大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

もう待ったなし! Windows Server 2003のサポート終了まで1カ月

移行の最新状況と、各社の移行支援策などを紹介

 2015年7月15日(日本時間)のWindows Server 2003のサポート終了まで、ちょうど1カ月となった。

 2003年5月に発売となったWindows Server 2003は、発売から7年2カ月を経過した2010年7月14日にメインストリームサポートが終了。その後5年間の延長サポートを提供し、そのサポート期限が2015年7月15日に迎えることになる。

 12年2カ月という長期のサポート期間は、サーバーOSとしては過去最長。サポート期間の終了は、マイクロソフトのサポートライフサイクルポリシーに基づいたもので、延長サポートの終了により、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなる。また、有料による時間制でのスポットサポートも終了する。

Windows Server 2003は、2015年7月15日(日本時間)にサポートが終了する
Windows Server 2003発売時の記者会見の様子

 日本マイクロソフトは、2014年1月から2015年7月15日までの約1年半を、「サーバー移行支援強化期間」と位置づけ、Windows Server 2003からの移行促進を積極的に訴求。利用し続けることで発生するセキュリティ上のリスクなどについて説明するとともに、移行促進のためのプログラムを用意してきた。

 また2014年12月5日からは、「待ったなし、Windows Server 2003移行キャンペーン」を展開。日本商工会議所、地域の商工会議所、経済産業省およびITコーディネータ協会と協力して、全国20カ所で、Windows Server 2003 移行セミナーを開催。あわせて乗り換えキャンペーンやサーバー乗り換え購入支援サービスなども実施している。

 その結果、IDC Japanの調べによると、国内で稼働するWindows Server 2003を搭載したサーバーは、昨年12月時点で21万台だったものが、3月末時点には約14万台にまで減少した。

 日本マイクロソフトでは、「サポート終了時点までに、Windows Server 2003の台数を約5万台にまで減少させる」としており、ラストスパートをかけるべく、それに向けた取り組みを加速している。

サポート終了を前に黄信号?

 Windows Server 2003の稼働台数は着実に減少しているのは確かであり、ユーザー企業においては、4月以降も新年度予算を活用することで、移行を開始した企業も少なくない。

 だが、その一方で、新OS環境への移行の動きに対して、イエローシグナルを示すようなデータも出ている。

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した「ITユーザートレンド 2014」によると、今年4月の調査では、昨年12月の調査時点に比べて、Windows Server 2003のシステム移行がむしろ遅れている現状が浮き彫りになった。

 同調査は、308件のユーザー企業を対象にアンケートを実施。国内企業のIT投資動向について調査を行ったものだ。

 2014年12月の調査を見てみると、Windows Server 2003からの移行を完了しているとした企業は、全体の26%。規模別に見てみると、従業員50人以下の企業では54%が移行を完了しているとしたものの、1000人以上の企業では24%の移行率にとどまっている。

 また、「サポート終了時までに移行を完了させる」とした企業は39%となり、完了している企業とあわせると、合計で65%。約3分の2の企業で、7月15日までに移行が完了する予定となっていた。

 ちなみに、「サポート終了時までにすべてが間に合いそうにない」とした企業は21%、「Windows Server 2003をそのまま使い続ける方針」が8%、「もともと導入していない」が5%となっていた。

 だが、同協会では、Windows Server 2003からの移行に関して、2015年4月の追加調査を行ったところ、7月までに間に合わないとした企業が増加する結果となった。これは、12月時点の調査で、2015年7月のサポート終了時までに移行を完了させる回答とした企業と、サポート終了までには間に合わない回答とした企業だけを対象にアンケート調査を実施。187社から有効回答を得た。

 これによると、187社のうち、12%が移行を完了し、37%が7月までに移行を完了すると回答したものの、その一方で、サポート終了時までには間に合わないとした企業が33%、計画を変更し、そのまま使い続けるとした企業が9%に達したという。

 つまり、2014年12月時点では、すでに移行完了とした企業と、7月までに移行を完了する回答した企業の合計は65%であったが、今年4月での調査では、すでに移行完了とした企業と、7月までに移行を完了するとした企業の合計は57%となり、8ポイントも減少。4割以上の企業において、移行が完了しないことがわかったのだ。また、サポート終了時までにすべてが間に合いそうにないという企業の一部が、「そのまま使い続ける方針」へと移行しているケースがあることも明らかになった。

 本来ならば移行が加速するタイミングで、むしろ減速感が出ていることを、この調査結果は示している。

JEITAが実施した追加調査の結果

 では、なぜ減速感が出ているのだろうか。

 調査を担当したJEITA プラットフォーム市場専門委員会・西崎亨副委員長は次のように分析する。

 「今年4月時点で行った調査によると、Windows Server 2003移行に伴う開発量が予想以上に多く、移行が遅れているとした企業が42%に達した。また、開発量の増大に伴い、予算確保の問題が発生したとする企業が34%、同様に開発量の増大を背景に要因不足が生まれたという企業が20%に達している。多くの企業が移行に苦労していることが浮き彫りになった」。

