日本IBM、SOA連携で業務連携を支援するz196拡張アプライアンス


 日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は17日、メインフレーム「IBM zEnterprise 196」向け拡張アプライアンスユニット「IBM WebSphere DataPower Integration Appliance XI50 for zEnterprise(以下、DataPower XI50z)」を発売。3月18日から出荷を始める。

 

XMLの高速処理で業務連携を容易に

日本IBM 専務執行役員 システム製品事業 藪下真平氏

 今回の新製品は、複数の分散したシステム環境下の業務アプリケーションを、サービス指向アーキテクチャ(SOA)で連携し、業務連携を行うことを支援するためのアプライアンス製品。これまで別々な製品だったものを、z196専用の拡張ユニットとして提供する。

 新製品を発売する前提として、日本IBMの専務執行役員でシステム製品事業担当の藪下真平氏は、2011年のシステム製品事業戦略を次のように説明した。

 「2010年は革新的なzEnterprise新製品を投入することができた。2011年にはテクノロジーの提供から一歩前進させた、お客さまのグローバル競争力を強化するソリューション提供を事業方針に掲げている。素晴らしいテクノロジーを、明確に、分かりやすくお伝えするために、これまでUNIXや業種などに分かれていた組織を統合し、ソリューション・企画推進&技術支援組織、パートナービジネス、マーケティングそれぞれの組織を一つのチームとして連携できる新体制を作り、最新テクノロジーをお客さまに活用いただく」。

 昨年、zEnterpriseでは、運用を簡単にしながら、拡張性を高める機能強化が行われたが、「今年は、そこにSOAによる業務アプリケーション連携を迅速に行う新製品を提供する。SOA連携により、システム運用に加え、ビジネス変革も支援する体制が整う」(藪下専務執行役員)と説明している。


2011年度の事業方針2011年度からスタートした新しい取り組み
昨年発表された最上位サーバーzEnterpriseがさらに強化
zシリーズでもオープンなテクノロジーを活用しビジネスの変革を支援

 新製品DataPower XI50zは、1台にUNIXやx86など異なるアーキテクチャのシステムを統合し、一元管理することができる、zEnterpriseの特性を生かした製品となっている。

 具体的には、z196の拡張ユニット「IBM zEnterprise BladeCenterExtension(zBX)」に搭載。従来は独立した製品として販売されていたが、z196と一体化させることで、z196上のJava、COBOLなど異なる開発言語で書かれたアプリケーションをSOA環境で連動し、稼働させることができる。

 専用の管理ソフトウェア「zManager」により、1つの画面からDataPowerXI50zも含めた稼働状況を監視することができるので、消費電力の管理や負荷分散などの制御も可能となる。

 DataPower XI50zに利用されているテクノロジーは、IBMのブレード・サーバーのもので、SOAを実現するためのシステム連携基盤(Enterprise Service Bus:ESB)の機能、XMLベースのメッセージを異なるXMLあるいはデータに高速変換する機能、および、高いセキュリティ機能の3つの機能を1台に実装している。

 個別に利用していた場合に比べ、SOA環境の構築期間を大幅に削減し、柔軟な業務連携とサーバー統合を同時に実現する。さらに、環境変化に対するビジネスの柔軟性と機動力を高め、IT運用管理コストも削減できる。


10年前のメインフレームとは大きく変化しているとアピール今回の発表の意義

 

今後のIBM Systemsの方向性は?

 また今回の説明会では、大和研究所の佐貫俊幸技術理事は、IBM Systemsの方向性として次のように説明した。

大和研究所 佐貫俊幸 技術理事

 まず、「日々、朝刊1500万年分に相当する15ペタバイトのデータが生まれているといわれている。しかもデータの特性がかなり変わってきている。安全保障システムのように、毎秒60万レコード、1日あたり500億件のデータが生まれ、それを1、2秒以内に瞬時判断する必要があるシステムも存在する。従来とは異なる、新しいレベルのデータ解析技術と最適化が求められている」と、現在の状況とニーズを紹介。

情報量の増大とITが直面する課題膨大なデータは新しいチャンスと共に新しいレベルの解析技術と最適化が求められ
米国のクイズ番組で人間と対決した「IBM WATSON」とは

 その1つの例として、「米国のテレビ番組で行われている、人間とIBM WATSONのクイズ対決。WATSONは、公正に人間と対決するために、ネットにつないでいない状態で本100万冊にあたる2億ページのコンテンツを記録し、最速で適切な答えを出すためのインテグレーションが行われ、人間と対決している。こうした試みは、医療分野やコールセンターなどビジネスの分野でも利用できる可能性が十分にある」とする。

 そしてそこで必要とされる技術について、「その処理を行う際、今までの延長となる技術革新では必ずしも効果が出るわけではない。オプティマイザーとアクセラレータを組み合わせ、新しいワークロード要素に対応したインテグレーションを実現することが必要となる。具体的な例でいえば、通常では1秒あたり750トランザクションを実現しているXMLデータの処理が、データが暗号化されていた場合、1秒あたり60トランザクションに落ち込む。これをカバーするために、10倍のサーバーをそろえるのではなく、瞬時にXMLと暗号化されたデータを高速化するアクセラレーターを導入することで、同じサーバーで処理量を元の1秒あたり750トランザクションに戻すことができる」と説明した。

 また今後については、「アプリケーション特性にあったシステムと、ワークロードに適したテクノロジー選択の必要性が、さらに高まることになるだろう。過去の分析だけでなく、将来予測を実現することで、新しい価値創造を進めていく必要がある」とした。

 日本IBMでは、今後もデータ活用とワークロードの特性を生かすアーキテクチャレベルでのイノベーションを実現するため、新製品開発を進めていくことを計画しているとのことだ。

新製品の機能のひとつアクセラレーターを導入した際のXML処理の高速化の例統合されたマルチアーキテクチャーであるIBM zEnterprise
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