日本IBM、5.5GHzプロセッサを搭載したメインフレーム「zEC12」~セキュリティや事業継続機能なども強化


 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は29日、メインフレーム「IBM zEnterprise」において、新製品「IBM zEnterprise EC12」(以下、zEC12)を発表した。価格は最小構成時で1億円程度から。

 「zEnterprise」は、メインフレームとオープン系システムを一体化させ、1台の論理的なサーバーとして見せることで、企業ユーザーの管理負荷軽減を支援するサーバーソリューション。メインフレーム本体と、POWER 7やx86ブレードサーバーを搭載した拡張ユニット「IBM zEnterprise BladeCenter Extension(zBX)」から構成されており、z/OS、UNIX、Linux、Windowsといったさまざまなプラットフォームを1台に統合し、ワークロードを最適化することができる。

 今回提供される「zEC12」は、日本IBMのメインフレームとしては12世代目にあたる製品で、業界最速という5.5GHzのCPUを搭載し、第1世代の「zEnterprise」である「z196」と比べて、コア当たりの処理速度を25%向上。1筐体あたりに搭載できるCPUコア数が96から120へ増加したこともあって、筐体あたりの命令処理能力も50%向上したという。

 システム製品事業 System z事業部 エバンジェリストの北沢強氏は「メインフレームでは依然としてバッチ用途が多く、その性能改善という観点では、プロセッサ性能が上がれば上がるほどバッチ性能が上がるので、当社では周波数を向上させてきた」と、IBMのアプローチを説明する。


zEC12zEC12の特徴

 また、DRAMよりも安価で大容量のフラッシュメモリを、新たなメモリ階層として利用する「Flash Express」もサポートした。通常、メモリとディスクのアクセス/タイム特性には大きな差が存在する(ディスクが遅い)ため、ディスクへのページングが発生すると速度が一気に下がってしまうが、フラッシュメモリを中間デバイスとして利用することにより、そうした速度低下を抑えられるとした。

 加えて、世界一のスパコンとなったセコイアでも実装されている、複数のトランザクション間でメモリ競合を回避するハードウェア機能「Transactional Execution Facility」を、汎用の商用サーバーとして初めて実装。「ロック制御を気にしなくてもよくなるので、メニーコアでの性能向上が期待できる」(北沢氏)とのことで、例えば高負荷のJavaアプリケーションなどで大幅にパフォーマンスを改善できるとした。

 一方可用性やセキュリティの面では、過去90日分のログを解析して障害につながる予兆を事前検知し、システムの可用性を高めるオプションソフト「IBM zAware」や、データ処理・通信時などのセキュリティを強化する暗号処理カード「Crypto Express4S」が新たに提供される。


Flash ExpressCrypto Express4S

 なお日本IBMでは、旧モデルからの移行や、国産メインフレームからの乗り換えなどを主な販売対象としてビジネスを進める考え。特に、国産メインフレームユーザーを積極的に取り込むために、移行専門チームの強化や移行セミナーの実施などを継続する。

 システム製品事業 System z事業部の大島啓文事業部長は、「国産ベンダーからzEnterpriseへの置き換えは一昨年から進めており、ノウハウがたまっているので、プリセールス時の移行費用の見積もりなどに生かしてきた。また国産ベンダーの製品ユーザーには、この先に不安を持っている方々も多く、当社の安心できるロードマップを示していく」との考えを示す。

 また、zLinuxによるサーバー統合メリットも引き続き訴求するとしており、大島事業部長は、「Linuxを基幹システムとして使っているケースも多いが、大規模であればあるほど、zLinuxでの統合によるライセンスコスト削減などのメリットが生きる。zEC12では最大10万の仮想環境を集約できる拡張性があるので、運用管理や設置スペース、消費電力などのコストを大幅に削減できる」と述べ、移行メリットのメッセージを引き続き発信していくとした。


システム製品事業 System z事業部の大島啓文事業部長
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