日立、第3四半期は海外ストレージソリューション事業が好調

通期見通しで過去4番目の営業益水準目指す


日立の三好崇司執行役副社長

 株式会社日立製作所(以下、日立)は3日、2010年度第3四半期の連結決算を発表した。

 第3四半期までの9カ月累計(2010年4~9月)の連結売上高は前年同期比7.7%増の6兆7658億円、営業利益は612%増の3378億円、税引前利益は前年の525億円の赤字から3708億円の黒字に転換、当期純利益も前年同期の1113億円の赤字から2201億円の黒字となった。
国内売上高は前年同期比4%増の3兆7835億円、海外売上高は13%増の2兆9823億円。海外売上高比率は44%となった。

 日立の三好崇司執行役副社長は、「第3四半期は、情報・通信システム、電力システム、社会・産業システム、デジタルメディア・民生機器が、見通しを上回る実績となっている。また、建設機械部門が新興国向けを中心に増加。エレクトロニクスや自動車関連分野の需要回復に伴い、高機能材料部門や電子装置・システム部門、オートモーティブシステム部門などが前年実績を上回った」とした。

 第3四半期単独では、売上高が5%増の2兆2634億円、営業利益は81%増の1198億円、税引前利益は86%増の1070億円、当期純利益は184%増の620億円となった。「営業利益は、前年同期から535億円の増加となっているが、売価下落で500億円減、為替で200億円減、操業度改善で500億円増、原価低減で735億円増となった」という。

 

ストレージが海外で好調も、国内IT投資の回復はまだ時間かかる

 事業部門別では、情報・通信システムの9カ月累計売上高は前年同期比2%減の1兆1634億円、営業利益は68億円増の530億円となった。

 「ストレージソリューションが海外において好調であり、昨年9月に発売した上位機種が堅調だ。海外でのIT投資が回復してきたこともプラスになっている」としたものの、「国内IT投資の抑制が続いており、ハードウェアが前年実績を下回ったことで、売上高は前年割れとなった。国内のIT投資の回復はまだまだ時間がかかるとみており、急激な増収にはならない。ただし、営業利益の面ではコスト削減効果があったハードウェアが回復。部門全体でも増益になった」という。

 情報・通信システムのうち、ソフトウェア/サービスの売上高は前年同期比1%減の7754億円。そのうちソフトウェアの売上高が6%増の1158億円、サービスが2%減の6596億円。ハードウェアの売上高は前年同期比5%減の3876億円。そのうち、ストレージの売上高は5%減の1370億円、サーバーは9%減の363億円、PCは9%増の212億円、通信ネットワークは2%減の967億円。その他の売上高は6%減の959億円となった。また、ストレージソリューション事業は、売上高が前年同期比5%増の2350億円。

 「当社の仮想化技術に対するニーズが高まっており、さまざまな顧客に対するアプローチを展開しはじめている。当社の場合は、フォーチュン100社のうち、約7割の企業に導入しているなど、大手企業が占める割合が大きいことも影響している。クラウドビジネスサービスにおいては、米国の大手ネットワーク企業や、オーストラリアのトップ5に入る医療機関などにも導入が決まっている。だが、ソフトウェア/サービス事業の収益改善はさらに進めていく必要がある」とした。

 ソフトウェア/サービスでは、通期見通しで820億円を見込むが、第3四半期の利益は前年並みになっているという。

 電力システムの売上高は前年同期比3%減の5685億円、営業利益は123億円増の186億円。社会・産業システムの売上高は2%減の7845億円、営業利益は139億円増の227億円。電子装置・システムの売上高は14%増の7746億円、営業利益は364億円増の236億円。建設機械は売上高が29%増の5162億円、営業利益は269億円増の311億円。高機能材料の売上高は17%増の1兆635億円、営業利益は509億円増の739億円。オートモーティブシステムの売上高は21%増の5467億円、営業利益は303億円増の161億円。

