グリッド基盤上でITシステムを丸ごと仮想化するプラットフォーム「CA AppLogic 3.0」

国内市場向けに日本語版を初リリース


カスタマー・ソリューション事業本部 クラウド・ソリューション事業部 部長のマイク・アルフォード氏

 CA Technologiesは8月23日、グリッド基盤上でITシステムを丸ごと仮想化する次世代型の仮想化プラットフォーム「CA AppLogic 3.0」日本語版を本日より出荷開始すると発表した。

 「CA AppLogic 3.0」は、2010年2月にCA Technologiesがクラウド・コンピューティング管理製品のポートフォリオ拡充を目的に買収した3Tera社の技術をベースにしたソリューション。サーバーや各種ミドルウェア、ネットワーク機器などを含めたITシステムを丸ごと仮想化できるのが特徴で、ハードウェア調達の必要がなく、不測の事態が起こった際のITシステムのマイグレーションやバックアップなど、事業継続に素早く対応できる機動力を備えている。

 カスタマー・ソリューション事業本部 クラウド・ソリューション事業部 部長のマイク・アルフォード氏は、「現在、データセンターの保有する約30%のサーバーは、その使用量が3%以下といわれている。また、データセンター全体でも平均的な利用量は最大6%程度であり、多くの資源や電力を浪費しているのが実状。これは、データセンターの生産能力の予測が困難であることに加え、余裕をもった保守的なキャパシティ・プランニングが行われていることが大きな要因だ」と、従来型のデータセンターの抱える課題を指摘。「『CA AppLogic 3.0』では、ITシステム環境全体を“サービス・コンテナ”として仮想化統合することで、実際のビジネスニーズに最適なキャパシティ・プランニングが可能となる。また、アプリケーションもクラウド環境へシームレスに移行できるため、新規ソリューションの導入やアップグレードを柔軟かつ容易に行うことができる」としている。

 具体的には、複数の物理サーバーをつなぎ合わせて、その上でグリッド基盤を形成。「各物理サーバーがもつCPUやメモリなどを合計し、一つのリソースプールとして透過的に扱うことができるため、特定の物理サーバのリソース状況を意識することなく、仮想ITシステムを提供するために必要なハードウェアリソースを、無駄なく利用することが可能となる。さらに、必要に応じてグリッドを構成する物理サーバーの追加、削除や、電源のon/offを適宜実施できる」(カスタマー・ソリューション事業本部 クラウド・ソリューション事業部 シニアコンサルタントの兼岡禎朗氏)という。なお、今回の「3.0」から、このグリッドサーバーに、VMware ESX Serverを利用することが可能となった。

 仮想化にあたっては、「従来のように『マシン』単位で仮想化を行うのではなく、マシンの集合体である『システム』単位で仮想化を実装する。起動や停止、コピーなどの操作を、仮想システムに対してワンクリックで実施できるため、サービス・イン、サービス・アウト、システムの追加などにかかる時間を数か月から数時間単位にまで短縮することができる」(兼岡氏)と、システム単位による仮想化のメリットを強調。また、開発環境からテスト環境、本番環境に至るまで、コピー&ペーストで環境を複製でき、本番と同じ環境でテストが可能なほか、本番環境で障害が起こった場合でも、環境をコピーして本番と全く同じ条件で問題を追跡できる。異なるグリッドへのマイグレーションもシステム単位で行うことが可能で、災害対策サイトなどリモートの拠点で全く同じサービスを迅速に再展開し、企業の事業継続性をサポートする。

カスタマー・ソリューション事業本部 クラウド・ソリューション事業部 シニアコンサルタントの兼岡禎朗氏CA AppLogicによる仮想化の実現

 さらに、仮想ITシステムを短時間で構築できるよう、Webブラウザからアクセスできる専用デザイナを搭載。専用デザイナは、あらかじめ設定した仮想アプライアンスを登録するための「カタログ」と、ドラッグ・アンド・ドロップでシステムを直観的に構築するための「キャンバス」によって構成される。これにより、カタログからサーバー、ファイアウォールやロードバランサに至るまで、必要な仮想アプライアンスをドラッグ・アンド・ドロップで配置し、それらを線でつなぐことで視覚的に仮想ITシステムを構築することができる。専任のエンジニアがいない場合でも、すぐに使えるITシステムを迅速に構築、展開することが可能となる。

 このほか、複数のグリッドを統合的に管理するためのWeb GUIとして、バックボーン・ファブリック・コントローラ (以下、BFC) を提供する。BFCを使用することによって、単一のWeb GUIからグリッド環境のインストールやセットアップ、アップグレードなどの作業を自動化、簡素化することができる。また、物理サーバーを自動検出してグリッドに追加したり、サーバーの電源をリモートで制御できるため、グリッドの負荷状況を見ながら、必要に応じた数の物理サーバーでグリッドを構成することが可能となる。

仮想ITシステムを短時間で構築できる専用デザイナ複数のグリッドを統合的に管理できるWeb GUI「バックボーン・ファブリック・コントローラ」

 日本市場に向けた展開についてアルフォード氏は、「今回の『CA AppLogic 3.0』は、3Tera社買収後、CAブランドとして投入する初のバージョンとなる。そして、このタイミングで、国際化対応を図り、初めて日本語版をリリースする。すでに『CA AppLogic』は、日本でもKDDIのクラウドソリューションに採用されるなど導入実績をもつが、日本語版のリリースを機に、今後マネージド・サービス・プロバイダー(MSP)をメインターゲットに、販売パートナーのネットワンシステムズと共同で積極的に拡販展開を進めていく。さらに、『CA AppLogic 3.0』から、VMwareへのサポートが加わることで、大規模のエンタープライズ企業にもターゲットを広げ、新たな市場開拓を目指していく」と意欲を見せている。

 「CA AppLogic 3.0」の税別参考価格は、25ソケットの場合394万円となる。


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(唐沢 正和)
2011/8/24 06:00