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富士通研、下水道氾濫の兆候を低コストに検知する新技術

必要なセンサー数をいかに減らすか

 株式会社富士通研究所(以下、富士通研)は10日、都市におけるゲリラ豪雨などの被害軽減に向けて、ICT活用して下水道氾濫の兆候を低コストに検知する技術を開発した。

 昨今、局所的な集中豪雨による都市の浸水被害が多発しており、その予防策として、下水道水位のリアルタイムモニタリングが期待されているが、センサーの設置や運用管理にかかるコストが課題になっている。

 「水位計測機能を備えたセンサーをマンホールに組み込んで精度良く兆候を検知するためには、管路施設に広域にわたってセンサーを設置する必要があるが、回線・電源の専用施設や電池交換が必要な場合もあり、広域設置が困難だった」(同社)。

ICTを活用したリアルタイムの下水道水位モニタリングシステムの例

 今回、地形や下水道管路の形状・距離によって生じる上流から下流までの所要流水時間の分析から、センサーを組み込むべきマンホールの位置と数を決定する技術を開発。約1/5のセンサー数で下水道全体の流れを把握・予測可能になったという。

下水の所要流水時間に基づくセンサー設置箇所の決定
従来例と本開発技術でのセンサー設置箇所の比較

 またセンサーの省電力化を図るため、測定水位の変化状況を考慮して、測定パラメータを最適に制御する技術も開発。測定した水位に基づいて今後の水位変化を予測し、その時々のセンサー状況に応じて、(1)測定間隔、(2)測定値の通知間隔、(3)測定時間の3種類の測定パラメータを自動調整することで、状況に応じた測定精度を維持しながら、消費電力を約7割カットすることに成功した。これにより、太陽光発電のような自然エネルギーのみで動作させることが可能に。その場合、1台あたりの運用コストを約9割カットできるという。

 富士通研では、センシングデバイスのさらなる省エネやコスト削減のための技術開発、センシングデータの利活用方法などの検討を進め、同技術について2015年度中の実用化をめざす。

川島 弘之