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シスコ事業戦略、見据える「ハイブリッドクラウド」と「IoE」

 シスコシステム合同会社1(以下、シスコ)は10月2日、日本での事業戦略説明会を開催。2015年度のビジョンとして「Advanced Japan」を掲げた。

 その中で、Ciscoのハイブリッドクラウド構想「Intercloud」のパートナーに、日本から初めてNTTデータとCTC(伊藤忠テクノソリューションズ)が参加したことを発表した。また、CiscoのベンチャーキャピタルであるCisco Investmentsが、IoTファンドにおいて日本の株式会社smart-FOAに出資することも発表した。

 さらに、2015年の役員体制を発表。それに合わせ、大手通信事業者やOTT(Over The Top)事業者に世界のCiscoで一元化して対応するGlobal Service Provider(GSP)の発足も説明された。

ACIやハイブリッドクラウドを推進

 同社代表取締役社長の平井康文氏は、2015年度の戦略として、顧客とパートナーに向けた「Customer Partnerships」、IoE(Internet of Everything)やワークスタイルソリューションによる社会変革の「Country Transformation」、職場づくりの「Cisco Family」の3つの柱を挙げた。

シスコ 代表取締役社長の平井康文氏
「Customer Partnerships」「Country Transformation」「Cisco Family」の3つの柱

 1つめの柱であるCustomer Partnershipsについては、「データセンターにおける卓越したリーダーシップ」「クラウドコンピューティング事業拡大」「次世代サービスプロバイダーインフラ構築を主導」「業種横断的ソリューションの開発と横展開」「統合ソフトウェア提供による価値創造」の5つのテーマが示された。

 その中のデータセンターについては、シスコのSDN技術「ACI(Application Centric Infrastructure)」を推進する。また、Cisco UCS(サーバー)やACIなどを組み合わせてシステムを運用管理するアウトソーシングソリューション「DCaaS(Datacenta as a Service)」を、野村ホールディングスが採用したことも説明された。

 また、クラウドコンピューティングについては、ハイブリッドクラウド構想「Intercloud」において、世界で30社強が新しく参加したことを発表した。OpenStackをベースにクラウドサービス間やオンプレミスとの間で相互運用性を提供するもの。米国で9月29日に発表された時点で、日本から初めてNTTデータが参加することが発表されていたが、日本での発表時点でCTCも加わった。

ACIの推進
アウトソーシングソリューション「DCaaS」を野村ホールディングスが採用
ハイブリッドクラウド構想「Intercloud」にNTTデータとCTCが参加

IoEで日本企業に出資

 2つめの柱であるCountry Transformationについては、「IoE(Internet of Everything)による新市場開拓」「2020エキサイトメント」「コラボレーションの進化によるワークスタイル革新」「すべてのソリューションを通じた強固なセキュリティの実現」「シスコのテクノトジー・社員の専門性を生かした社会貢献」の5つのテーマが示された。

 平井氏はIoEについて、「日本ならではの、製造業のスマートファクトリーが重要」として、日本の株式会社smart-FOAへの出資を発表し、「共同開発や共同販売に取り組む」と語った。この出資は、米CiscoのベンチャーキャピタルであるCisco Investmentsが4月に発表した1億5000万ドルのスタートアップ企業への投資プログラムのうち、IoT分野での投資先の1つとしてsmart-FOAを選んだもの。

 smart-FOAは、シスコが提唱する、デバイスに近いところで情報を処理する「フォグコンピューティング」のパートナーでもある。同社の「FOA(Flow Oriented Approach)」は、現場で上がってくるデータに背景データと説明データを付加して共有するソリューション。ビデオメッセージで登場したsmart FOA 代表取締役社長の奥雅春氏は、「FOAはシスコ製品と親和性が高いと考えている」と語った。

IoT・IoEの3段階
シスコが株式会社smart-FOAに出資

 Country Transformationでもうひとつ説明されたのが、ワークスタイル変革だ。平井氏は、10月1日に発表された佐賀県庁でのシスコのコラボレーションシステムの採用と、自社での取り組みの2つを紹介した。シスコ社内でもPCからモバイルデバイスへの移行を進め、社内サービスをeStoreに対応。さらに、電話をデスクトップ型ビデオ会議端末のDX70・DX80に置きかえ、「いままでビデオ会議端末は会議室や役員室のものだったが、これからは1人1台になる」(平井氏)という。

smart FOA 代表取締役社長の奥雅春氏がビデオメッセージで登場
シスコ社内のワークスタイル変革

 3つめの柱であるCisco Familyについては、「人材共有」「インクルージョン&ダイバーシティの推進」「モチベーションを向上する評価と褒賞」「確信と信頼を高めるリーダーシップと組織風土」「One Ciscoとしての楽しみ・やりがいの共有」の5つのテーマが示された。

 実例として、教育機関と共同の「“仕事のチカラ”プロジェクト」が紹介された。高校や中学校などでシスコの社員や役員が講師となって、「グローバルとは」「リーダーとは」「女性のキャリアとは」など仕事について考えるワークショップだ。様子を紹介するビデオの中では、社員が「改めて仕事について考えさせられた」とコメントしていた。

“仕事のチカラ”プロジェクト
「“仕事のチカラ”プロジェクト」の紹介ビデオ

国境を越えて大手サービス事業者に対応

 2015年度の事業推進体制としては、各分野の役員体制が発表された。このうち、副社長・NTTグループ事業統括の井上雅雄氏、専務執行役員・エンタープライズ事業統括の中川いち朗氏、専務執行役員・シスココンサルティングサービスの鈴木和洋氏の3人が挨拶した。

 井上氏は、新しい事業体制であるGlobal Service Provider(GSP)について説明した。大手通信事業者やOTT(Over The Top)事業者への対応を、国境を越えて世界のCisoで一元化して対応するという。井上氏は狙いとして、SDNやNFVなどの技術の流れを推進すること、グローバルに各分野の人材を集めること、国境を越えたグローバルな営業やサポートの体制の3点を挙げた。なお平井氏は、GSPはシスコ日本法人からの分離ではなく、「One Cisco」としての取り組みであると補足した。

 中川氏は、ソフトウェアビジネスにおける変更として、ライセンスや課金の新しいモデルについて説明した。定額無制限のラインセンスや従量制課金などのモデルを導入し、顧客の成果ベースの長期的なコミットメントに対応するという。なお、こうしたモデルが佐賀県で初めて採用されたことも語られた。

 鈴木氏は、正式に開始するシスココンサルティングサービス(CCS)について説明した。CCSによって、上流から下流までサービスのポートフォリオが揃ったという。鈴木氏は、これまでの省力化やコスト削減という「分母を小さくする」IT化から、新しいビジネスを生み出して「分子を大きくする」IT化に変わっていくだろうと語った。

2015年度の役員体制
副社長・NTTグループ事業統括の井上雅雄氏
専務執行役員・エンタープライズ事業統括の中川いち朗氏
専務執行役員・シスココンサルティングサービスの鈴木和洋氏

高橋 正和