl Perkins氏は、11月21日と23日の2回、公式ブログで見解を表明した。それによると、Novell製品の多くは(ポジショニングやブランディングはわからないが)重複が少なく、残るだろうという。Microsoftの役割については、証券取引所委員会に提出される書類などから、今後徐々に判明してゆくとみている。

 取引は2011年第1四半期に完了する見込みだ。いずれにせよ、企業としてのNovellは27年の歴史に幕を閉じる。

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