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内閣府、2016年の利用開始前にあらためてマイナンバー制度を説明

 内閣府は17日、2016年度の運用開始を前に、マイナンバー制度に関する情報説明会を開催した。2016年1月から、申告書・法定調書などへの法人番号の記載、個人番号カードの交付、個人番号の利用開始が始まることから、「国民の皆さんが興味を持っている点について質疑としてまとめた」(内閣官房 社会保障改革担当室審議官の向井治紀氏)ものとなっている。

 マイナンバー導入の経緯と狙い、個人番号カードの概要、公的個人認証サービスの民間拡大、マイポータルなどについてあらためて説明が行われた。

 セキュリティ対策についても、プライバシー流出対策、どのように安全性が確保されているかについても説明し、「日本は番号制度後進国であることから、諸外国の失敗例をいろいろと学習することができた。米国で起こったような“なりすまし”等の問題が起こらないよう、番号だけでは利用ができないようになっている」(向井氏)とアピールした。

内閣官房 社会保障改革担当室審議官の向井治紀氏

マイナンバー制度は「社会保障や税の給付と負担の公平化につながる」

 マイナンバー制度は2015年10月から法人番号、個人番号の通知が行われ、2016年から法人は申告書、法定調書への法人番号の記載が必須となる。また個人番号は、社会保障分野、税分や、災害対策分野での利用がスタートする。

 マイナンバーを導入する理由について、向井氏は次のように説明した。

 「いろいろな個人を特定する番号は存在するものの、マイナンバー導入によってより正確な所得把握が可能となる。少子高齢化を控え、高齢者に支給される交付金は増える、若い人は減るという状況の中で、給付と負担の緊張関係はより強くなっている。社会保障や税の給付と負担の公平化につながるマイナンバー制度の導入は必要」。

マイナンバー制度導入の趣旨
マイナンバー制度の概要

 健康保険証で使われている番号など、ほかの番号を利用しなかった理由としては、「医療保険は、サラリーマンが退職した場合には国民健康保険に変更され、番号が変更になる。一人が長期間利用するものとしては住基コードがあるが、これは国民が利活用するものではなく、行政側で管理するために利用するもの。セキュリティ面から考えると、この一つの番号を使い回すことは危険性が高まることが考えられるために、住基コードの利用は行わなかった」という。

 また、個人を特定するものとして「戸籍」「住民票」があるが、戸籍は親子関係を確認することはできるものの、現住所に関する情報はない。住民票は現住所に関する情報はない。マイナンバーはこうした複数機関に存在する特定の個人情報を同一人の情報であると確認するための基盤となる。

マイナンバーの利用用途は厳密に定義されている

 12けたの個人番号であるマイナンバーは、個人番号カードに搭載されているICチップの利活用と混同されることが多い。しかし、個人番号カードの利活用とは異なり、マイナンバーの用途、利用者については法律で厳密に決まっている。

 個人番号の利用分野は、社会保障分野では、「年金分野=年金の資格取得・確認、給付を受ける際に利用」。「労働分野=雇用保険等の資格取得・確認、給付を受ける際に利用。ハローワークなどの事務等に利用」。「福祉・医療・その他の分野=医療保険などの保険料徴収等の医療保険者における手続きに利用。福祉分野の給付を受ける際に利用。生活委保護の実施などに利用。低所得者対策の事務などに利用」と、具体例を挙げて説明した。

 また、税分野では、国民が税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書などに記載。当局の内部事務等に利用する。災害対策分野では、被災者生活再建資金の支給に関する事務に利用。被災者台帳の作成に関する事務に利用する。

 さらに上記のほか、福祉、保険もしくは医療その他の社会保障、地方税または防災に関する事務その他に類する事務であって条例で定める事務に利用となっている。

 想定されるケースとして最も多いのが給与、退職金などを受け取る勤務先に対して、自分のマイナンバーの提出。厚生年金、健康保険および雇用保険の資格取得の際や、国民年金の第三号被保険者=従業員の配偶者などのマイナンバーも提出することになる。

 講演を行って報酬を受け取る場合、プロスポーツ選手が契約金・報酬を受け取る場合にも、契約先にマイナンバーを知らせる必要がある。

 不動産業者または法人から年間100万円を越える不動産の譲渡の対価、もしくは年間15万円を越える不動産仲介料もしくは、不動産使用料=家賃を受け取る人も、不動産事業者にマイナンバー提供を求められる。

 金融機関で株、投信信託、公社債などの証券取引を行っている人は、銀行、証券会社、生命保険会社、損害保険会社、先物取引事業者などの金融機関等にマイナンバー提供を求められることがある。

 なお、日本年金機構のマイナンバー利用については、年金情報の流出の影響によって、当面の間、延期されることが決定している。預貯金の口座番号へのマイナンバー付番については、2018年からスタートするが、現在では任意での提出であり、口座とマイナンバーのひも付けが法律で決まっているわけではない。

マイナンバーの提供を求められる主なケース

 提供を求める明確な理由があるにもかかわらずマイナンバーを明らかにしない場合、例えば、企業の社員が勤務先の企業からマイナンバー提出を求められても提出を行わない、といった場合はどうなるのか。

 「国税庁では、社員を説得した上で提出が行われない場合については、提出が行われなかった経緯を申請してもらえば有効といっている」(向井氏)と、企業側に対する罰則は、現時点ではない。

