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CTC、建設分野の情報共有クラウド「CIM-LINK」

 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)は30日、建設分野の情報共有クラウド「CIM-LINK」を発売した。設計情報を3Dモデルで共有し、建設品質の向上に貢献。総合建設業者や建設コンサルタントに向けて営業展開し、初年度で50社への提供を目指す。

 建築分野では、建物の3次元の形状情報に材料やコストなどの属性情報を加えて、コンピュータ上で作成したモデルを、建物の設計から施工、維持管理にわたる建築ライフサイクルのすべての段階で共有する「BIM(Building Information Modeling/Management)」手法が浸透している。

 一方、橋梁や道路などの建設分野では、構造物の建設が土木作業を伴うため、建物に加えて、地形や地質、周辺環境の情報を考慮する必要があり、共有すべき情報量は比較的多くなる。また、設計や施工、維持管理の分離発注により、建設プロジェクトの関係者が多くなる傾向にあり、BIMのようなIT活用がなかなか進まない現状があった。

 こうした中で国土交通省は、建設分野においてBIMを応用する「CIM(Construction Information Modeling/Management)」を提唱している。CIMの採用で、計画、設計、施工、維持管理という建設生産プロセスにおいて、情報を一元管理し、コストを抑えつつ、工場事業の安全性や品質を高められると期待が持たれている。CIMは、国土交通省が主導し、2012年度から設計段階での試行が開始。2013年度からは試行範囲を拡大し、2014年度から基準の策定と本格的な導入が見込まれている。

3次元モデルのイメージ図

CIMに対応した建設分野向けの情報共有クラウド

 CIM-LINKは、CIMに対応した建設分野向けの情報共有クラウドサービスで、図面、CIM準拠の3次元モデル、画像、各種ドキュメントなどを、発注者から測量会社、建設コンサルタント、建設会社までプロジェクトを通じて共有できる。

CIM-LINKの機能

 例えば、施工段階で発生した新たな地形情報や設計変更の理由、施工工程などを3次元モデルに含めて蓄積することで、維持管理段階における不具合発生時の診断を速やかにし、センサーネットワークとも連携することで、社会インフラの老朽化対策でも活用できるという。

 また、CIM-LINK上で取り扱える3次元モデルは、梁や柱といった構造物の形状だけでなく、コンクリートや鋼といった物性情報、経過年やコストなどの情報を部分ごとに埋め込めるほか、さまざまなソフトウェアが提供するパーツや地図情報を組み合わせて、統一的なモデリングを行える。これにより、各プロセスにおいて各種の情報やパーツを付加しながら一貫性のある情報共有が実現できる。

建設プロジェクトにおける3次元モデルの引き渡しフロー

 CTCのクラウド型ITインフラサービス「cloudage CUVIC OnDemand」上から提供される。継続的に複数のプロジェクトを管理する事業者向けと、プロジェクト単位で利用する事業者向けの2種類のメニューが用意され、前者は10プロジェクトが使用できるサービスで月額12万円から、後者は月額3万円からの提供を予定する。

 このほかCTCでは、橋梁やトンネルなどの建設物および各建設物における部品の構造解析や非破壊検査、地盤にかかわる浸透流問題や圧密問題に対する解析やコンサルティング、空間情報やGISを使用したさまざまな地図データサービス、建設物の維持管理におけるコストシミュレーションなどトータルサービスを提供する。

川島 弘之