オンプレミスとクラウドを自由に行き来できる点がDynamics CRMの強み~マイクロソフト


Dynamics CRM Onlineの特徴

 マイクロソフト株式会社は25日、クラウドサービスに関する説明会の中で、提供を予定しているパブリッククラウド(SaaS)型CRM「Dynamics CRM Online」と、オンプレミス型やパートナーホスティング型を含めた、Dynamics CRM全体の強みを説明した。

 Dynamics CRMは、マイクロソフトが独自に開発したCRMアプリケーション。国内でもすでに、オンプレミス型では4年の実績を持つほか、現行のバージョン 4.0からはパートナーによるホスティング形態での提供も開始されており、ワールドワイドで、あわせて2万3000社、140万以上のユーザーが利用している。

 この製品の、ユーザーが使い慣れたMicrosoft Officeのインターフェイスを利用できる、豊富な機能と高いカスタマイズの自由度を提供する、といった特徴はそのまま受け継ぎ、マイクロソフト自身がSaaS型で提供するサービスがDynamics CRM Online。「現在提供されている北米に加えて、新たに日本を含めた40カ国において、2011年上半期中の提供が予定されている」(マイクロソフト Dynamicsビジネス本部 CRMソリューション推進部の齋藤誉マネージャー)という。

 なお、提供地域の拡大は、Dynamics CRMの次期バージョンである「Dynamics CRM 2011」での展開になり、オンプレミス型の製品に先駆けて、Dynamics CRM Onlineでの提供が予定されているとのこと。齋藤氏はこの点を「当社が、クラウドにどのくらい力を入れているか、という点を表すもの」だとした。

Dynamics CRM Onlineの提供スケジュール。Dynamics CRM 2011の提供開始は、SaaS版のDynamics CRM Onlineが2011年上半期、オンプレミス版が2011年第1四半期とアナウンスされているが、実際にはDynamics CRM Onlineが先に提供される予定だマイクロソフト Dynamicsビジネス本部 CRMソリューション推進部の齋藤誉マネージャー
オンプレミス型、パートナーホスティング型、SaaS型のそれぞれを自由に行き来できる点が最大の特徴
Dynamics CRM Onlineのサービス概要

 CRMアプリケーションは、salesforce.comやOracleなど、SaaS型で提供しているベンダーも多く、SaaSであることだけでは強調材料にならないが、オンプレミス型、パートナーホスティング型、SaaS型のそれぞれを自由に行き来できる点が、マイクロソフトならではの、最大の特徴になる。

 例えば、テスト目的でSaaS型(Dynamics CRM Online)を使い始めても、そのデータとカスタマイズ部分を移行するだけで、容易にオンプレミス型に形態を変えることができるのだという。もちろん、オンプレミス型から、運用負荷の軽減を目的にSaaS型へ切り替える、といったその逆のケースも可能で、齋藤氏は「これは、すべてシングルソースコードでできあがっているからできること。自由な移行ができるのは、当社だけの大きな強みだ」とアピールする。

 とはいえ、SaaS型への顧客の関心は高く、その中での競争は激烈になっている。この点を考慮してマイクロソフトでは、「大きな投資をして、戦略的なアプリケーションとして提供していく」(齋藤氏)意向で、現在提供中の米国では、1ユーザーあたり月額44ドルの値付けがされている。齋藤氏によれば「競合の一般的な価格感は、7000円から1万5000円くらい」とのことで、日本でも米国と同程度の価格で提供することにより、まずは多くのユーザー獲得を目指す考えを示した。

 価格面ではさらに、2011年6月までの新規契約の場合、1ユーザーあたりの月額料金を初年度は34ドルに値引くキャンペーンも行われており、この面でも優位性を打ち出していく方向だ。

 また別の側面では、パートナーとの関係をどうするか、といった問題がある。SaaSでの提供では、オンプレミス型に比べて導入の敷居は低いが、業務アプリケーションを自社だけで導入できる企業は、そう多くない。従って、パートナーとの関係が非常に重要になる点は、これまでのオンプレミス型、パートナーホスティング型と変わることはない。マイクロソフトでもこの点には留意し、すでにパートナーとの取り組みをさまざま開始しているとのことで、導入支援やサポートサービスといった付加価値をパートナーが提供できるように、支援を行っていくという。

 それでも、SaaS型での販売となれば、パートナーにとっては収益構造が変わることを意味する。一般的なソフトウェアのライセンス販売では、初期導入時に大きな売り上げが立つものの、SaaSでは月額課金形態のため、販売時の収入が目減りしてしまう。マイクロソフトのSaaSの場合、通常は、初年度に18%、2年目以降に6%の販売手数料をパートナーに支払うことになっているが、「Dynamics CRM Onlineでは、初年度の手数料を40%に拡大」(齋藤氏)して、収入面でも、パートナーの負担が少なくなるようにしている。

 加えて、SaaS型を検討する企業が増えれば、パートナーホスティング型への流入も増えることが予想されているのだという。それは、「やはりデータセンターの場所の問題などで、プライベートクラウドで利用したい、といったニーズが多くあるため」(齋藤氏)。Dynamics CRM Onlineではデータセンターが海外になるし、インターネット経由でのアクセスが必要になるが、日本のパートナー企業が手掛けるパートナーホスティング型では、データセンターももちろん日本に存在するし、VPNや専用回線を利用した、プライベートクラウド的なサービスも提供できる。

 競合の場合、運用コストの削減を目的にSaaS型の導入を検討しても、セキュリティ上の問題でそれがかなわない場合は、オンプレミス型になってしまうが、Dynamics CRMでは、パートナーホスティング型を選択すれば、こうした問題をクリアできる、というわけだ。

 マイクロソフトでは、このように、想定される問題に対して回答を1つ1つ整備し、Dynamics CRM Onlineの国内提供に備えるとしている。


Dynamics CRM Online(ベータ版)の画面ドラッグ&ドロップ操作による、容易な画面カスタマイズ性も特徴という
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