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その価値はあるのか? MicrosoftのLinkedIn巨額買収

見えない損失で身売りは必然だった?

 派手な資料とは裏腹に、LinkedInは壁にぶつかっていた。今年2月に発表した2015年通期決算は2年連続の赤字。2016年の見通しも弱気で、成長が頭打ちになっていることを感じさせた。このため年明けには220ドル程度で推移していた株価は一挙に100ドル近辺まで下落した。そして、さらに深刻な問題を抱えていたという。

 New York Timesは、Weiner氏が従業員あてに出したメモなどと合わせ、同社の最大の問題は「報酬支払いを過度に株に依存していること」だったと伝えている。株価の急落が、外から見る以上のインパクトを同社に与えていたという。

 RBC Capital Marketsのアナリスト、Mark Mahaney氏は、New York Timesに次のように語っている。LinkedInはシリコンバレーの企業の中でも特に株式による報酬支払いの比率が大きく、株価の低迷が続けば、従業員の株式転売を招き、自社のコントロールを失うおそれがあった。

 LinkedInは「Adjusted EBITDA」(償却前営業利益)あるいは「Non-GAAP」(非米国会計基準)を主に業績説明をしてきた。これらはストックオプションなどの経費や一時的な経費を除外する計算方式だ。目先の利益を上げるよりも、まず規模拡大を目指すベンチャーがしばしば投資家向けの説明に採用する。

 そして同社は、「株式による報酬支払いコスト」も数字から除外している。その額が非常に大きく、昨年は5億1000万ドルに上ったという。過去2年間でみると、営業利益の96%、売上の16%に達するとMahaney氏は指摘する。他のIT大手、Google、Amazon、Facebookなどは、この比率が営業利益の15%程度、売上高比では10%に満たず、LinkedInが突出していたことが分かる。

 これについてLinkedInは「株式ベースの支出は“非キャッシュ”であり、その数字を除外することが“経営パフォーマンスと流動性についての意味ある補足情報”をもたらす」と説明しているが、実質的にほとんど利益を上げていない状態を隠す効果があったことになる。こうした会計数字は、アナリストの中にも好んで使う者がいる“ベンチャーの当たり前”になっているが、著名な投資家のWarren Buffett氏も、この風潮を「インチキだ」と強く批判している。

 Microsoftは、こうした方式をとっていないため、合併後は、LinkedInの隠れていた損失もはっきり見えるようになるという。