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富士通が「明日の学びプロジェクト」、学校ICTの“普及モデル”確立めざす

日本・ASEANの6校で授業実践

 富士通株式会社は16日、学校における児童生徒1人1台情報端末時代に向け、「明日の学びプロジェクト」を開始すると発表した。併せて、同プロジェクトで教員と児童生徒が利用するICTソリューション「K-12 学習情報活用 知恵たま(以下、知恵たま)」を発売した。

「フューチャースクール推進事業」で見えた効果と課題

 富士通は2010年から「総務省 フューチャースクール推進事業」に参画し、全国6校の学校ICT化を支援。タブレットPCもこれまでに173団体に約3万台を導入している。また、奈良教育大学付属小中学校との共同研究なども進めてきた。

多様な学びが求められている
これまでの取り組み

 これら実証実験から見えた効果として、生徒においては「ICT化を支援で思考プロセスが共有されることで児童の他者理解が進み、思考力・判断力・表現力が向上」し、先生においては「若手教員の指導力を補完し、教員間の協働と授業改善、教材研究の恒常化」が進んだという。

 一方、問題点としては「ICTを使って授業をどう行えばいいかわからない」(授業面)、「大部分の教員はICTが苦手」(教員面)、「ICT導入方法や活用ステップのイメージがつかみにくい」「授業の中で起動やダウンロードに時間が取られて授業にならない」(ICT環境面)などが明らかになったという。

実証から見えた効果
問題点も明らかに

 これらを踏まえ、普及のために身近に参考できる事例や相談先を作る目的で「明日の学びプロジェクト」を開始し、多忙でICTに不慣れな教員も楽に使えるICT環境として新たに「知恵たま」を提供する。

「明日の学びプロジェクト」で普及モデル確立へ

 「明日の学びプロジェクト」では、ICT活用授業の実践と授業ノウハウの流通による普及モデルを確立することを目的に、6校の参加校(2014年10月16日現在)に、ICT活用授業環境を無償で提供する。

明日の学びプロジェクトの概要

 具体的な取り組みとしては、ICTを活用した授業実践と、参加校の学校間連携による授業ノウハウ共有を進める。参加校は、北海道札幌市立北光小学校、福島県郡山市立橘小学校、神奈川県川崎市立川崎小学校、静岡大学教育学部付属静岡小学校、鹿児島県薩摩川内市立川内小学校、タイ国立チュラロンコン大学付属学校(予定)の6校。学校間連携のために、富士通クラウド上に「ちえがたまるポータルサイト(通称:ちえポー)」を構築する。

 無償提供するICT環境は、教員用タブレット、児童用タブレット、サーバー、タブレット充電保管庫、長短焦点プロジェクタ、ならびに今回発表した「知恵たま」。加えて、ICT機器を普通教室で日常的に利用するための指導案・導入手順の提供や、富士通パートナー会社による「ICT支援員」の派遣を行う。

 これらにより、先生・生徒が意識せず「授業準備〜授業〜記録保存〜振り返り」のサイクルを回せる未来型教育を実現し、ICT授業の普及モデルの確立を目指すという。

 プロジェクト期間は2014年9月〜2016年3月の19カ月。最初の成果物として、構築完了と授業実践(公開授業)、授業レシピ・教材コンテンツ・授業記録、ICT支援員業務の内容まとめを2014年度中に公開する予定。

 なおプロジェクトには、日本マイクロソフト、内田洋行、富士電機ITソリューション、エフコム、大丸藤井、遠鉄システムサービスが協力する。

 ヘルスケア・文教システム事業本部長代理の中尾保弘氏は「今回の取り組みは、フューチャースクール推進事業などで環境面での課題洗いだしなどを行った2010年〜2013年の試行期を経て、まずは3.6人に1台導入を目標とした普及期に該当するもの。2017年までに普及モデルを確立し、2018年から2020年までの発展期につなげていく」と述べている。

授業の履歴が自動でたまる「知恵たま」

 プロジェクトでICT技術の中核となるのが「知恵たま」。ICT教材準備を容易にする機能、授業でのPC利用を簡単操作で実現する機能、授業履歴の自動蓄積、教員・児童生徒間での回答・作品共有機能などを備えたプラットフォームで、「『使う』から『たまる』、『たまる』から『活かす』へ、蓄積されたデータを児童生徒・教員に還元し、自律的な学習や指導力の向上を可能にする」(中尾氏)という。

プロジェクトで構築するシステム概要
学びのデータ活用による指導力の向上

 機能的には、時間割を起点に「授業準備」〜「授業」〜「保存・記録」〜「振り返り」が可能な設計が特徴で、PC・タブレットに表示される「時間割ランチャー」に教材をドラッグ&ドロップするだけで授業準備が完了する。

 授業中の一斉アクセスによるネットワーク遅延問題を解消するため、授業が始まる前の児童生徒のログインと同時に、ネットワークキャパシティを超えないようデータ送信を調整しながら、教材をタブレットへ自動的にダウンロードする仕組みも備えるという。

「時間割ランチャー」に教材をドラッグ&ドロップ
データアクセス負荷を抑える仕組み

 授業が始まったら生徒も「時間割ランチャー」から時限を選択。煩わしい操作を省いて利用開始できる。教材や生徒の解答・作品データは「知恵たまDB」に自然とたまり、個人でデータを取り出せるため、友達の作品も自身の1年生からの振り返りも自由自在だ。

生徒はタブレットPC上で回答
そのまま提出。学習履歴が保存され、友達の作品や1年生からの振り返りが可能

 また、授業の準備から実施までを繰り返すうちに、利用した教材や板書の画像に、日付や強化などの情報が自動的に付与されて蓄積されるため、先生はこれらのデータを授業研究に容易に活用可能。さまざまな切り口で生徒ごとの学びの記録を検索したり、学習過程を見える化できるため、個に合わせた育成も可能になるという。

 プロジェクトでは対象校に「知恵たま」を無償提供するが、10月16日から一般販売も開始。価格は100クライアント(生徒・先生)で50万円(税別)、学校全体で使える学校ライセンスが150万円(税別)。2017年度末までに5000校への導入をめざすとしている。

(川島 弘之)