 Windows Server 2003移行に伴う工数やコストが、予想以上に大きかったことが、移行を遅らせる結果になったというわけだ。

 また、「延命措置ソリューションを活用することで、移行を先送りにした企業が増加したことも、移行の遅れに影響している」(JEITA ITプラットフォーム事業委員会・村野井剛委員長)という側面も見逃せない。

 12月時点の同調査によると、新たなOS環境への移行における具体的な課題としては、「予算確保の困難さ/コスト問題」、移行手順などの方法論の不明さ、セキュリティ不安、人的負担の増大、人的リソース不足、時間の少なさといった「スムーズに移行の難しさ」のほか、「パッケージの互換性や移行できないシステムの存在」、「開発案件との調整問題」、「仮想化、OSS技術などの知識不足」、「新OSへの慣れ、知識不足」、「パッケージ更改、アプリ改修の手間、アプリの見直し」などが挙がっていた。

 なお、12月時点の調査では、新たな環境への移行方法としては、新たなWindows Server OS環境に移行する単純リプレースが80%、クラウドサービスの利用が17%、Windows Server 2003を維持する(サーバー仮想化を含む)が15%、Windows Server OS以外に移行する単純リプレースが9%だったほか、Windows Server 2003が残存している領域では、部門系システムエリアが36%、周辺アプリケーションエリアが35%、基幹系エリアが35%と、これらの3つの領域に集中。次いで、データベース・分析・情報エリアが19%、Web系システムエリアが17%、メール・コラボ系エリアが13%となっている。また、残存しているサーバー台数では、10台以下が59%と約6割を占めたが、101台以上の回答も8%を占めた。

Windows Server 2003特需は起こらなかった?

 一方で、Windows Server 2003のサポート終了が、IAサーバーの国内出荷台数の増加にはつながっていないという調査結果も明らかになった。

 同協会が発表した2014年度(2014年4月~2015年3月)のサーバー、ワークステーションの国内出荷統計によると、2014年度のIAサーバーの国内出荷台数は、前年比9%減の30万8680台、出荷金額は前年並みの2118億1800万円と、台数ではなんと前年割れの結果になったのだ。

 同協会では、2014年度の期初時点では、Windows Server 2003のサポート終了によるサーバーの買い替え需要を想定し、前年比3%増の35万2000台の出荷を予想していた。これが、ふたを受けてみれば、2けた減に近いマイナス成長となったのだ。JEITAでも、「Windows Server 2003の影響は、台数の観点では期待はずれの実績だった」とコメントする。

IAサーバーの出荷実績(JEITA調査)

 では、なぜ、国内サーバーの販売台数が伸びなかったのだろうか。

 最大の理由は、仮想化やサーバー統合が予想以上に進展。Windows Server 2003から移行においても、こうした技術を活用した例が多かった点だ。

 調査によると、Windowsを搭載したIAサーバーの場合、23%が仮想化用途で利用されており、物理サーバー1台あたりの仮想OS稼働台数は8.2台にも達する。前年の4台に比べて急速に増加していることがわかる。

 また、Windows Server 2003から単純リプレースを行った企業のうち、約6割が「仮想化あり」と回答。最新Windows Server環境への移行においても仮想化技術を活用。この結果、サーバーの出荷台数がマイナスになったともいえる。

 その一方で、出荷金額では横ばいとなったのも、仮想化やサーバー統合の動きを裏付ける要素だろう。2014年度のIAサーバーの出荷実績を見ても、出荷台数が伸びているのは高機能サーバーの領域。300万円以上の高価格帯のIAサーバーの出荷台数は、前年比53%増と約1.5倍に増加している。仮想化やサーバー統合に適した高機能サーバーの動きだけが堅調だったというわけだ。

 Windows Server 2003のサポート終了に伴うシステム移行においては、IAサーバー市場全体の出荷台数を伸ばすことがなかったという、まさに予想外の動きが見られているのだ。

業界をあげて7月15日まで各種施策を展開

 日本マイクロソフトでは、7月15日のサポート終了まで、移行支援のための各種施策を用意し、移行支援にもラストスパートをかける。

 エンドユーザーおよびパートナー向けのWindows Server 2003移行相談窓口「Cloud Direct」(0120-39-8185)を設置しているほか、移行に関する情報を一元的に提供する「Windows Server 2003移行ポータル」(http://aka.ms/ws03mig)を用意。さらに、移行を促すための冊子「移行ガイドブック」も作成した。

