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日本ユニシス、2012年度連結決算は増収増益で純利益12億円に

 日本ユニシス株式会社は9日、2012年度(2012年4月~2013年3月)の連結業績を発表し、5月10日に報道陣向けに説明会を開催した。同社では、2014年度を最終年度とする中期経営計画を策定しており、2012年度はその初年度となる。

2012年度は増収増益、12億円の黒字化

代表取締役社長の黒川茂氏

 2012年度の連結売上高は前年比5.5%増の2691億円、営業利益は同13.7%増の83億円、経常利益は同17.2%増の83億円、当期純利益は前年の124億円の赤字から黒字転換し、12億円となった。売上総利益は前年並の635億円となった。

 日本ユニシスの黒川茂社長は、「IT投資環境は、依然として回復が顕在化しないものの、ビジネス拡大に積極的に取り組んだ結果、売上高および当期純利益では前期比および期初見通しを上回った。営業利益は前年比増益となったものの、見通しを若干下回った。また、リスクマネジメントの改善やコスト構造改革などについては一定の成果があった」と総括した。

2012年度の総括
2012年度連結決算の概要
代表取締役上席専務執行役員の龍野隆二氏

 受注高は前年比3.1%減の2596億円、受注残高は同4.8%減の1888億円となった。「受注高および受注残高の減少は、前期にアウトソーシングの長期大型案件を計上したため、その反動によるもの」(日本ユニシス 代表取締役上席専務執行役員の龍野隆二氏)という。

 セグメント別では、サービス部門の売上高が前年比0.3%減の1865億円、売上総利益が同13.3%減の414億円。そのうち、システムサービスの売上高が前年比0.9%増の723億円、サポートサービスの売上高が同3.0%減の513億円、アウトソーシングの売上高が同1.3%増の323億円、ネットマークスサービスの売上高が同1.0%減の217億円、設備工事などのその他サービスの売上高が0.8%増の87億円となっている。

 また、ソフトウェアは売上高が前年比31.9%増の307億円、売上総利益が同89.5%増の105億円。そのうち、メインフレーム系の売上高が前年比91.8%増の114億円、オープン系が同11.4%増の194億円。

 ハードウェアの売上高は前年比16.3%増の518億円、売上総利益が同13.0%増の115億円。そのうち、コンピュータ販売が前年比19.6%増の464億円、コンピュータ賃貸収入が同6.0%減の54億円。また、メインフレーム系が同38.5%増の67億円、オープン系その他が同13.5%増の451億円となった。

 セグメント別の営業利益は公開していない。

 なお、クラウド関連ビジネスは、2012年度には27億円の売り上げ規模となり、2011年度の23億円から増加。2013年度は35億円規模を目指すという。

 「クラウド関連ビジネスでは、従来は、ICT事業部として全体を統括していたが、これをマーケット向け組織ごとに、ICT専門チームとして分散させ、それぞれのマーケットに合わせた形での提案を進めていく」(龍野代表取締役上席専務執行役員)という。

製造業向け以外は増収、製造業では円安効果でのIT投資増に期待

 マーケット別の売上高は、金融機関が前年比7.6%増の760億円、官公庁が同10.6%増の242億円、製造が同9.4%減の356億円、商業・流通が同6.2%増の339億円、電力・サービスなどが同8.9%増の995億円となった。

 「金融機関向けは今後も堅調に推移すると予測している。また、製造業は大きく落ち込んだが、来年度は円安効果もあり、IT投資の効果も期待したい。だが、慎重な姿勢は崩さない。商業・流通では大手を中心としたIT投資が活況だが、中堅以下は競合激化が厳しい。電力・サービスでは、大型案件がピークアウトとなっているが、これからも活況だとみている」(龍野代表取締役上席専務執行役員)などとした。

 大手通信事業者のネットワーク更改ビジネスや、金融機関の情報システムインフラ刷新ビジネスを受注するなどインフラビジネスが堅調に推移。複数のエンタープライズサーバー案件も受注したという。

 また、ソリューションサービスでは、小売業向けに開発した導入型ソリューションの引き合いの増加や、ECシステムや営業店システムのビジネスが拡大。共創/BPOビジネスモデルの確立という観点では、新ギフトカード方式による事業において、16種類72品目にまで取り扱いカードが増加。計画を上回る伸びを示しているという。

 そのほか、電気自動車向け充電インフラシステムサービス「smart oasis」が、東名および新東名高速道路、中央高速道路でサービスを開始。同サービスが利用可能な電気自動車用急速充電システムの設置個所は38カ所に拡大した。

