デルはなぜ、EqualLogicユーザーコミュニティを世界に先駆けて設置したのか


 デル株式会社が、日本国内のEqualLogicユーザーを対象に、12月9日に設置した「Dell EqualLogicユーザーコミュニティ」は、日本法人が、世界に先駆けて展開したものである。EqualLogic製品および関連ソリューションに関するユーザー間の情報交換を促進する場として位置づけるとともに、iSCSI SANの特性および理解の促進などにも活動を広げる考えだ。

 同社のEqualLogicに関する最新の取り組みと、Dell EqualLogicユーザーコミュニティの狙いについて、デル システムズ・ソリューションズ統括本部長である町田栄作執行役員に話を聞いた。

 

iSCSI市場で存在感を見せるEqualLogic、最大の特徴は顧客満足度

デル システムズ・ソリューションズ統括本部長 町田栄作執行役員
EqualLogic製品の1つ、「EqualLogic PS6510」

 デルは、ストレージ製品として、デルブランドのPowerVaultのほかに、EMCとの提携によるDell/EMCブランドのストレージ、そして、2008年に買収した米EqualLogicによる、3つのストレージ製品ラインを持つ。さらに、ここにきて、米Compellent Technologiesを買収する動きが明らかになっており、ストレージ製品群のラインアップをさらに拡充する姿勢をみせている。

 そうしたなかでもEqualLogic製品は、その動向が国内外で注目を集めているプロダクトのひとつといえる。

 「調査会社であるIDCの調べによると、EqualLogic製品は、国内iSCSIディスクストレージシステム市場における出荷金額シェアで、2008年第3四半期から2010年第3四半期(2010年7~9月)まで、9四半期連続で首位を維持している。この間、iSCSI市場は拡大傾向にあり、2008年第3四半期には6300万ドルの市場規模だったものが、2010年第3四半期には1億9600万ドルへと3倍規模に拡大している。iSCSI市場の拡大をリードしているのがデルである」と、デル システムズ・ソリューションズ統括本部長の町田栄作執行役員は胸を張る。

 IDCの調べでは、2008年第2四半期には28.2%にとどまっていたデルのシェアは、EqualLogicの買収後、2008年第4四半期には56.2%のシェアを獲得。最新データである2010年第3四半期も40.7%のシェアを獲得し、2位以下に2倍以上の差をつけている。

 日本でのユーザー数は明らかにしていないが、全世界でのEqualLogicユーザー数は約2万5000社。四半期ごとに1000社ずつ増加しているという。一般的に日本の事業規模は、全世界の約10%というケースが多いが、日本のユーザー数はその構成比を超えているという。

 「EqualLogicの最大の特徴は、顧客に満足していただいている製品であるという点に尽きる」と、町田執行役員は語る。

 この言葉を裏づけるように、米Yankee Groupの調査によると、EqualLogic製品を利用しているユーザーの98%が、同製品を他者に推奨するという結果が出ている。

 同様の調査を、日本において、デル日本法人が実施したところ、約70人という母数ではあるものの、95%のユーザーが、やはり他者にEqualLogic製品を推奨するという結果が出たという。

 「日本の調査で『いいえ』と回答した人の状況を調べてみると、『まだ導入して日が浅いため』という回答が目立っており、そうしたユーザーの存在を考慮すれば、米国と同等レベルの結果に達しているといえる」(デル ラージエンタープライズジャパンマーケティング本部ストレージソリューションマーケティング部・小松原真一郎部長)と分析する。

 

ベンダーに囲い込まれない環境を構築できる点が最大の差別化

 EqualLogicがこれだけ高い顧客満足度を実現している背景には、「運用・管理」の観点から多くのメリットを感じているユーザーが多いことがあげられる。

 町田執行役員は、その点を次のように語る。

 「ストレージの運用・管理は、ベンダー任せやSIer任せというユーザーが多く、その結果、維持コストに多くの投資を余儀なくされている。EqualLogicは、デルに買収される以前から、ユーザーに余分な維持コストを発生させないことを前提として、ストレージを開発、販売してきた。ファームウェアが変更しても追加コストは一切発生しないのもEqualLogicの特徴。運用・管理において、ベンダーに囲い込まれない環境を構築できる点が最大の差別化ポイントだといえる」

 続けて、「ユーザーが、ユーザーの手によって設置し、ユーザー自身が運用・管理を行い、アップデートも行う。デルが目指す民主化されたITを実現する上では欠かせない製品のひとつである」とする。

 