 また、マイナンバーが配達されたにもかかわらず受け取り拒否をしている場合については、「拒否しても罰則はないものの、個人番号は付与されている。受け取らなかったとしても、行政側の事務作業にはマイナンバーは使われることになるので、受け取らなかった意味はほとんどない。ぜひ、受け取ってほしい」という。

 個人番号については、「本人を特定する効果はあるが、番号だけを持ってきても本人を証明することにはならない。これは銀行で、口座番号だけを伝えても預金が引き出せないこととよく似た仕組み。マイナンバーが流出するようなことになっても、番号だけでは届け出、申請は一切できない」と番号だけでは、利用できなくなっていることを強調した。

 仮に、社員のマイナンバーを預かっている企業が不正な用途にマイナンバーを利用したとしても、「番号だけでは悪用できない」という。

マイナンバー導入でどんなメリットがある?

 行政側のマイナンバー管理については、市町村、都道府県、健康保険組合など異なる組織が共通データベースを利用するのではなく、各機関が持っている情報にマイナンバーが新たに加わるイメージ。従来通り、各機関が個々に持っている情報を管理、運用していく。

 「運用がきちんと行われているかについては、運用に関する情報を共有するとともに、正しい運用が行われているか、監査を行う必要も出てくるだろう」と運用規則、監査などを実施しながら、問題が起きないよう管理を進めていく計画だ。

個人情報の管理の方法について

 マイナンバー導入によって国民がどんなメリットを受けるのかについては、「従来は紙の資料提出が必要になっていたものが必要なくなるケースがある」という。具体的には、(1)社会保障の給付、保険の減免を受ける際、従来は必要だった課税証明書などの書類が不要に、(2)児童扶養手当を申請する場合、世帯が同一であるかの審査に利用し、従来は必要だった住民票の写しが不要にといった、取得が必要だった証明書、写しが不要になることがあげられる。

 「ただし、この情報提供ネットワークシステムによる共有される情報として、国が個人の預貯金をすべて把握するようになるという声があるようだが、銀行と行政側がつながるわけではない。ただし、現在でも生活保護、税務調査で預貯金の調査は可能。マイナンバーがついた預貯金は調査がしやすくなることは間違いない。仮にすべての預貯金にマイナンバーがつくと、口座の有無は調べやすくなる。ただ、利用は以前と同じく、税務調査、社会保障調査に限られる」と、行政側が個人の預貯金をすべて把握するわけではないとした。

情報提供ネットワークシステムにより共有される主な情報と利用

 法人に対しては、13けたの法人番号が指定されたが、これは個人番号とは異なり、法人番号を指定した法人の名称、所在地、法人番号がインターネットを通じて公表され、誰でも自由に利用が可能となっている。

個人番号カードはさまざま活用される可能性が

 マイナンバーについては法律で利用できるものが決まっているが、マイナンバーを記載した個人番号カードは、さまざまな用途が想定されている。

 個人番号カードに搭載されるICチップは、当初、電子証明書が格納されている。ICチップには空き領域があり、市町村・都道府県などは条例の定めるところにより、国の機関などは総務大臣の定めるところにより、空き容量の利用が可能となる。

 今後、印鑑登録証、各証明書のコンビニ交付、図書館利用、地域の買い物ポイント、公共施設予約、社員証などの利用が想定されている。電子証明書については、行政機関以外の民間事業者も活用が可能で、金融機関のインターネットバンキング、インターネットショッピングなどの利用が想定されている。3年後には健康保険証に利用することも計画されている。

 「個人番号カードは、持ち歩いて利用するもの。表にはマイナンバーの記載はなく、住所・氏名・年齢、本人の写真が掲載され、本人確認のために利用できる。裏面にマイナンバー、ICチップが搭載されている。裏が見えないケースとセットで個人番号カードを提供するので、普段はケースに入れ、表面だけを見せて、マイナンバーが見えないように利用してほしい」。

 ICチップの電子証明書は、パスワードを入力して利用することになるため、「パスワードを忘れないように、パスワードを書いたメモと個人情報カードをセットで持ち歩くといった利用は、情報漏えいリスクが高くなる。キャッシュカードと同様に、パスワードとカードは別途保管してほしい。また、紛失した場合には、即座にコールセンターに連絡してほしい」と、キャッシュカードと同じ感覚で保管、活用していくことが必要になる。

個人番号カードの3つの利用個所

 また、「10月から郵送された個人番号通知が、個人番号カードそのものと誤解されているケースもあるようだが、個人番号カードは2016年1月以降に交付が始まる。通知は持ち歩くものではない」とあらためて指摘した。

 ICチップは、改造などが行われそうになった場合には、壊れて使えなくなるテクノロジーを採用。「改造などの不正利用はできない仕様となっている」と説明した。

 2017年1月からは、新たに情報提供ネットワークシステム「マイナポータル」の運用が開始される予定となっている。マイナポータルは、「マイナンバーのついた自分の個人情報いつ、誰が、なぜ提供したのか」、「行政機関などが持っている自分の個人情報の内容の確認」、「行政機関などから提供される、一人一人に合った行政サービスなどの通知」が、Webサービスとして提供される。

 マイナポータルは、個人が行政からの情報をワンストップで受け取り、利用できるポータルサイトとして活用されていくことがイメージされ、年金や保険などの確認にも応用されていく計画だ。

三浦 優子