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エコで涼しい海中データセンター Microsoftの「Project Natcik」

データセンター再考の時

 海中データセンターには、さらに「無人化」というメリットもある。つまり、手作業での管理を排してしているため、管理者が利用する機材などが不要となるのだ。完全無人化が可能になれば、単なる設置面積の縮小以上の影響があるだろう。しかし、無人化を実現するためには、最低でも5年は修復不要のサーバーが必要だとNew York Timesは指摘している。

 一方、より大きな視点から見ると「データセンターの物理的な再配置」が必要になるという。ラックなど人が介在することを前提としているが、このようなパーツが不要になり"リファクタリング"が進むとMicrosoftは見ている。Natickのサイトでは、「データセンターの実装期間は最大5年で、それを過ぎると回収して新しいコンピューターを積み込んで再実装する」としている。目標とするライフスパンは20年という。

 一般的に、データセンターの実装には2年がかかり、新しい第4世代のシステムでも1年を要するというが、Project Natickならば、これを90日にまで短縮できるという。「自然災害やワールドカップなどの大きなイベントに合わせて迅速な実装が可能となるため、すぐに需要に応えることができる」とMicrosoftは説明している。

 データセンターの再考が求められる背景にあるのは、モバイルデバイスとクラウドサービスの普及によって、処理能力への需要がかつてないペースで増えているという事実だ。Microsoftは既に150億ドルを投じて世界に100を超えるデータセンターを抱えており、これが200以上のクラウドサービスを支えているという。

 The Vergeはこれに加え、「ムーアの法則」が限界に近づいていることも挙げる。「サーバーが時代遅れになるペースは、これまでほど速くはなくなる」ため、まさにデータセンターを再考すべき時に来ているというのだ。

 Microsoftは、次は3倍の大きさにして実験を行うとしている。商用化の予定については、まだMicrosoftやほかのクラウドサービス事業者が採用できるかどうかを評価中だとしている。

岡田陽子=Infostand