MKI、バイオサイエンス分野でビッグデータ有効性の実証実験
三井情報株式会社(MKI)は10日、ビッグデータ分析を企業経営へ有効活用する技術習得に向け、SAPジャパン株式会社が提供するインメモリソフト「SAP HANA」を用いて検証に取り組むと発表した。第1弾として、がん研究におけるゲノム解析と、創薬開発プロセスにおける化合物データ解析に、ビッグデータ分析を活用する実証実験に着手する。
バイオサイエンス分野の研究開発においては、膨大な量のデータを効率よく処理することが新薬の開発、疾病要因の特定に大きな影響を与える。また今後、同分野における研究データは大幅に増大することが予想され、新薬開発への時間短縮・コスト削減のためにはデータ解析の精度・速度の向上と可視化の仕組みが不可欠になるという。
MKIは、ICT技術をバイオサイエンスの研究に応用する取り組みを長年続けてきたが、さらにビッグデータ分析を活用するための技術を習得するため、ビッグデータによるがん細胞ゲノム解析、創薬におけるデータ解析に着手する。
がん細胞ゲノム解析においては、がんはゲノムの異常が原因であることが知られ、がん化のメカニズムの解明や治療薬の開発にゲノムの変異解析が重要な役割を果たすとされる。そのため、次世代シーケンサーと呼ばれる技術によって、がんのゲノム全体の塩基配列を決定でき、膨大に生み出されるがん細胞と正常細胞のゲノムを比較することで、がんの原因となる遺伝子異常の探索が進められている。SAP HANAをこの解析に適用することで、がん遺伝子探索の効率性を検証する。
一方、製薬開発では数百万化合物のライブラリから薬の候補となる化合物を選択し、実験や臨床試験などを経て薬として市場に販売される。このとき、化合物データベースをコンピュータで選別し、化合物を選び出すことで研究開発の期間が短縮できる。しかし、膨大な化合物データを解析し、薬らしい化合物かどうかの予測を行う必要がある。SAP HANAをこの解析に適用することで予測時間の短縮を試みるという。
これらの取り組みを通じてMKIでは、SAP HANAをデータ基盤としたリアルタイム情報分析手法を確立し、ビッグデータ解析へ適用することで顧客の経営戦略に有益となる情報を提供する考え。また、MKIは従来よりSAP ERPのシステムインテグレーションを提供している。今後は基幹業務と解析データを連携させ、新たなビジネス価値の創出も目指す。