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生徒それぞれの習熟度に応じた「適応学習」、立命館守山が実践へ

クラウドとSNSを活用した新しい教育方法

左からISID 執行役員 オープンイノベーション研究所長の渡邊信彦氏、立命館守山の亀井且有校長

 立命館守山中学校・高等学校(以下、立命館守山)と株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)のオープンイノベーション研究所(以下、イノラボ)は15日、クラウドとSNSを用いてアダプティブラーニング(適応学習:個々の生徒の学習進行度に合わせて適切な問題を最適なタイミングで提供する教育手法)を実践するプロジェクトを立ち上げた。

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ISIDイノラボについて
プロジェクトの全体像

 「RICS(Ritsumeikan Intelligent Cyber Space)」と名付けられたこのプロジェクトでは、ISIDイノラボが研究開発するアダプティブラーニング・プラットフォーム「edumama」をベースに、新たなICT教育システム「RICS」を構築。学校現場での実践を通じて、アダプティブラーニングに求められる環境や機能を検証・実装していく。

 アダプティブラーニングでは、従来のように冊子や単元ごとにデジタル化された教材ではなく、問題集の問題単位でクラウド上に蓄積。生徒一人ひとりの習熟度に応じて最適な問題を選べるようにする。当初、教材は数研出版から提供を受けるが、段階的に拡充し、出版社の垣根を越えた問題をクラウド上に乗せていく。

 システム側には、生徒ごとの一問単位の正誤結果が学習記録として保存され、生徒一人ひとりの強みや弱みを教師や生徒自身が把握できるようになる。また、問題のレベルや類似性などの情報も保持することで、「ある問題が解けた・解けなかったに応じて、次に解くべき最適な問題がレコメンドされる」(立命館守山 ICT推進室長の木村慶太氏)ようにもなっている。

 将来的には、蓄積された膨大な学習記録や行動履歴と「学力・理解度」「学ぶ対象」をひも付け、これらのデータを中高大一貫教育の中での学習指導に役立てたり、ビッグデータ解析技術を用いた多様な学びの形成に発展させていく計画という。

 また、SNSによる協働学習も狙いの1つ。基盤となるedumamaに実装されたSNS機能を通じて、教師と生徒、生徒同士の学習コンテンツを介したつながりを促進し、「誰が課題を解けたのか」「何人が取り組んだのか」「どの課題を誰が評価・推奨しているか」といった情報を可視化・共有する。分からない部分を教師や友達に質問・相談しながら課題に取り組め、生徒同士でオススメ問題を教え合うことも可能となり、お互いに切磋琢磨することで能動的に学習を進める効果が期待される。SNSの活用リテラシも含めて指導していく方針とのことだ。

特徴1:アダプティブラーニング(個々に最適化した学習)
特徴2:SNSを活用した学び(能動的な学習)
RICSのトップ画面
生徒には習熟度に応じた最適な問題が提示される
採点画面。友達からのオススメ問題も表示されている
SNSで質問
先生用画面では問題提出状況や解答状況が一覧できる
生徒の習熟度も確認可能

 初年度は中学1年(159名)、高校1年(304名)を対象、担当教師と合わせて約500名がiPadを持ち、英語と数学の2教科からスタートする。具体的なスケジュールとしては、2014年5月に環境設定、教員へのiPad活用研修、生徒への情報モラル研修、6月に生徒へのiPad配布、機能や操作方法の学習、教員へのRICS活用研修を行い、7月初旬から授業内、自宅での復習や自発的な発展学習、夏休みの課題などで活用を開始する。

 2015年度以降は、次の新入生への展開や蓄積したデータの活用、対象強化の拡充、ポートフォリオの作成などへ発展させる。最終的には立命館守山の全校・全教科での継続的活用を検討していく方針だ。

 立命館守山の亀井且有校長は、同校が目指す人材育成像と本プロジェクトの狙いについて、「未来を担うグローバル人材の育成を目指し、『確かな学力を育てる学び』『体験を通じた学び』『社会に触れる学び』に取り組んでいる。こうした人材育成には、これまでの知識伝授型座学授業から学習者が主体的に取り組む新しい学習スタイルへの転換が必要となる。そのために当校では、問題解決型学習などのアクティブラーニングを積極的に採り入れている。RICSプロジェクトにおける取り組みが、生徒が協働を深め、主体的に学ぶ習慣を身につけることが期待でき、ひいてはグローバル人材に必要といわれるPISA型学力の向上につながっていくと考える」と説明。

 また、ISID 執行役員 オープンイノベーション研究所長の渡邊信彦氏も「イノラボで目指す教育プラットフォームは、たくさんの教材が出版社の垣根を越えてDB化されるところがユニークなところ。ソーシャル機能によって友人宅での勉強会みたいなコミュニケーションが可能となり、得意な人が教えるつながり感を演出できる。友人からの信頼のおけるオススメ、評価、アドバイスが得られ、ソーシャルな評価によってよりよいコンテンツが残っていくことになる。こうしたSNSとアダプティブラーニングを用いたICT環境を教育プログラムに採り入れる取り組みは全国初となる」と意義を説明。本プロジェクトの成果をさまざまな教育機関とのさらなる実践的プロジェクトに発展させ、早期事業化を目指すとした。

川島 弘之