Chrome OSは時期を逸したか? 搭載製品は約束の年内に出ず


 Googleが「Chrome OS」という独自OSの開発を明らかにしたのは2009年7月。それから1年4カ月がたち、リリース予定だった「2010年後半」が終わろうとしている。最近、製品登場時期に関するさまざまな情報が飛んでいるが、どうやら年末商戦には間に合わないらしい。

 いったいChrome OSはどうなったのだろう。ネットブックでもタブレットでもブームに乗れず、時期を逃したのだろうか?

11月からChrome OSについての報道が再び出始める

 Chrome OSの発表の際、Googleは2010年後半に、これを搭載したネットブックやローエンドのPCが登場すると述べた。メーカーとしては、Acer、ASUS Tek、Hewlett-Packard(HP)、Lenovo、東芝などの名前が挙がっていた。Chrome OSはオープンソースで、Webアプリケーションに特化し、高速起動とクラウドサービスとの連携を特徴とするOSである。

 だが、今年に入っても、なかなか新しい情報はなく、関係者、ユーザーの関心はAndroidに集まっていった。久々にChrome OSが注目されたのは、8月後半にDounloadSquadが伝えた「Verizonが、Chrome OSベースのタブレット端末を年末商戦開始の11月26日に発売する」という写真付きの記事だ。タブレットはNvidiaの「Tegra 2」と2GBのRAMを搭載するマルチタッチ端末で、Verizonは通信契約をセットにして、「iPad」よりもかなり安く提供するというものだった。

 その後、VerizonにもGoogleにも一向に動きはなかったが、11月2日にDigiTimesが“部品メーカーの情報”として、Chrome OSを搭載したGoogleブランドのネットブックが11月後半に登場すると報じた。「Nexus One」(HTCが製造したGoogleブランドのAndroidスマートフォンの)と同じようなモデルで、製造はInbentecが担当し、プロセッサはARMベース。

 通常の小売チャネルを経由せず、当初6万から7万台に限定して製造するという。さらにその後、AcerとHPが12月にChrome OSベースの機種を発売するという内容である。

 同じ11月2日には、PCMag.comが、DigiTimesの記事を引用しながら、“Googleに近い筋からの情報”として、GoogleがChrome OSを年内にローンチし、Chrome向けのアプリストアも登場させる予定だと報じている。なんらかの動きがあったのかもしれない。

年内にプレビュー、2011年にリリースか

 これらは非公式の消息筋の情報だが、Google自身もいくつかコメントをしている。まずCEOのEric Schmidt氏は11月15日に「Web 2.0」カンファレンスの中でChrome OSに言及した。

 ZDNetやTechtree.comなどによると、これまでなかなか明確でなかったChrome OSとAndroidのすみ分けについて、「非常に異なる」とした上で、Androidはタッチ端末向け、Chrome OSはキーボードを搭載した端末に向けになるだろうと説明した。

 そして、登場は「数カ月以内」と述べた。「2010年後半の予定」に間に合わせるなら「2カ月以内」でなければならないが、「数カ月」となると、来年に持ち越しとなる可能性が高そうだ。

 一方、この件で取材したMary Jo Foley氏は、11月22日の記事で「プレビュー版は2010年中に登場予定で、複数の新しいフォームファクタ上でテスト版として提供される」というGoogleからの回答を報告している。

時期を逃したOSか、時流を先取りしたOSか

 結局、一般ユーザーが年内にChrome OSを搭載した製品を見ることはなさそうだ。メディアは、今後について、どうみているのだろう。

 CNNMoneyは「時期を逃し」「もう誰も欲しがらないハードウェアをターゲットにしている」と評する。Schmidt氏が述べた“キーボード付きの端末”の代表はネットブックだが、iPadの登場とともにタブレットセグメントが急速に立ち上がり、ネットブックは大きな打撃を受けている。市場動向予測でも、DisplaySearchなどは、タブレットがネットブックのシェアを奪うと予想している。

 さらに、「短期的にChrome OSの市場はあるが、将来的にはAndroidと重なるだろう」とのGartnerのアナリスト、Ray Valdes氏のコメントを引用。Chromeブラウザの人気とAndroidアプリの人気、アプリケーションの移植性問題を解決するHTML 5の重要性などの要因を挙げ、「GoogleはOSを1つにすべきだ」と指摘している。

 一方、New York Timesは、Gartnerのコンシューマー分野のアナリスト、Michael Gartenberg氏の「時流を先取りしたOS」とする見解を紹介している。Chrome OSは、Androidの成功と同じ方程式(ハードウェアメーカーとソフトウェア開発者に無償で提供するオープンソースプロジェクト)を持ち、これはエンドユーザーがGoogleのサービスを利用するプラットフォーム(エネーブラー)となる。ネットブックブームを逃したとしても、「Chromeは、あらゆるサービスがWeb経由で配信される将来に向けたものだ」と述べ、「まだこれからのOS」と位置づけている。

 思い返せば、いまや破竹の勢いを見せているAndroidも、すぐに立ち上がったわけではない。Nexus Oneでは失敗したと言われたことがある。Chrome OSの将来も、今の段階で予想するのは難しいだろう。

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(岡田陽子=Infostand)
2010/11/29 10:47