週刊海外テックWatch

Metaの「Muse」が大ヒット 「消費者エージェント経済」の主導権争いが始まる

Museが直面する3つのハードル

 MuseはパーソナルなAIエージェントとして先駆けたが、成功が持続する保証はない。Wall Street Journalは、「信頼・セキュリティ」「アクセス」「競争」という3つのハードルを挙げる。

 「信頼・セキュリティ」では、Metaにパスワードを託してもよいと答えた米消費者はわずか8%で、Googleの30%を大きく下回るというOppenheimer & Coの調査を挙げる。ペンシルベニア大学名誉教授でデジタルメディアとプライバシーに詳しいJoseph Turow氏は、CNBCに対し「人々は非常に警戒するだろう」と述べている。

 Reutersによると、Museが許可なく機微な情報をアップロードしたり、個人のiCloud内の写真を露出させるといった欠陥が従業員のテストで報告されていたという。MetaのAI製品担当バイスプレジデントのVishal Shah氏は、4月予定だったリリースを安全性向上のため延期したとし、「絶対にミスが起きないとは言い切れない」が可能な限り安全に設計したと説明している。

 同社は対策として、各Museインスタンスを仮想マシン上で動かし他のインフラから隔離する「Muse Secure VM」と、機微な操作を審査し認証情報への直接アクセスを防ぐエージェント「Sentinel」を導入している。ただし現状ではMetaが理論上、インスタンス内データにアクセスできるため、それを不可能にする強化版「Muse Confidential VM」を限られた利用者向けにテスト中で、年内の展開を予定している。

 「アクセス」の問題は、Amazonによるブロックに表れている。アクセスを与えるほどMuseは便利になる一方で、それを認めるかはAmazonのようなプラットフォーム側の判断次第だ、とWall Street Journalは指摘する。

 もちろん「競争」も激しい。現時点の同等品はInstinctの招待制エージェント程度だが、Wall Street JournalはOpenAIが1~2週間以内に、Appleもいずれ参入するとの見方を紹介する。専門家の見解には、「GoogleとOpenAIに2週間ほど与えれば、世に出ているものは何でも複製してしまう」(Truist SecuritiesのYoussef Squali氏)と優位性に疑問を示すものの一方、Metaの先行者利益と配信力を評価しながら「市場投入のタイミングが重要だ」(Wells FargoのKen Gawrelski氏)とするものもある。

 Beck氏はWall Street Journalに対し、こうも話している。「(消費者向けAIエージェント市場が)どう展開するかについて確固たる見方を持つには、あまりにも時期尚早だ。だが、誰もがこの方向に動き始めた」