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NEC、IoT事業戦略を発表 2020年に3000億円規模目指す

 日本電気株式会社(以下、NEC)は23日、IoT事業を強化し、2015年度の人員100人、売り上げ目標500億円を、2020年に人員500人、売り上げ3000億円に拡大することを目指す。

 IoTにはさまざまな要素があるが、NECとしては、(1)業務に密着した課題解決などを実践するIoTソリューションプロバイダー、(2)IoT構築に必要な技術、製品など技術開発を行うIoTイネーブラー、(3)顧客、パートナーなどさまざまな連携が必要となる際の中心的位置づけとなるIoTオーケストレーターという3つを提供することを目指す。

 すでにシンガポールの安全な街作りの実証実験、アルゼンチンのティグレ市の街中監視システムにおける顔認証技術の提供など、日本にとどまらず海外での事例が誕生している。「ICTのコンピューティングパワー、ネットワーク技術、ソフトウェア/ソリューション構築力というICTで培った技術が総合的に必要となるのがIoT。この三つのパワーをバランスよく持つ企業は世界的にも少数で、当社はこの三つのパワーを持っている数少ない企業」(NEC 取締役 執行役員常務 兼 CMO 清水隆明氏)との観点から、ICTで培った技術を生かし、IoT事業に取り組んでいく。

NEC 取締役 執行役員常務兼CMOの清水隆明氏
IoT時代にNECが目指す姿

 NECではIoTを5層モデルでとらえている。第1層を実世界との接点となるDevice Computing。第2層はIoT連携制御処理を行うEdge Computing。第3層はデータを利活用するためのCloud Computing。第4層となるのが第1層のDevice Computingと第2層のEdge Computing間でデータ連係を行う、ZigBee、Bluetoothなどを活用した近距離ネットワーク。第5層は、第2層のEdge Computingと第3層のCloud Computing間でデータ連係を行う広域ネットワーク。

 この5つの層に加え、安全、安心を実現するためのセキュリティを提供。「この5年間、ICT分野で利用することを目的にSDN、Cloud、ビッグデータ、さらにセキュリティの技術開発を積極的に進めてきた。この技術はIoT事業においても重要な技術となる」(清水氏)との観点からIoT事業においてもこれまで培ってきた技術を積極的に活用していく。

NECが考えるIoTの5層モデル

 SDN技術によって、ネットワーク構成を要求、予測に応じて動的に変更。データ量が複雑に変化するIoTシステムにおいてもQoSを確保する。クラウドの高度な仮想化技術によって、システム要件や実世界の変化に対応した柔軟なりソースの最適配置を実現。ビッグデータ分析技術を活用することで、リソース変化の予兆把握を行う。セキュリティ技術によって、事故、サイバー攻撃などに対し、暗号化、認証技術でシステムの歌謡史絵、安全性、機密製を守っていく。

 具体的なIoTソリューションとして、セーフティ、交通・都市インフラ、スマートエネルギー、製造、流通/物流という業種・業務に合わせたソリューション提供を行う。すでに提供済みのものもあるが、新たに開発を進め、「国を超えてニーズがあるものに関しては、日本だけでなく、ワールドワイドをターゲットにビジネスを進める」(清水氏)方針だ。

 新しいソリューションとして今回発表されたのが、「土砂災害検知・予測ソリューション」、「水需要予測ソリューション」、「電力需要予測ソリューション」、「画像・重量検知ソリューション」、「VIP検知接客支援ソリューション」の5つ。

 土砂災害検知・予測ソリューションは土中水分量だけで、土砂斜面崩壊の危険度をリアルタイムに、高精度に算出する。水分量センサーのみで危険度を算出することが可能なため、センサー数を従来比約3分の1に提言し、従来コストとほぼ同額でより広範囲な斜面に設置することができる。2015年度下半期に発売を予定している。

 水需要予測ソリューションは、異種混合学習技術を活用することで、気象情報など複数要因をふまえて水需要を高精度に予測する。無駄な増水を行わないことで、電力使用量削減、水資源の有効利用に貢献することができる。提供時期は2016年度を予定している。

 電力需要予測ソリューションは、ビル、病院、鉄道、工場などでの過去の電力需要量の傾向を学習。その結果に基づいて、今後の電力需要量を30分単位で高精度に予測することで、事業者の発電計画、電力調達契約の立案などへの効率的な運営を支援していく。7月末の発売を予定している。

 画像・重量検品ソリューションは、7月23日付けで発売された。NEC独自の画像認識技術と重量計を活用した、物流業界向けソリューション。出荷検品時に複数商品の品目、数量を瞬時に特定し、バーコード、目視確認なしに、正誤を自動的に確認する。

 VIP検知接客ソリューションは、店舗や施設内に設置されたカメラを使ってゲストの顔を認知。登録された顧客情報を参照することで、先回りした対応を可能とする。2015年度下半期の発売を予定している。

NECのIoTソリューション

 こうした具体的なソリューションに加え、保有する技術の強化、さらなる新技術開発にも積極的に取り組む。7月17日には「最適化計画」を、7月21日にはオープン系データ秘匿技術を発表した。

 「現在開発中の技術の一端をご紹介すると、セキュリティ技術として、システム全体のリアルタイムモデル化により、複雑、大規模なIoTシステムにおける未知攻撃検知を実現する技術について、社内で検証を進めている。やりとり、ふるまいをずっと補足していくことで、いつもと違う部分を確認したら、それを隔離すること自動化で行う。現段階ではどこに新しい技術を利用しているのか明らかにできないが、IoTには必ず必要となる技術だと考える」(清水氏)

 NECではこうしたソリューション開発技術開発とともに、IoTには業界を越えた連携が必要との観点から、標準化、業界連携に関する団体にも積極的に関与し、全方位でIoTビジネス推進に取り組んでいく。

三浦 優子