 ヘルスケア分野でも、新潟県佐渡地域の医療機関および医療施設をネットワークで結ぶ地域医療連携ネットワーク「さどまわりネット」の開発に参画し、稼働した実績を得た。
 また、2012年8月に発表した大日本印刷と提携については、マーケティング・販売連携、サービス事業基盤の強化、マーケティングプラットフォームの共同開発、グローバル展開の4つの観点から取り組んでいることを示し、提携以来、6億円の売り上げを計上していることを明らかにしている。

 日本ユニシスの高橋修代表取締役専務執行役員は、「いまはお互いの製品をみながら、どんな戦略的提携ができるかを進めているところだが、体制面での連携が進んでおり、今後徐々に効果が出て行く」とした。

日本ユニシス 代表取締役専務執行役員の高橋修氏
大日本印刷との連携

2013年度は営業利益120億円、最終利益70億円を目指す

2013年度の業績見通し

 2013年度の業績見通しは、売上高が前年比2.2%増の2750億円、営業利益は44.4%増の120億円、経常利益は35.9%増の113億円、当期純利益は459.6%増の70億円とした。

 黒川社長は、「2013年度の売上高見通しは、中期経営計画を上回る水準となる。早期に3000億円の売上高達成に向けて取り組んでいく」としたほか、「上期は、前年の大型案件の反動があるため、前年実績を下回るが、下期には増収増益を計画している」(龍野上席専務執行役員)との見通しを示している。

 セグメント別では、サービス部門の売上高が前年比3.1%増の1924億円、売上総利益が同18.1%増の490億円。

 そのうち、システムサービスの売上高が前年比5.6%増の764億円、サポートサービスの売上高が同3.6%減の495億円、アウトソーシングの売上高が同4.5%増の3386億円、ネットマークスサービスの売上高が同10.8%増の241億円、設備工事などのその他サービスの売上高が同2.2%減の86億円とした。

 また、ソフトウェアは売上高が前年比0.9%減の305億円、売上総利益が同13.4%減の91億円。ハードウェアの売上高は前年比0.5%増の521億円、売上総利益が同16.1%減の97億円。そのうち、コンピュータ販売が前年比2.8%増の477億円、コンピュータ賃貸収入が同18.7%減の44億円としている。

 大日本印刷との連携効果として、売上高で47億円の効果、営業利益で3億円の貢献を見込んでいるという。

中期経営計画では運用・保守、ソリューションサービス、マーケティングなどに課題

 中期経営計画の進ちょくについては、高橋氏が説明。「コアビジネスの拡大としては、インフラビジネスが堅調に推移しているものの、運用・保守サービスやソリューションサービス、マーケティングにおいて課題がある。運用保守サービスでは、サポートサービスは回復途上にあり、付加価値が高い統合システムマネジメントサービスの強化、早期拡大に取り組む必要がある。また、ソリューションサービスについては、商品力強化などのマーケティング力の強化、実装力拡大に取り組む。競合優位性を発揮できる市場の拡大、ソリューションの絞り込みも必要である」などとした。

 また、共創/BPOビジネスモデルにおいては、「ギフトカード事業が計画を上回り、1年前倒しで売上高を達成したが、計画未達の部分もある。共創系ビジネス企画プロセスの見直しによって、早い段階から収益性の見極めを厳しくするといったことにも取り組んでいく。また、スマートソリューションの着実な展開も行っていく」と語っている。

 さらに経営基盤の強化では、「人事制度改革/人材最適化、コスト構造改革は計画通り進んでいる。一方で、ビジネス審査委員会の設置などを通じて、リスクマネジメントを強化し、リスク管理項目の再点検、追加を行った。施策実行後は新たな不採算案件は発生していない」との現状を説明した。

 なお、2011年度は不採算事業によって80億円、2012年度には88億円のマイナスが発生しているが、当該システムが2013年2月16日にカットオーバーしており、2013年度はこの影響がなくなるという。また、2012年度には戦略的赤字案件があり、これが2013年度に14億円計上されることになるとのこと。

 一方、龍野氏は、「中期経営計画で掲げた営業利益率5%の確保については、サポートサービスが鍵になる。サポートサービスにつなげることができる基盤を増やしていくことが重要。不採算案件を減らしていくことも重要な要素である」と語った。

 また、高橋氏は、「中期経営計画では、SIビジネス中心から、お客さまのビジネス環境に合わせたサービスプロバイダへの進化を目指しており、その進化の過程にある。そして、2013年度はサービスアグリゲータに向けた基盤づくりの1年になる。目利き力の強化、サービス実行組織の整備、大日本印刷との協業によるサービスプラットフォームの強化などにも取り組んでいく」とした。

SIビジネス中心からサービスプロバイダへ、またサービスアグリゲータへの進化を目指す
中期経営計画のガイドライン

(大河原 克行)