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富士通研究所、取引先の制限や文書秘匿化などブロックチェーンのセキュリティ強化技術を開発
2016年10月19日 12:27
株式会社富士通研究所と米Fujitsu Laboratories of America(以下、FLA)は19日、複数の組織間で機密情報を安全に扱うことができる、ブロックチェーンのセキュリティ技術を開発したと発表した。
富士通研究所とFLAでは、ブロックチェーンを様々な分野へ適用することを視野に、利用先を限定するなど事前に設定したポリシーに基づいて取引を制限するトランザクション機能限定技術と、ブロックチェーン上に記録される情報について、複数の鍵を分散して持つ当事者だけが安全に情報を参照できる文書秘匿化技術の2つの技術を開発した。
ブロックチェーンにおいて、トランザクションと呼ばれる取引の実行には、利用者ごとにデジタル鍵が必要となるが、一般的に、鍵の紛失で送金ができなくなったり、鍵の盗難で口座のお金をすべて使われるといった課題が指摘されている。また、ブロックチェーン上の記録は全利用者で共有されるが、透明性を確保するために特定組織間で取引が存在すること自体は公開しても良いが、金額や銘柄など具体的な取引内容は当事者である数社のみが共有できるように秘匿したいといったニーズへの対応も課題となっていた。
トランザクション機能限定技術は、送金などのトランザクションを実行する際に、利用先を特定の店に限定するなど、事前に設定したポリシーに基づいて取引を制限できる。資金の移動などに用いる鍵に紐づくポリシーを記載する仕組みを新たに導入することで、取引内容とポリシーとの整合性をブロックチェーンに参加している複数の計算機で検証し、ポリシーを満たさない取引はブロックチェーンに記録されない。これにより、万が一、鍵を盗まれた場合でも被害を限定的にすることが可能になる。
秘密分散鍵管理によるブロックチェーン上の文書秘匿化技術としては、複数の利用者で異なる鍵の断片を持つことで、一定数の断片が揃うと鍵が生成されるような秘密分散鍵管理の秘匿制御システムを開発し、文書暗号化に適用した。これにより、契約書の機密部分は鍵の断片を持つ当事者が協力する時にのみ登録、閲覧できるが、一般利用者には見せないなど、文書の秘匿制御が可能になる。開発した技術は、ブロックチェーンのOSSであるHyperledgerを用いて検証を行った。
今回開発したトランザクション機能限定技術により、設定されたポリシーに基づき、鍵の誤用・悪用防止も可能となり、安全なブロックチェーン運用が実現できると説明。また、秘密分散鍵管理によるブロックチェーン上の文書秘匿化技術により、鍵を紛失した際に協力者による救済を実現したり、高額な取引などの稟議で複数管理者の承認を必須とするといったワークフローが実現でき、金融分野をはじめ、流通、サプライチェーン、公文書管理など様々な分野でのブロックチェーンの適用領域拡大に貢献するとしている。
富士通研究所とFLAでは、今回開発した技術を、機密情報やパーソナルデータを複数の組織間で安全に扱うことのできるクラウド基盤に実装し、金融分野をはじめ様々な分野でブロックチェーンの業務適用を想定した検証を進め、2017年度以降の実用化を目指す。