大河原克行のキーマンウォッチ

2020年までにクラウドでナンバーワンになる――、日本オラクル・杉原博茂社長の想い

 2014年4月に日本オラクルの社長に就任してから、間もなく1年を迎える日本オラクルの杉原博茂社長。「この1年は、人生のなかで一番短く感じた1年だった」と振り返る。

 社長就任直後に打ち出したのが、2020年にクラウドナンバーワン企業を目指すことを盛り込んだ「VISION 2020」。それ以降、日本オラクルのクラウドへの取り組みは一気に加速。2014年9月に米国サンフランシスコで開催された「Oracle OpenWorld San Francisco 2014」では、創業者である米Oracleのラリー・エリソン会長兼CTOが、クラウドでナンバーワンになることを宣言。日本が先行して打ち出した方針が、グローバルの方針になった格好だ。

 2015年は、日本オラクルの創業から30周年を迎える1年。今年、日本オラクルはどう進化するのか。日本オラクルの杉原博茂社長に聞いた。

日本オラクルの杉原博茂社長

日本発のメッセージがグローバルへ

――2014年4月に、日本オラクルの社長に就任してから間もなく1年を経過します。この1年は、どんな1年でしたか。

 私は、これまでにもいろんなところで、いろんなことをやってきた方なのですが(笑)、私の人生のなかでも、一番短く感じた1年でしたね。気がついたら年が明けていたという感じですし、もうすぐ社長就任から1年を経過する。これだけ短く感じたのは、仕事に対するライブ感があることが最大の理由ではないでしょうか。

 やったことに対する反応がすぐに出るのが日本オラクル。これは社員も感じていることではないかと思います。私にとって、あっという間の1年だったように、きっと日本オラクルの社員にとってもあっという間の1年だったはずです。

 また、日本オラクルのパートナーやお客さまにとっても、あっという間の1年だったのかもしれません。実際、私が、2014年4月に社長に就任して以降、Oracleは大きく変わりましたし、その間、数多くの出来事がありました。

 私は、社長就任直後に、日本オラクルをクラウドでナンバーワンの企業にすると宣言しました。それから約半年後に開催された「Oracle OpenWorld San Francisco 2014」では、創業者であるラリー・エリソンや、CEOに就任したマーク・ハードおよびサフラ・キャッツ、開発トップのトーマス・クリアンらが、口をそろえて「2014年はOracleにとってクラウド元年になる」と発言し、クラウドでナンバーワンを獲得することを宣言しました。日本発の「クラウドナンバーワン」という宣言が、グローバルの目標になったわけです。

 一方で、日本オラクルでは、多層化していた組織をフラットにし、昨年11月には、社長直下のクラウド事業戦略室を新設し、クラウドナンバーワンを軸とした「VISION 2020」を、本格的に始動させました。

 ただ、クラウドナンバーワンだけが、われわれが目指す目標ではありません。称賛され、尊敬される企業になることにも同時に取り組みます。いま、日本オラクルでは、「Mission85」と呼ぶプロジェクトをスタートしています。世界のエクセレントカンパニーは、従業員の85%が自らの会社を良いと評価し、家族や友人に勧めています。日本オラクルもそれを目指したい。2020年までに「日本オラクルで働いているなんていいね」といってもらえるようにしたい。そのためには、日本オラクルが、常に成長し、常にイノベーティブな企業である必要がある。

 この両輪が動き始めたのが2014年ということになります。

2015年度上期業績は売上高・利益ともに過去最高

――成長という点では、すでに業績に表れていますね。

 2015年度上期業績は、売上高、利益ともに過去最高になりました。これは大変重要なことです。なにが重要なのかというと、日本オラクルがベースとしているデータベース、ミドルウェア、アプリケーション事業の貢献が大きいという点。これらの事業を再強化した成果がすでに出ているからです。

 われわれは、クラウドナンバーワンを目指していますが、それを展開していく上では、オンプレミスの事業をしっかりと成長させていかなくてはならない。データベースの国内マーケットシェアは45%。この強みを維持していく必要があります。

 日本オラクルは、2015年度見通しで1600億円の売上高を目指していますが、この中心はオンプレミスへのライセンスビジネス。ただ、ここから、1%だけをクラウドビジネスに転換しただけでも、トップシェアを取れるのです。

