Windows 7をエンタープライズに-企業セールスを本格化させるMicrosoft



 公開ベータ配布から約2カ月。大勢のユーザーがWindows 7に直接触れ、ブログなどで取り上げている。前バージョンのWindows Vistaのときのことを考えると、評判はかなりよいようだ。そして、ここへ来てMicrosoftは、Windows 7がコンシューマーだけのものではないというメッセージを送っている。Windows 7を企業で使うための数々の機能にスポットを当て始めたのだ。


 Windowsチームの公式ブログでは3月4日、Windows 7を企業で利用してもらうための取り組みと新機能について説明した。Windowsプロダクトマネジメント部門のシニアディレクター、Gavriella Schuster氏のポストによると、Windows 7開発では、半年間をかけて企業利用のトレンドとニーズを分析。また、世界の4000超の顧客への調査を実施したという。

 その結果、企業で求められている機能が、「リスク管理」「コンプライアンス」「モバイル」であることが分かったとしている。Schuster氏は、リサーチをもとに取り入れた企業向け機能の一部として、いくつかの新機能を紹介している。

 たとえば、「BitLocker To Go」はUSBメモリーなどの外部ドライブにデータを保存する際に暗号化する機能。「AppLocker」は、ユーザーが勝手にアプリケーションをインストールして使わないようポリシーに従って制御する機能だ。

 また、遠隔アクセスのための機能として「BranchCache」や「Direct Access」がある。「BranchCache」は、支店など出先機関のクライアントPCがP2Pネットワークを構築してデータをキャッシュする機能。「Direct Access」はVPNを使わずにセキュアな通信を可能にする機能だ。いずれもWindows Server 2008 R2との組みあわせで実現する。

 このほか、シェルの新版PowerShell 2.0を利用した豊富な管理・トラブルシューティング機能などを盛り込んだという。

 これらの機能は初出ではなく、開発者向けセミナーなどでは紹介されてきたものだ。ただ今回は、開発者よりもユーザーに向けた公式ブログ上の話であり、Windows 7の企業向けセールスが本格化していることをうかがわせる。

 MicrosoftウォッチャーのMary Jo Foley氏は、今回のポストは主として、同社がベータテストでユーザーのフィードバックに十分に応えていないとの批判に対応したものだろう、とZDNetのブログ「All About Microsoft」で指摘している。

 また、このポストで紹介されたWindows 7の初期ビルドの新機能のために、ビジネスユーザーがアップグレードを考えるかは少々疑わしいとも述べている。「とりわけ、この厳しい経済状況のなかで」(Foley氏)というのだ。


 Windows 7は、Windowsの新バージョンリリースの歴史のなかで、格別に厳しいタイミングに直面する。世界的な景気後退で、多くの企業の経営状況は厳しい。Microsoftはこのなかで、新OSにアップグレードする必要性を説いて、企業に売り込まねばならない。

 これについて、Windows business部門のシニアバイスプレジデント、Bill Veghte氏は、英vnunet.comの取材に応え、厳しいなかにもなお、企業にはWindows 7の巨大な市場があり、不況下での企業の対応には2つの道があると述べている。

 すなわち、「頭を低くしてコストを削減し、景気回復を待つ」と、「これを競争のなかから抜きんでる機会ととらえ、コストを排除しながら、同時に革新を進め、事業に柔軟性を構築する」ことだ。もちろんMicrosoftは後者に期待しており、そのためにWindows 7が有用であると主張する。

 ハードウェアの問題はどうだろう。Windows Vistaでは要求スペックが跳ね上がったことが、導入の阻害要因になった。しかも今度は不況下で、OSにあわせて更新する余裕などなかなかないはずだ。この点についてVeghte氏は「多くの企業は過去2年間に『Windows Vista Capable』を購入しているはずだ。これらはWindows 7を使うのに十分なスペックである」と説明する。

 Windows 7のリリース時期は現在、今秋という見方が有力になっている。Bloombergによると、台湾のノートパソコンメーカーCompal Electronicsのトップが「9月末から10月初め」と発言している。また、他の複数のメディアも、早いもので「7月」、遅いもので「ホリデーシーズン前」と伝えており、当初の予定よりも前倒しになっている模様だ。

 Microsoftは2月初め、Windows 7ではベータ2を出さず、次にはRC版に移行する計画であることを明らかにしている。その次にはRTM(製造工程向けリリース)で、すぐにOEMやボリュームライセンス向けの出荷が始まる。企業向けリリースは結構近くに迫っている。

 Windows Vistaは、あまり企業にアピールできなかった。今回、Windows 7でMicrosoftは、ユーザーの声を聴くという姿勢を打ち出している。ブログでの情報公開もその一環だ。企業に向けたメッセージはさらに多くなっていくだろう。

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(行宮翔太=Infostand)
2009/3/9 09:04