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その価値はあるのか? MicrosoftのLinkedIn巨額買収

スケールの大きいMicrosoftの狙い

 Microsoftから見たLinkedInの価値はどうなのだろう。買収額は年間売上高の9倍近いが、元は取れるのか――。CNBCのデータジャーナリスト、Mark Fahey氏はさまざまな数字から評価を試みている。

 LinkedInの評価額をユニークビジター数で割った1人当たり評価額の推移は、買収発表の前は165ドル近辺だったのが、買収発表後は247ドルにまで上昇した。それでも過去の平均額よりもなお10%低いという。同じ基準で3大SNS(Facebook、Twitter、LinkedIn)を比較すると、Facebookが200ドル近辺、Twitterが40ドル近辺で、LinkedInがトップとなる。

 一方、ユーザー1人当たりの売上高では、Twitterの2ドル、Facebookの3ドル強に対して、LinkedInは8ドル。過去4年間をみても、同社は常に他の2社を大きく引き離してずっとトップにあった。

 つまり、ユーザー数に対する評価額では、過去の数字からみてディスカウント価格と言えるし、ユーザー1人当たり売上高では3大SNSでは最も価値が高いということになる。大手SNSを買収によって手に入れたいのだとしたら、よい買い物だったわけだ。またLinkedInにとっても、Microsoftと働くことはユーザーベースの拡大を加速するとFahey氏は予想する。

 Microsoftは、ビジネスユーザー向け製品にLinkedInのビジネスを軸とした「ソーシャルグラフ」を組み合わせることで大きな相乗効果を上げられると考えている。

 the Vergeが入手したNadella氏の従業員あてメッセージで同氏は述べている。「この組み合わせによって、ユーザーのプロジェクトに合わせた記事を表示するLinkedInニュースフィードや、取り組んでいる仕事を支援してくれる専門家の連絡先を提案するOfficeが可能になるだろう。こうしたインテリジェントで快適なユーザー体験を提供すれば、 LinkedInとOffice 365は成長してゆく。また、個人・組織のサブスクリプションやターゲット広告の利益という新しい機会も生まれるだろう」

 さらに先週末、Microsoftはチャットプラットフォーム開発のWand Labsを買収すると発表した。小さなスタートアップで、チャットアプリで会話しながら外部アプリを操作することを可能にするという。Microsoftは「Conversation as a Platform」戦略を進めるとしている。

 Wand Labs買収額は非公表だが、LinkedInとは比べものにならない小さな買収だ。それでも「どちらの取引も、同じパズルの1片である」とFast Companyは指摘する。

 Fast Companyは言う。「Microsoftは、データ、ボット、アプリとサービス群の結合組織などを全部自社で取りそろえた将来像を持っている。時代遅れのパッケージソフト・プロバイダーから脱し、はるかな先を行くコンセプトを目指している。そして、LinkedInとWandの両方が、そこへ至るための助けになると考えている」

 Microsoftのクラウド上に顧客企業が活動するための全てが用意され、それぞれが連携する姿だと考えればよいだろう。新たな時代の囲い込みを目指していると言えるかもしれない。