 コンポーネント・デバイスの売上高は10%増の6161億円、営業利益は485億円増の399億円。デジタルメディア・民生機器の売上高が8%増の7557億円、営業利益は288億円改善し、208億円の黒字。金融サービスの売上高は13%減の2780億円、営業利益は120億円増の179億円。その他部門の売上高は2%増の5649億円、営業利益は105億円増の217億円となった。

 コンポーネント・デバイスのうち、ハードディスクドライブ事業は、日立グローバルストレージソリューションズの1月~9月の売上高が22%増の3994億円、営業利益は487億円となった。

 ハードディスクドライブの出荷台数は前年同期比26%増の8350万台。そのうち、民生・情報機器向けの2.5型が35%増の4910万台、 3.5型が1%減の2440万台。サーバー向けは35%増の520万台、エマージング向けが97%増の244万台、外付けHDDが261%増の242万台となった。

 PCやサーバー向けを中心にハードディスクの販売が増加。新製品投入効果や原価低減活動も功を奏しており、サーバー向けに高い製品競争力を維持しているというが、2.5型の価格下落の影響が厳しいとした。また、ディスプレイはゲーム機向けを中心に前年同期実績を上回ったという。

 

2010年度連結業績見通しで営業利益を上方修正

 なお、2010年度連結業績見通しを一部修正した。

 売上高では9兆3000億円という全体計画は据え置いたが、部門別では変更し、電力システムでは10月公表値に比べて400億円減、社会・産業システムでは100億円増、高機能材料で200億円減、オートモーティブシステムでは300億円増、コンポーネントデバイスでは100億円増、デジタルメディア・民生機器では200億円増とした。

 また、営業利益では、全体計画で300億円増の4400億円へと上方修正し、社会・産業システムで20億円増、高機能材料で30億円減、オートモーティブシステムで10億円増、コンポーネント・デバイスで30億円増、デジタルメディア・民生機器で40億円増、消去および全社で230億円増とした。

 また、税引前利益では4300億円に、当期純利益も2300億円に、いずれも上方修正した。

 2010年度通期として4400億円の営業利益を達成すると、過去最高だった1990年の5064億円、89年の5011億円、84年の4470億円に次いで、4番目の規模となる。

 「1990年前後は、メインフレームや半導体事業も好調であり、さらに国内における原子力に対する投資も重なり、家電も順調だった。しかし、93年以降、日本国内の投資が減少しはじめた。振り返れば、こうした国内の変化にもっと早く手を打ち、グローバルでの事業展開に乗り出すべきだった。日立建機などの海外事業を展開していたものは堅調であり、国内中心に展開してきた事業は苦労した。さらにエレクトロニクス分野でのコモディティ化が進み、技術が強い当社は、スピードの点で遅れたという反省がある。しかし、足元では各国の経済促進策などによる景気の底打ちや、グローバルでのコスト競争力の強化、人員削減や現地調達の加速、現地化の促進などの効果が出ている。中期経営計画における構造改革、事業ポートフォリオの改革など、もう一段経営体質を強くするための手を打ちたい」と語った。

 一方で、「営業利益では、中期経営計画の目標についても前倒しで達成することになるが、重点分野においてまだ達成していない部分もあり、さらに現地化などの課題も残る。さらに努力をしていきたい。2011年度についても、最終利益で2000億円を自信を持って達成できるようになれば、その時には上方修正も考えたい」と語った。

 

社会・産業インフラシステム社を分割、新役員の選出なども

 また4月1日付けで、川村隆取締役 代表執行役 執行役会長が、代表権がない取締役会長に就任するほか、新任役員の選出、役員の昇格、社会・産業インフラシステム社を分割し、交通システム社と社会・産業システム社に分割することを発表した。

 三好副社長は、「道筋ができたと考えており、さらに、スピードが求められるなかで、社長の中西に権限を集中することが得策と考えた。また、若い人にやってもらうこと、グローバル経験がある人に手腕を発揮してもらう狙いがある」と説明し、情報・システム社の社長に就任する岩田眞二郎氏を指して、「グローバル経験の強み」を指摘した。

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