 一方、米国では、SaaS市場において、20億ドルのクラウドビジネスをやっています。世界では第2位のポジション。首位のsalesforce.comは約40億ドルのビジネスをしており、Oracleの2倍の規模を持ちますが、Oracleがクラウドビジネスを本格化させたのは昨年夏のこと。ものすごい勢いで成長していることがわかります。

 またIDCのレポートのなかでは、クラウド市場の支配に向けて最もいいポジションにいるのがOracleとも表現されています。Database as a Service、Middleware as a Service、Java as a Serviceといわれる領域でも、オラクルはすでに重要な地位を占めています。

 Oracleの強みは、複数のクラウドサービスを持ち、それらをオンプレミスのような複雑性を排除しながら提供できる点。自前で持たなくても当社の技術を使うことができるわけです。特に、海外に進出している日本の企業の場合は、Oracleが提供するSaaSやPaaSによって、Oracleの技術を、簡単に海外拠点に導入してもらえるようになる。

 そして、もし、自前で持ちたくなったら、ボタンひとつでスイッチできる。これは逆もしかりです。こうしたOracleクラウドならではのメリットを明確に示すシナリオができあがってきたといえます。

――こうしてみると、やはり、昨年9月の「Oracle OpenWorld San Francisco 2014」が、Oracleにとって大きな転機だったように感じますね。

 確かに、「Oracle OpenWorld San Francisco 2014」を契機に、全世界12万人のOracle社員全員が、「クラウド」と言い始めた。Oracleの営業、SEがクラウドを語るようになってきたわけです。そして、それが全世界にいる1500万人のOracleのエンジニアリングコミュニティに波及する。これらの人たちにも、われわれはクラウドをやるんだという意思が入った。

 そうなると、今度は、顧客から、「いつになったら、Oracleはクラウドについて教えくれるのか」という要求が高まってくる。こうした回転がはじまったのがこの半年の動きだといえます。一気にクラウドへの取り組みが加速したのは当然のことです。この力にはすごいものがある。

 あるリサーチ会社では、クラウド市場に最も影響を与える企業はOracleだという調査結果を出しています。実際、第2四半期だけで、SaaSの新規顧客は、全世界で860社にも達した。売上高は47%も増加した。日本でもSaaSの新規受注は5倍以上になっています。あわせて、サービスクラウドやデジタルマーケティングなどの新たな領域でのクラウド提案も加速しています。

Oracle OpenWorld San Francisco 2014の会場

ラリー・エリソンはCTOの方がしっくりくる

――昨年、創業者であるラリー・エリソン会長が、CTOに就任しました。これはオラクル全体にどんな影響を及ぼしていますか。

 ラリーは、70歳でCTOとなり、その一方で「大福帳」はサフラが担当、「営業」はマークがやると決め、その上で、Oracleはクラウドという世界に本格的に踏み出した。このとき、ラリー自らがクラウドを実演して、オンプレミスとクラウドを自由に行き来できる様子を見せた。Oracleという会社が、クラウドをやったらどうなるのか。その技術イノベーションを創業者が自ら紹介することで、より明確な方向性を示すと同時に、大きな感動を与えることができたのではないでしょうか。

 私の個人的な意見ですが、ラリーが直接、われわれの前で語るというのは、目の前で本田宗一郎氏や盛田昭夫氏、松下幸之助氏、あるいはスティーブ・ショブズ氏といった人たちをライブで見ているのと同じ感覚ではないかと思うのです。とにかくインパクトが違い、感動が違う。

 テクノロジー企業であるOracleのCTOは創業者そのものであり、その話を直接聞くことができる。これは、Oracleがクラウドという新たな方向に向かうという、いまのタイミングにおいて、大きな原動力になる。Oracleが一枚岩となったことが実感として伝わってくるのです。

 とはいえ、会長としての役割はラリーが引き続きやりますから、そこに変化はありません。しかし、社内での役割分担がはっきりして、ラリーがやりたいことができる体制となった。いまの時代を考えると、CEOのラリーよりも、CTOのラリーの方がしっくりくる。デジタル破壊の時代、新産業革命の時代になり、カリスマ的な人がテクノロジーを語ることで、将来の方向が明確に示されるからです。私は、テクノロジーの観点から将来を語れる人がいる企業こそが伸びると確信しています。