活用事例を知りたいというニーズに応えた

 デルは、「Efficient Enterprise」をキーワードに、標準化、シンプル化、自動化を軸にした、ITの効率化によるコスト削減、ITによる企業成長の支援を提案している。それを実現するための構成要素のひとつに、EqualLogic製品は位置づけられている。

 だがその一方で、ユーザーから、いくつかの要望があがっていたのも事実だ。

 中でも、最も多かったのが、国内外のユーザー活用事例をより多く入手したいという要望だ。

 「ユーザーへのアンケート調査の結果でも、他社がどんな形でEqualLogicを導入し、どのような効果を実現しているのかといった情報をもっと入手したいという声が多かった。活用テクニックといえるものを共有したいという声があがっていた」(小松原部長)とする。

 さらに、パートナーエコシステムを活用した提案についても知りたいとする声が少なくないという。

 「例えば、仮想化ソリューションのメインストリームとなっているVMwareとEqualLogicの親和性などについて、もっと多くの情報を提供してほしいというユーザーからの要望も多い。デルとして、こうした要望に応えていく必要があると判断した」(小松原部長)と語る。

 今回のDell EqualLogicユーザーコミュニティの設置は、拡大するEqualLogicユーザーに対して、情報交換ができるオープンな場を提供することで、ユーザーが求める情報を配信。その要望に応えようというものだ。

 「米国では、年2回のペースでユーザーフォーラムを開催しているが、日本では、ユーザーコミュニティという形で一歩踏み込んだ形とすることで、より活発な情報交換を行える場を提供したかった」と、町田執行役員は設置の理由を示す。続けて、「EqualLogicユーザーが、日本において一定の母数に達し、情報交換の場を設置する重要性が急速に高かまってきたことも背景にある」とする。

 

ITシステムの管理・運営者に限定し、iSCSIにかかわる技術情報を提供

 Dell EqualLogicユーザーコミュニティでは、「iSCSIにかかわる技術情報を提供することによって、iSCSI SANの理解を促進し、同市場を活性化すること」を目的とし、コミュニティへの参加対象者を、ITシステムの管理・運営者に限定した。参加費用は無料。これにより、「最新技術情報の提供や、ユーザー間の交流による課題解決のヒントの共有などを通して、顧客企業の支援とともに、さらなる市場の活性化を目指す」と位置づける。

 EqualLogic製品の最新技術情報や新製品情報の入手のほか、デル主催のカンファレンス参加やイベント視察、ユーザー交流会、デルへの要望提案などが、ユーザーコミュニティを通じて可能になる。

 具体的には、eDMを通じた製品技術情報の提供、ユーザー向けイベントのユーザーフォーラムの開催、専用Webサイト(http://www.eql-ug.jp/)によるユーザーコミュニティの活性化、テックセンターを通じた技術情報の提供、東京・三田のデルソリーションイノベーションセンターの優先活用などの特典が用意される。

 「デルが得意とするダイレクトセールス、ダイレクトサポートの強みを生かして、クオリティ、コスト、デリバリー、テックサービスといった観点から、ユーザーをサポートする組織となる。安心してEqualLogicを選択していただける環境を確立する」と、町田執行役員は狙いを語る。

Dell EqualLogicユーザーフォーラムの様子

 12月9日のユーザーコミュニティ設立にあわせて開催された第1回ユーザー向けイベント「Dell EqualLogicユーザーフォーラム」では、インプレスホールディングス、GMOメディア、名古屋大学大学院の3つのユーザー事例の紹介とにも、米Dellのストレージマーケティング部門の担当者から、今後のテクノロジーロードマップが、NDA(守秘義務契約)を結んだ形で紹介されるなど、特別な情報提供も行われた。

 「午後1時30分から開始し、午後7時に終了する懇親会まで、約70人のほとんどの参加者が出席していた。それだけ、高い関心を持った参加者で構成されていた」(町田執行役員)という。

 今後、ユーザーフォーラムは、日本でも年2回程度の割合で開催していく予定だという。

 「NDA情報が含まれることから、現時点ではEqualLogicユーザーに限定されたフォーラムとなっているが、Webなどを通じて、導入を検討している企業に対しても情報を提供することも考えていきたい」と、町田執行役員は、導入見込みユーザーに対する情報提供も視野に入れていることを明かす。

 EqualLogicユーザーと、見込みユーザーとの情報交換は、導入に直結する隠れた営業ツールになる可能性もある。

 iSCSIはストレージ市場全体の約10%にとどまっているが、今後、ストレージ市場における存在感が増してくるとの見方が出ている。そのなかで、EqualLogicに対する注目度も高まってくるだろう。

 今回のユーザーコミュニティの設置は、日本におけるEqualLogicを加速するという点でも大きな意味を持つことになりそうだ。

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