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日本IBMのコンサルタントが「Watsonによる製造業・流通業の変革」を講演――、実はその目的は?

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、2月16日午後7時から、東京・箱崎の日本IBM箱崎本社ビルにおいて、「IBM Watsonの製造業・流通業の変革」を題したイベントを開催した。

 実は、主催したのは、2017年1月に日本IBMのサービス部門であるグローバル・ビジネス・サービス事業本部(GBS)傘下に新設したばかりの「IbD(IBMers by Degrees)」。中途採用を行うためのバーチャル組織であり、今回のイベントの目的は、Watsonに関するコンサルタントやSEを採用することにある。午後7時というスタート時間を設定したのも、勤務終了後の時間帯に集まることを想定したためだ。

東京・箱崎の日本IBM箱崎本社ビル
日本IBMで開催された「IBM Watsonの製造業・流通業の変革」

 日本IBMでは、現在、1000人のコンサルタントを、2017年中に1500人に増やす予定であり、IBDはそれを推進する組織になる。GBSのほか、人事部門や教育部門からも参加。中途採用に関する活動のほか、採用した人材の教育なども担当する。

 「日本IBMにとって、Watsonに関するコンサルタント、SEの採用は、2017年における最優先課題になっている」と、日本IBM 人事 システム事業担当の花田尚美部長は語る。

 今年1月には、金融分野のコンサルタントやSEを対象にした1回目のイベントを開催しており、約100人が参加。すでに採用に至ったケースもあるという。

 今回は、製造業、流通業を対象に初めて開催したもので、100人の定員で参加者を募集したが、わずか3日間で定員に達したという。参加者は20代~50代までさまざまで、女性の姿も見られた。

日本IBM 人事 システム事業担当の花田尚美部長

Watsonに関する最新事例などを紹介

 イベントでは、日本IBMのグローバル・ビジネス・サービス事業本部に所属するコンサルタントが、製造・流通業界におけるWatsonを活用した世界各国の事例を紹介。参加者からは、コンタルタントに対する質問も飛んだ。

 日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業本部戦略コンサルティング アソシエイトパートナーの門脇直樹氏は、「いま、日本IBMにはWatsonに関する商談が数多く寄せられているが、日本IBMにはそれに対応する人が足りないのが現状。お客さまに商談を待ってもらっている状況である。手が足りない。即戦力となり、一緒に働いてくれる人がほしい」と語る。

 Watson日本語版は2016年2月18日に発表され、ちょうど1年を経過したところだ。本格的に営業活動を開始したのは、2016年4月からであり、製造業分野を例にとれば、40~50件のプロジェクトを進めているという。

 「コンサルティング経験者はもとより、コンサルティングの経験がなくても、システムインテグレータや情報システム部門など、事業そのものをよく知る人材を得たいと考えている」(同)という。

 また、IBMでは全世界で3000人の研究所に働いており、日本にも東京基礎研究所がある点も強調。「コグニティブに関する研究者と、コンサルタント、SEががっちりと組んでビジネスができる環境を持っているのはIBMだけである」(同)とした。

日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業本部戦略コンサルティング アソシエイトパートナーの門脇直樹氏

 イベントの冒頭、日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業本部 流通サービス事業部の高橋総一郎氏は、「IBMのコグニティブ・ビジネス戦略」をテーマに講演。

 「トランプ米国大統領の就任など、予測ができない、不確実性の時代が訪れている。ビジネスの世界でも、UBERに代表されるように、予測できないことが起きている。そうしたなかで、日本IBMが重要だと考えているのがテクノロジーである。IBMが行ったCxOに対する調査でもテクノロジーが最も重視されており、中でもデジタルテクノロジーが重要であるとされている。世界中のモノがつながるなかで、IBMは、コグニティブテクノロジーをWatsonというブランド名で推進している。これは、学習するコンピュータである」とした。

 また、「IBMが目指しているのは、リインベンションパートナー(再発明するためのパートナー)であり、コンサルティングにより業績に貢献したり、システム開発により生産性を向上したりするのではなく、新たなビジネスモデルを構築するパートナーでありたい。それができるのはIBMしかないと考えている。不確実性の時代を生き抜くためにも、IBMという会社を選択肢のひとつにしてほしい」と呼びかけた。

日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業本部 流通サービス事業部の高橋総一郎氏

 日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業本部 組織・人財戦略の杉山慶太氏は、「Watsonだけでは箱のままであるが、さまざまな可能性を持っており、これを生かすのは人である。IBMでは、Zero to Oneを生み出す企業であり、世界のブランドランキングでは6位であり、そのなかでは唯一のB2B企業。それはイノベーションを起こしている企業であるということが認知されているからである。世界で40万人が働いており、蓄積されたものも多い。世界で最大級の図書館ともいえる企業ともいえる。求めているのはコンサルタント、プロジェクトマネージャー、ITスペシャリストだ。キャリア入社した人が働けるように専任の組織を設け、万全の体制でサポートする」と述べた。

日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業本部 組織・人財戦略 杉山慶太氏

イベント終了後にはキャリア選考会も

 また、イベント終了後には、キャリア選考会を開催。「関心を持ってもらった人と日本IBMが、お互いに、より深い情報交換ができる場を用意することで、早期の採用につなげる狙いがある」(日本IBMの花田部長)とした。

 イベントが終了したのは午後8時30分であり、遅い時間まで時間をかけて面談を行った。

 なお日本IBMでは、3月14日に次回のイベントを開催する予定だ。対象となる業種は現時点では未定。今後、同社サイトを通じて募集する予定としている。

 同社では、今後も月1回のペースでイベントを開催する予定であるほか、1日をかけた「インタビューDAY」を設けて、中途採用に関する面談を行う場を設ける予定だという。

 人工知能の活用は、あらゆる業種で注目を集めており、それに伴ってIT産業では人材の取り合いになっているのも事実。また、コンサルタントやSEにとっても、最先端の人工知能技術に対する関心が集まっている。今回のイベントの参加募集でも、短期間で定員に達してしまったことからも、それが証明されよう。人工知能を巡って、優秀な人材の取り合いが、日本のIT産業でも始まっている。