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レッドハット、Docker専用軽量ホストOS「Atomic Host」や「RHEL7.1」を発表

米Red Hat社プラットフォーム製品部門 製品マーケティング シニア・ディレクター Mark Coggin氏

 レッドハット株式会社は3月19日、Linuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」バージョン7系の初のマイナーバージョンアップとなる「RHEL 7.1」と、RHELをもとにDockerコンテナを実行するホストに特化させた軽量OS「Red Hat Enterprise Linux 7 Atomic Host」(以下、Atomic Host)、さらにDockerコンテナに関するパートナーエコシステムについて記者説明会を開いた。

 米国で3月5日に発表された内容を日本で説明する場だったが、同日のユーザー向けニュースレターでも新しい発表とアナウンスされており、国内での発表に近いものといえそうだ。

 記者説明会には、米Red Hat社プラットフォーム製品部門 製品マーケティング シニア・ディレクターのMark Coggin氏が登場。主にAtomic Hostやパートナーエコシステムなどのコンテナ技術への取り組みを中心に語った。

コンテナのホストに特化した「Atomic Host」

 Atomic Hostは、RHELをベースにDockerコンテナを実行するホストに特化した軽量OSだ。今回が初の正式リリースとなる。

 Atomic Hostは、自身の環境の機能を最小限にし、アプリケーションはすべてコンテナ内で動かす。ホスト環境のシステム領域には基本的にソフトウェアの追加インストールはできず、システム更新時にはOSイメージをまるごと更新する。なお、ホスト環境のシステム監視ソフトなどは、ホストへのフルアクセス権限を持つ「スーパー特権コンテナ」で動かす。同様のアプローチのOSに、CoreOS社のCoreOSや、Canonical社のSnappy Ubuntu Coreなどがある。

 Dockerは、Linuxのコンテナ技術や、ファイルシステムの差分管理技術、コンテナの元になるイメージをオープンに取得する仕組みなどを組みあわせたシステムだ。コンテナ技術とは、1つのOSの上でソフトウェア環境を複数動かす技術。ハイパーバイザーによる仮想化技術と違い、OSカーネルは共通で、その上の環境だけを分離する。

Red Hat Enterprise Linux 7 Atomic Hostの説明。コンテナの実行に最適化
Atomic HostがRHELから受け継いでいるもの(左)と、コンテナに特化した機能(右)

 Coggin氏はコンテナの利点として、迅速なアプリケーション提供や運用の効率化などを紹介。また、物理環境や仮想環境、プライベートクラウド、パブリッククラウドの間でのポータビリティを挙げた。

 氏はRHELプラットフォームでのコンテナの利用例として、RHEL 6のアプリケーションをコンテナ化してRHEL 7上で実行するケースを紹介した。この場合、ホストOSのサブスクリプションライセンスの中で利用できる。

コンテナのメリット
コンテナのポータビリティ

パートナーによるコンテナの開発から認定、配布までサポート

 ただし、Coggin氏は「コンテナに関する5つの誤解」として、「コンテナは新しい技術と見られがちだが要素技術は成熟している」「コンテナは仮想化を置き換えるものでなく、補完するもの」「コンテナはポータブルだと言われるが、それにはきちんとポータブルに作る必要がある」「セキュアと言われるが、そのためにはセキュアに作る必要がある」「エンタープライズに向かないと言われるが、安定して実稼働している。Googleでは検索からGmailまで20億ものコンテナを動かしている」と説明する。

 「たとえばDocker Hub(Dockerイメージの公開リポジトリ)で『MongoDB』と検索すると、数百のイメージが見つかる。これらを誰が保証するのか、何が入っているのか、利用して大丈夫なのかわからない」(Coggin氏)。

 そこでRed Hatでは、ISVを含むパートナーと協調したコンテナ認定のパートナープログラムを発表した。

 新しいパートナープログラム「Red Hat Connect for Technology Partners」の中で、コンテナ開発や認定取得のためのドキュメントなどを含む「Red Hat Container Developer Kit(CDK)」を提供。これによって作られたコンテナを「Red Hat Container Certification Program」で認定し、Red Hatによるコンテナイメージリポジトリ「Red Hat Container Reegistry」から配布する。

 将来的には、更新など社内のサーバーのソフトウェアを管理する製品「Red Hat Satellite」で、DockerイメージやAtomic HostのOSイメージを管理して社内専用のプライベートリポジトリを作れるようにするという。

「コンテナに関する5つの勘違い」
パートナーとのコンテナエコシステム。パートナープログラム、開発、認定、リポジトリでのイメージ配布
コンテナの認定プログラム「Red Hat Container Certification Program」
「Red Hat Container Developer Kit(CDK)」

 なお、Red Hatの主な領域であるエンタープライズ分野では、新技術より安定して何年も動き続けることが重視される。そのため、Dockerなどの新しいシステム構築アプローチは、同社にとってどのような位置づけにあるか、記者から質問が出た。

 これに対してCoggin氏は、「われわれは価値はお客さまにあると考えている。物理システムからクラウド、コンテナまで、一貫したプラットフォームを柔軟に提供する。商用Linuxのユーザーがいままでのシステムをなくすようなことはない。追加の選択肢が得られるということだ」と答えた。

初のマイナーアップデートとなるRHEL 7.1

 Coggin氏はRHEL 7.1についても説明した。RHEL 7の初のマイナーアップデートとなる。

 氏は、Kubernetesによるコンテナのオーケストレーション、最新Dockerアップデート、OpenJDK 8、管理性や相互運用性の向上などを紹介。また、新しいバリエーションとして、リアルタイム処理のための「RHEL for Real Time」と、リトリエンディアンのIBM POWER8向けの「RHEL for IBM Power」を挙げた。

Red Hat Enterprise Linux 7.1

国内でも年間100社を目標にコンテナのパートナーを

 国内での取り組みについて、レッドハット株式会社 常務執行役員 パートナー・アライアンス営業統括本部長の古舘正清氏が説明した。

 古舘氏は「今日を皮切りに、日本国内でISVといっしょにコンテナ対応ソフトを増やしていく。年内100社を目標に、パートナーといっしょにアプリケーションをクラウドネイティブに作りかえていく。また、クラウドプロバイダーといっしょに新しいビジネスモデルを作る」と語った。

レッドハット株式会社 常務執行役員 パートナー・アライアンス営業統括本部長 古舘正清氏

高橋 正和