NEC、社内向けソフト開発クラウドの利用意義を説明~2015年度末には3万ユーザーへ拡大を目指す


執行役員常務の山元正人氏
ソフトウェア生産革新におけるソフトウェアファクトリの位置付け

 「ソフトウェア開発全般の改善を行ってきた当社では、その一環としてクラウド型ソフトウェア開発環境『ソフトウェアファクトリ』を自社へ導入し、グループの開発者、管理者が一緒になってソフトの生産性を高め、品質を高めてきた。このユーザーが2012年度上期に1万人を突破。今後は、2015年度末までに3万ユーザーまで拡大する」――。

 日本電気株式会社(NEC)は27日、2009年度から導入を進めてきた「ソフトウェアファクトリ」の動向に関する説明会を開催。執行役員常務の山元正人氏がこの取り組みとその成果を解説した。

 ソフトウェア開発環境については、「以前は、ツールをそれぞれのグループが探してきて導入していたため、隣のグループとはやり方異なってしまい、ノウハウがうまく展開できなかったり、トラブル発生時の対応が遅れてしまうといった課題があった」(山元氏)という。

 NECではこうした課題を解決するため、ソフトウェア開発者の状態を把握して問題点があれば改善活動を行う「マネジメント」、開発方法論を標準化してグループ内で生産性や品質を保てるようにする「エンジニアリング」、組織ごとの創意工夫を現場から引き出す「現場改善活動」といった3つの視点でソフトウェアの生産性向上に向けた取り組みを行ってきた。

 ソフトウェアファクトリはそうした取り組みの一環として、2009年より導入が順次進められてきたもので、標準化された開発方法論と、標準ツールを搭載した開発環境を提供。プロジェクトの遂行に必要な仕様書、レビュー記録票などの成果物も共有可能で、成果物の不整合が抑えられるため、手戻りの抑制を実現するほか、開発・テスト環境を共有することで、デバッグ作業も効率化できる。こうした効果により、製造・テスト工程で10~20%のコスト削減効果が見込めるという。

 また、ソフトウェアファクトリ内に格納されたソースコードに対し、夜間などにコード検証ツールを走らせる仕組みを備えているもの特徴。これによって、セキュリティ面での脆弱性やバグ、オープンソースのライセンス違反などを早期に発見でき、問題箇所の迅速な修正を行えるとした。

 さらに山元氏は、「見逃されがちだが、従来はそれぞれに行っていた開発環境の導入作業から開発者を解放できるのも大きいし、クラウド環境のメリットを生かして最短2時間で環境構築が可能なため、環境構築のリードタイムを従来の1/10~1/100に短縮できている。一方管理者向けには、同一の指標を使ってプロジェクトの進ちょく状況を把握しやすくしているので、プロジェクトのスムーズな遂行を支援できる」と述べ、迅速さ、見える化といった点でも効果が高いと説明した。

 なお、ソフトウェアファクトリの環境は東西2カ所のデータセンターに構築され、相互バックアップを毎日行うことで、事業継続や災害対策を実現している。また、社外からのインターネットを通じたアクセスに対応するほか、先端技術を積極的に用いていることも特徴で、OpenFlowを活用したプログラマブルフロースイッチ、クラスタストレージであるiStorage HSなどを導入している。


ソフトウェアファクトリのメリットシステム構成

 NECでは前述のように、現在1万人程度の開発者へソフトウェアファクトリを提供しているが、メリットが大きいことから、順次適用の範囲を広げ、2015年度にはソフトウェア開発者の約半分にあたる3万人のユーザーにまで提供を拡大したい考え。これによって、今後3年間で200億円程度のコスト削減が見込めるという。

 また、海外拠点でのオフショア開発についても国内のソフトウェアファクトリを利用しているが、今後は海外にもソフトウェアファクトリの環境を設置し、適用を広げていく計画で、まずはインドにおけるグローバル製品/SI開発者向けに10月から運用を開始し、中国でも、中華圏向けのビジネスに2013年度から適用。ゆくゆくはグローバル5極(中華圏、アジアパシフィック、EMEA、北米、中南米)全体への拡大を見込む。

 このほか、社外へのサービス提供も行う予定で、山元氏は、プロジェクト管理とエンジニアリングツールの両機能を2013年度からクラウドサービスで展開していく考えを示した。「当社では情報システムで利用しているが、最近増えている組み込み系でも有効と考えているので、外部への販売を進めていきたい」(山元氏)。


ソフトウェアファクトリの展開状況と目標まずはインドから展開を開始し、中国や他の地域への拡大を図るサービスとしての販売を開始する予定
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