 また、サーバー乗り換え購入支援サービスでは、2015年6月30日までに、ボリュームライセンスで購入するWindows Serverライセンスに対して、ゼロ金利でのリース調達を提供。サーバーマシンやPCなどハードウェアとの一括調達についても、優遇金利でのリースの相談に応じるという。

 また、サーバーメーカーでも支援施策を用意している。

 デルでは、Dell PowerEdge サーバーを通常価格より最大40%割引とする「Windows Server 2003 サポート終了サーバー買い替えキャンペーン」を実施。NECでは、「ファイルサーバ発見サービス」と、低コストで効率的に移行できるセット商品を提供(関連記事)。日立製作所では、「よろず相談窓口」を設置して、Windows Server 2003の移行に関する相談に応える体制を構築している。

 また、日本ヒューレット・パッカードでは、HPサーバーへの「のりかえ割nextキャンペーン」を実施し、新規導入のHP ProLiantサーバーの価格を最大35%引きで提供。富士通は、「Windows Server 2003移行相談ナビデスク」を設置して、移行相談に対応している。

 レノボ・ジャパンでも、「Windows Server 2003移行支援駆け込み寺」により、顧客のサーバー構成、使用アプリケーションから最適な移行方法の選定、移行など支援するといった具合だ。各社とも、このほかに細かい移行支援策をいくつも用意している。

 さらに、SIerでも個別に移行支援の施策を用意し、サポート終了後にも、移行支援が行える体制を整えている。日本マイクロソフトでは、「現在実施しているパートナー各社との移行支援策や金利優遇施策などにより、遅れていた中小企業での移行が進んでいる」とする。

サポート終了後にはなにが起こるのか?

 これまで日本マイクロソフトをはじめとする業界各社が口をそろえて訴求してきたように、Windows Server 2003のサポートが終了する2015年7月15日以降には、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなる。

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営する脆弱性対策情報データベースJVN iPediaには、Windows Server 2003の脆弱性対策情報が、2014年度(2014年4月~2015年3月)だけで、49件登録されている。発売から10年以上経過しても、いまだに脆弱性が発見されており、サポート終了後においても引き続き脆弱性が発見される懸念がある。

 仮に、更新プログラムを適用せずに、脆弱性を解決しないまま利用し続けると、セキュリティリスクが増大。データ消去やシステム破壊、情報漏えい、Webサイトの改ざんのほか、踏み台となってほかのサーバーに攻撃したり、ウイルス配布サイトに仕立て上げられたりなどのリスクが想定される。

 日本マイクロソフトでは、「サポート終了による最も大きな影響は、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなること。例えば、製品に重大な脆弱性が発見されたとしても、その脆弱性を解消するためのセキュリティ更新プログラムは提供されない。サポート終了後に製品を使い続けると、未対策の脆弱性が積み増し、セキュリティ上のリスクが時間とともに高まる」とする。

 さらに、取引先のコンプライアンスに準拠できない、あるいは環境を維持するためにTCOが増大といった課題も発生することになる。

 Windows Server 2003には、後継のWindows Server製品と共通のプログラムコードが含まれている。後継のWindows Server製品において発見された脆弱性は、セキュリティ更新プログラムで解決できるが、同時にその内容も公開される。それが、Windows Server 2003と共通のプログラムコードでも同様だ。だが、Windows Server 2003には、セキュリティ更新プログラムが提供されないため、脆弱性が明らかにされたのにかかわらず、セキュリティ対策を行えないまま使い続けなくてはならないという状況が生まれる。かなり危険な状況であるのは明らかだ。

 その点からも、日本マイクロソフトなどは、新たなOS環境への移行を提案しているのである。

 そして、日本マイクロソフトでは、新たなOS環境に移行することはリスク回避という目的だけでなく、攻めのITにつながることを強調する。

 「旧来システムを使い続けると、IT 基盤の拡張が制限されたり、老朽化したハードウェアの故障率が増加したり、新しいセキュリティ脅威に対抗できなかったりと、さまざまな弊害が顕在化してくる。また、システム更改を長期間先延ばしにすることで生まれるテクノロジーの格差は、将来のシステム更改をさらに困難なものにすることにもつながる。最新の IT 環境に移行することで、利用者は生産性が高まり、企業は新たなビジネス機会を獲得し、そして管理者は運用管理を省力化し、コントロールとセキュリティを強化できる」とし、「最新の Windows Server 2012 R2は、単にプロダクトサポートを得るための受け皿ではなく、Windows Server 2012 R2 が提供するスケーラビリティや高可用性、高いセキュリティ、スケールと機能と実績を兼ね備えた仮想化基盤、洗練された管理性、そしてクラウド コンピューティングによって、企業や組織の IT 基盤にさらなる価値をもたらす」と語る。

 Windows Server 2003のサポート終了までちょうど1カ月となったこのタイミングで、最後の確認をしておきたい。

大河原 克行