Oracle OpenWorld San Francisco 2014で講演する、米Oracleの経営執行役会長兼CTO ラリー・エリソン氏

2020年に向けた変革を

――日本オラクルが打ち出した「VISION 2020」は、2020年にクラウドナンバーワンになることを軸としたものですが、ゴールは、これから5年先という長期ビジョンとなっています。変化の激しいIT業界において、ちょっと長すぎる感じがするのですが。

 2020年というのは、まさに東京オリンピックのタイミングなわけです。日本では、そこに向けて大きな産業革命の波がやってくる。そして、2020年が終わったあとにどうなるのかといったことも同時に考えていかなくてはならない。

 2020年には、2000万人の外国人観光客が訪れ、地方活性化や少子高齢化対策、労働生産性の向上といったことも同時に解決していく必要がある。つまり、あらゆるところで、従来のビジネスモデルが、新しいビジネスモデルに変わるということでもあります。そうした時代に来つつあるわけです。

 ただ、これが、突然、一気に変わるわけではない。いままでのことを否定しながら、新たなことに取り組むということは、多くの企業にとって重要な課題になりますが、だからといって、いまやっていることをやめるわけにはいかない。

 例えば、当社がデータベースのライセンスビジネスを否定して、全部クラウドに持って行くなんていったら、社員も顧客、パートナーも混乱します。いまのビジネスをやりながら、相反することをやるためには、少なくとも5年の歳月は必要です。

 日本オラクルが打ち出した「VISION 2020」では、最初の3年間を前期として、残りの3年を後期と考え、いまの顧客に対するコミットメントをしながら、新たなビジネスモデルへと転換を図る。前期3年はまさに準備の期間。社会全体に、クラウドに対する認知を広げ、評価をしてもらう時期であり、これにあわせてクラウドのインフラが整備されるだけでなく、ビジネスモデルも少しずつ変わっていくことになります。

 クラウドビジネスは、いわば携帯電話会社と同じ「サービスモデル」のビジネスになりますから、SLAをあげないとすぐに解約されてしまう。これまでの売り切りビジネスとは違う厳しさがある。だが、一方で、これまで使っていない人たち、あるいはオラクルのデータベースシステムには高くて手が届かなかったという顧客にも提案できるようになる。手組みのシステムから移行する際に、世界ナンバーワンのデータベースやミドルウェアをクラウドによって使ってもらいたい。クラウドは、新たな顧客に使ってもらえる仕組みでもあり、チャンスも生まれるわけです。

 まずは、前期の3年間で、クラウドとはなにかということを定義して、なにがハイブリッドクラウドで、なにがプライベートクラウドなのか、なにがコミュニティクラウドなのかといったように、クラウドのカテゴライズも明確にしていきたい。そこにおいて、日本オラクルがリーダーシップを発揮したいと考えています。

 日本オラクルは、データセンターを作ったから、これでクラウドビジネスができますとか、ホワイトボックスを組み上げて、これでクラウドです、というような「箱物クラウド」は絶対にやらない。オラクルはデータを取り扱ってきた会社であり、安心、安全ということを安直には考えてない。日本オラクルが責任を持って、エンド・トゥ・エンドで提供できるクラウド、安心を提供できるクラウドサービスの実現に取り組みます。

 こうした仕組みづくりをもとに、後期の3年間で、クラウドをリアライズしていくことになります。3年後には、社会インフラ、経済活動、そして観光産業などのあらゆる業界が、すべてをクラウドで考える時代がやってくる。そのときにはしっかりとした仕組みを用意して、ミッションクリティカルでのクラウド活用をはじめ、さまざまな領域においてクラウドを提供したい。

 その時代に、手組みでやっていたら、コスト競争力もなく、1人あたり生産性も高まらない。少子高齢化ということを考えれば、日本の企業は、他国の企業よりも、生産性をあげなくてはグローバル競争には勝てない。クラウドによって、必要なときに必要な機能がいますぐ、安く使えるようにならないといけない。後期3年で、クラウドが一気に実用化するのは明らかです。そこで日本オラクルはナンバーワンを獲得していきたいと考えています。

――日本において、新たなデータセンターの開設を視野に入れていることを明言していますね。

 クラウド事業戦略室がそれを担当し、米本社と協議しているところです。今年中には、PaaSを提供する新たなデータセンターを開設し、新たなメニューを作りながら、満を持して展開していきたいと考えています。

