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【SDN Japanレポート】SDNによってICTはどう変わる? ~各ベンダーの展示も紹介 (ソフトべースのOpenFlowスイッチから各ベンダーのソリューションまで)
(2013/9/25 06:00)
ソフトウェアべースのOpenFlowスイッチから各ベンダーのソリューションまで
Shivaram Mysore氏(Infoblox株式会社)は「SDN with Network White Boxes」と題して、ソフトウェアベースのOpenFlowスイッチ「LINC」を紹介した。LINCはFlowForwarding.orgコミュニティが開発するオープンソースソフトウェアで、ネットワークホワイトボックスやサーバーマシンでの動作を想定している。
Mysore氏はLINCの特徴として、OpenFlow 1.3.1まで対応しているほか、ほかに先がけてOF-CONFIGに対応したことを挙げた。今後のロードマップとしては、来たるべきOpenFlow 1.4への対応や、OF-Configの規格の穴の改善、パフォーマンス改善、メニーコアを含むさまざまなハードウェアでのテスト、OpenFlowコントローラ開発用のJavaライブラリ「FFController」のリリースなどが語られた。
Rob Sherwood氏(Big Switch Networks社CTO)は、「SDN and Bare Metal Switches are like Peanut Butter and Jelly(SDNとBare Metal Switchはピーナッツバターとジャムのように相性が良い)」というちょっと変わった題で、ベアメタルスイッチの可能性について語った。なお、Big Switch Networksはスタンフォード大学でOpenFlowを開発していたメンバーにより設立された企業で、Sherwood氏もONF(Open Networking Foundation)のArchitecture and Frameworkワーキンググループの議長を務めている。
ベアメタルスイッチとは、ソフトウェアが入っていないハードウェアのスイッチのこと。Sherwood氏は、サーバーがCPU、ハード、OS、アプリとそれぞれのレイヤーが独立しているように、スイッチも同じように、Broadcomなどのスイッチチップ(ASIC)と、Acctonなどのハードウェアの上に、Big Switchの「Switch Light」などのネットワークOSを載せて、OpenFlowやOSPFなどのアプリケーションを動かすという非垂直統合のモデルを示した。
その意義としてSherwood氏は、ネットワークOSのエコシステムによるイノベーションノスピードや、SDN専用にシンプル化された製品を出せること、ベンダーロックインを避けられること、ハードのコスト削減などを挙げた。そして、「スイッチでのOpenFlowの採用をSwitch Lightで加速したい」と語った。
ダン・ミハイ・ドミトリウ氏(ミドクラジャパン株式会社CEO兼CTO)は、「直前に気が変わって、製品とは別の話をしたい」として、ネットワークにおけるオープンなエコシステムさを中心に話をした
ドミトリウ氏は、ネットワーク仮想化の大きな波に乗るうえで重要なこととして、エコシステムによるAlignment(調整、協力)を提示。そして、「OpenDaylightやOpen Contrailは“Open”と付いているが、誰に対してオープンなのか。特定のベンダーの色が強い」と指摘した。そのうえで、オープンなエコシステムの好例として、OpenStackのNeutron(旧Quantum)を挙げて、「OpenStackの1つのコンポーネントから急速に進化して独自に使えるものになった。NeutronのAPIを採用すれば、ベンダーにロックインされない」と語った。
そして、ミドクラのネットワーク仮想化技術のMidonetが、独自のAPIからNeutronのAPIを積極的に採用する方向にシフトしたことを解説。実例として、さくらインターネットや富士通で、OpenStackなしでMidonetをNeutron APIで使っていることを紹介した。また、「Red HatのOpenStackディストリビューションで、MidoNetが認定を受けた」として、コミュニティのオープンさとエンタープライズグレードの製品の両立について語った。
Somik Behera氏(VMware)は、「VMware NSX:ネットワーク仮想化の導入」と題して、VMwareの(旧Niciraの)NSXについて解説した。
Behera氏は、NSXによるネットワーク仮想化について「物理ネットワークと完全に切り離してその構成に依存しないもの」と定義。任意のハイパーバーザーとネットワークハードの上で動き、オーバーレイネットワークにより、論理的なスイッチやルーティング、ファイアウォール、ロードバランサなどを動かすと説明した。
そして、NSXのアーキテクチャコンポーネントや、オーバレイトンネルの仕組み、物理環境と接続するゲートウェイなどについて紹介し、NSX導入のステップについても解説した。さらに、vCenter Operations ManagerでNSXをモニタリングする機能のβ版も紹介した。
Justin Joubine Dustzadeh氏(ファーウェイ・ジャパン)は「SoftCOM: Ushering SDN and NFV into the Carrier Network」と題し、SDNとNFVによる通信キャリア向けのネットワークアーキテクチャ「SoftCOM」について解説した。
背景としては、データセンターからエンドユーザーまでのネットワークで層が増え、複雑性とスケールが増して、新しいサービスを開発するのが難しくなってきたことがある。それに対してSoftCOMでは、汎用のハードウェア(しばらくはカスタムASICベース)の上で、ネットワークの機能をソフトウェアで動かし、end-to-endでクラウドに移行するものだとDustzadeh氏は説明した。また、ファーウェイが開発中という、プロトコロに依存しないフォワーディングプレーン「POF」(Protocol-Oblivious Forwarding)も紹介された。
Chris Janz氏(Ciena)は、「Bringing It All Together: Multi-Layer Software-Defined Networks and Automated Operations Intelligence」と題して、キャリア網でのSDNによる再構成について語った。Janz氏は、SDNの集中コントロールとオープンアーキテクチャによるソフトウェアにより、光接続・パケット通信・モバイル通信サービスの各レイヤーにおいて、グローバルな管理と自動化によりコストを削減でき、キャリアのニーズに合わせて作り込むことが容易になるという。Janz氏はまた、国際的なネットワークにOpenFlowのSDNを適用してダイナミックな最適化やリアルタイムの課金などを行う実験も紹介した。
Michael Haugh氏(イクシアコミュニケーションズ)は、「テスターベンダーからみたSDN/OpenFlowテストの必要性について」と題して、ネットワークテスト機器ベンダーであるIxiaのSDNへの取り組みについて語った。
IxiaはONFのTesting and Interoperabilityワーキンググループの議長を務め、ONFのインタオペラビリティイベントであるPlugFestで6月にOpenFlow 1.3の仕様適合性テストなどを実施したことが紹介された。また、Ixiaの製品として、IxAnvilテストスイートによるOpenFlowの仕様適合性テストや、IxNetwork OpenFlowでコントローラやスイッチをエミュレーションしてのパフォーマンスのテスト、IxNetwork QuickTestによるベンチマーキングについて解説した。