 クラウド事業推進室は、バーチャルチームとして10数名単位で構成している組織です。データベース事業部はDatabase as a Service、ミドルウェア事業部はミドルウェア as a Service、Java as a Service、クラウドアプリケーション事業部はサービスクラウドといったように、縦方向でさまざまなクラウドを提供する仕組みはすでにできあがっています。これを横ぐしして、日本オラクルからひとつのクラウドオファリングという形で、シナリオ提案できる方法を模索するのが、クラウド事業戦略室の役割になります。

 日本におけるデータセンターの展開も視野に入れて、米本社と連携しながら、なにが一番いい仕組みなのかを模索する。今年は、体制が整ったので、取り組みをひとつずつ実行に移す年だと考えています。

オラクル=クラウドへの道筋

――杉原社長は、2020年のクラウドナンバーワンを掲げる一方で、まだまだクラウドと日本オラクルが結びついていないという認識も示していますね。

 昨年秋の「Oracle OpenWorld San Francisco 2014」のときには、「クラウド」の「ク」の字のポイント数が大きくなったという表現をしましたが、今年中には、「オラクルといえばクラウド」の「クラウ」という3文字目までぐらいまでは認識してもらえるようになるといいですね(笑)。

 今後は、いつになったら日本でナンバーワンになるのかというとことをさらに明確にし、まずはなにでナンバーワンになるのかを示していくことになると思います。ナンバーワンになるのは2020年という言い方していますが、それは当然、前倒ししていきます。一気呵成(かせい)にやっていくタイミングが必ずあると思いますから。

 特に期待しているのは、Java as a Service。これは、これからのIoTの世界において重要な役割を果たすと思っています。私は、「IoT=Java」であると考えているんです。それほど、JavaとIoTは関連性が高い。そして、これはオラクルだけが提供するクラウドサービスの強みにもなる。多くの企業が、Java as a Serviceを使って、さまざまなものをクラウド上で開発してもらえば、日本のモノづくりもさらに活性化するはずです。

 Java自転車、Java冷蔵庫、Java自動車、Javaテレビ、Javaゲーム、Javaスマートフォンなどを開発し、そこでIoTが広がれば、日本の経済にとっても、日本のモノづくりをやっている人たちにとってもプラスに働く間は明らかです。

 また、日本オラクルは、日本の企業が稼ぐ力を高め、生産性をあげることに寄与していきたいと考えています。ITはまだまだ浸透していません。そして、敷居も高い。ITを活用するには時間がかかるとか、面倒だという声も多く、まだまだ改善の余地がある。これもクラウドで解決できるはずです。

 これからは、B2BやB2Cからさらに一歩進んで、B2Iの世界がやってくるのではないでしょうか。ここでいう「I」とはインディビジュアル。つまり個人です。デジタルマーケティングに代表されるように、コンシューマという大きなくくりではなく、すべての情報が個人を対象に発信されることになります。B2Iという観点から、各個人に対してどうすべきかということを考える時代に入ってきたといえます。

――Oracleでは、選択肢を提供することがOracleクラウドの特徴だとしていますが、ここまで選択肢が多いと、逆にユーザーに混乱を招くことになりませんか。

 Oracleでは、データベース、ミドルウェア、ERP、EPM、CRM、HCM、Javaなど、さまざまなクラウドサービスを提供しています。ただ、これはクラウドをやるために、これだけの品ぞろえがあるのではなく、もともとあったオンプレミスの実績をもとにクラウド化したものです。つまり、すでに顧客がいる製品ばかりです。PeopleSoftも、ハイペリオンも、HCMも、すでに使っている顧客がいて、こなれていて、需要がある。そして、ノウハウがあるところでクラウドを提供している。

 クラウドにしようと思って作り上げたものではなく、すべてのサービスが、ユーザーにひもづいていて、そこで必要とされるものをクラウド化しているわけです。これをオラクルではモダナイゼーションと表現しています。

 ソフトウェアの歴史を振り返ると、統合されたスイートソリューションを提供する会社が、ポイントソリューションを提供する会社をしのいでいます。

 Oracleは、これだけのクラウドサービスを1社で提供しているところがむしろ強みだといえます。30のベンダーから、30のクラウドを導入することにメリットはありません。しかし、ひとつのベンダーからさまざまなクラウドサービスを導入するということは大きなメリットがある。iPhoneも、ひとつのプラットフォームの上から、さまざまなアプリケーションが入手できるから使いやすい。顧客の選択の幅が広いことこそが強みになります。

自社ハードウェアがクラウド基盤の核になることを明確に位置づけたい

――Engineered Systemをはじめとするハードウェア製品の動きはどうですか。最新の上期決算では、ハードウェアの業績がマイナス成長となっていましたが。

1月に発表された最新のOracle Exadata Database Machine X5

 Engineered Systemは、世代が進むに従い、評価が高まっています。確かに上期はハードウェアの業績はへこんでいますが、これは前年にサーバーとストレージの特需があったのが要因。それに対する反動ですから、私は楽観視しています。

 Engineered Systemは、継続して2けた成長を遂げていますし、データセンター向けの閉ざされた使い方から、プライベートクラウド向けにチューンアップした活用、コミュニティクラウドでの活用などにも広がりを見せ始めています。

 今年に入ってから、第5世代のEngineered Systemを発表しました。私はこれを「スーパークラウドシステムズ」と名付けました。日本オラクルがクラウドを推進するなかで、当社のハードウェア製品が、クラウド基盤の核になることを明確に位置づけたいと考えています。

 そして、Zero Data Loss Recovery Applianceの評価も高いですね。これも日本において、これから積極的に展開していきたい。

 ひとつ反省しなくてはならないのは、サーバー、ストレージも含めて、まだまだ日本オラクルのハードウェア製品の良さが伝わっていないという点。データセンターからクラウドまでを通じて、一気通貫のシナリオを打ち出さなくてはならないと考えています。

――一方で、富士通との関係が少しずつ離れているような感じも受けるのですが。

 そこは、私の努力不足の点があったかもしれません。まずは社内の状況を見るのに時間がかかった点も否めません。しかし、富士通とは経営トップ同士が緊密な関係を構築しており、定期的なレビューも行っています。富士通も新社長体制となりました。これからの新たな時代に向けて、どういう形で一緒に組んでいくのかがいいのか、もっと強い組み方を模索していきたいと考えています。

コア事業を安定させた上でクラウドに取り組む

――日本オラクルは、2015年に30周年を迎えますね。どんな1年になりますか。

 いまは、デジタル・ディスラプション(デジタル時代による創造的破壊)により、新たな産業革命が起ころうとしています。その時代において、日本オラクルが掲げるのは、「Do,Big.Different」です。

 コア事業を安定させて、その上でクラウドに取り組む体制を作り上げたい。特に、SaaSではサービスクラウド、HCM、デジタルマーケティングが強化ポイントになります。また、地域戦略を重視し、支社の陣容も増員するなど強化していきます。これは、どこかであらためて説明したいと考えています。2015年は、売り上げ、利益ともに、前年対比で成長していることが合格点の最低条件。また、クラウドにおいて、新たな顧客をどれだけ増やせるかという点もポイントです。これも2けた増は達成したい。そして、PaaS事業がどこまでスピードアップして事業展開できるかも重要な要素です。

 4月9日・10日には、「Oracle CloudWorld Tokyo」を開催します。集客目標は2万人。ラリー・エリソン、マーク・ハード、トーマス・クリアンが来日する予定です。これからOracleがどんなクラウドを展開するのか。そのあたりを期待してほしいですね。

 やることはたくさんあります。2015年は昨年以上に短く感じる1年になるかもしれません。

 一方で、30周年の記念としてなにかやりたいと思っています。私は、音楽が好きなのですが、音楽は人間の海馬を刺激して、生産性をあげるというメリットがある。先日も、タウンホールミーティングで社員がバンド演奏をしたのです。社員の生産性があがったかどうかはわかりませんが(笑)、少なくとも社員は明るい顔をしている。これはいい体験だったといえます。30周年記念として音楽祭をやってもいいかもしれませんね(笑)。

 余談ですが、今年の正月におみくじを引いたら「大吉」だったんですよ。昨年は「吉」でしたから、今年は、昨年以上にいい年になる予感がしています(笑)。2015年はいい意味で暴れて、日本の経済の活性化に寄与し、そして、もっと人に役立てる会社になりたいと考えています。

大河原 克行