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“3つのサイバー”を考えるカンファレンス「Cyber3」が沖縄で開催
世界各国から350人の官・民・学の要人が集合
(2015/11/10 06:00)
11月7日・8日の2日間、沖縄で「Cyber3 Conference Okinawa 2015 -Crafting Security in a Less Secure World -」が開催された。サイバーコネクション、サイバーセキュリティー、サイバークライムという“3つのサイバー”の現状について、日本だけでなく、米国、英国、スイス、フィンランド、インドネシア、アフガニスタンなど世界35カ国から閣僚等、政府関係者、ビジネスリーダー、研究者等350人が集まり、“3つのサイバー”に関し、意見を交わした。
7日には、オープニングスペシャルメッセージのスピーカーとして、沖縄担当大臣兼IT担当大臣である島尻亜伊子氏が登場。「サイバー空間は、現代社会において経済成長やイノベーションを推進するために必要な場であり、今や欠くことのできない経済社会の活動基盤になっている。他方で、サイバー空間の利便性向上にともない、サイバー空間での悪意ある活動によってもたらされる被害の規模や社会的影響が年々拡大している。こうした観点からわが国では、サイバーセキュリティー戦略の策定をはじめとするサイバーセキュリティーの強化に全力を挙げて取り組み、2020年までの世界最高水準のIT利活用社会を目指し、『世界最先端IT国家創造宣言』を策定推進している」とアピール。
さらに、今回の会議開催地となった沖縄がIT関連事業に取り組んでいることについても触れ、「参加者の皆さまには、気に入っていただければ、ぜひ、再び旅行やビジネスにお越しいただきたい」と訴えた。
安倍晋三総理大臣もビデオメッセージを寄せ、「サイバーコネクション、サイバーセキュリティー、サイバークライムへの対策は、ITの利活用を進める成長戦略にとって欠かせない基盤」と対策の必要性をアピールした。
カンファレンスのスタートとなるイントロダクションに登壇した、内閣府参与で、世界介在フォーラムグローバル・アジェンダ・カウンシルの齋藤 ウィリアム 浩幸氏は、「インターネット=経済という状況になり、インターネットが止まることで経済に大きな影響を及ぼす事態となる。今回、いろいろな方にこの会場にお越しいただいた。現在は変革点にあり、岐路に立っている。今日のセッションで特効薬を提供できるわけではないが、人、人脈ができることで強力なバーチャネルネットワーク構築を実現する」と述べ、カンファレンスがきっかけとなって、新たな人的ネットワーク構築が期待できるとも説明した。
世界各国の要人が参加、IT系カンファレンスとは趣が異なる
今回のカンファレンス参加者は、IT系カンファレンスとは趣が異なり、参加者が多彩であることが特徴。島尻 沖縄担当大臣兼IT担当大臣をはじめ、甘利明 内閣府特命担当大臣、河野太郎 国家公安委員会委員長など日本の政府関係者、日産自動車副会長の志賀俊之氏、元米国家情報長官のデニス・ブレア氏、国際刑事警察機構 IGCI総局長の中谷昇氏、元ICANN理事長のロッド・ベックストローム氏、フィンランド アルト大学サイバーセキュリティー教授のジャルノ・リムネル氏、米Microsoft サイバーセキュリティポリシー&戦略担当責任者のアンジェラ・マッケイ氏など、世界各国の要人が“3つのサイバー”について協議した。
また、IT担当大臣である島尻氏は、露Kaspersky Lab 取締役会長兼最高経営責任者であるユージン・カスペルスキー氏、米Symantec 副社長のシェリ・マグワイア氏、日本IBM 代表取締役社長取締役執行役員のポール与那嶺氏と、クローズな対談を行った。この対談の中では、カスペルスキー氏、マグワイア氏からは2020年の東京オリンピックへの協力、与那嶺氏からは沖縄への日本IBMとしての協力などが議題にのぼったという。
RoBoHoNを使ったデモも
テーマごとに行われたセッションは、“3つのサイバー”のカテゴリーごとにさまざまな議論が行われた。サイバーコネクションでは日産自動車副会長の志賀氏、サイバーセキュリティーでは元米国家情報長官のブレア氏、サイバークライムでは国際刑事警察機構(インターポール) IGCI総局長の中谷氏がトラック議長としてセッションをリードした。最後に各テーマをとりまとめるラップアップセッションを行った。
各国からの参加者が集まってのセッションだけに、セッションの内容も通常のIT系イベントとは異なる雰囲気となった。サイバーコネクションのセッションの1つである「コネクテッドカー、ロボットなど:広がるインダストリアルIoT」では、CEATECに展示され、大きな話題となった「RoBoHoN」を手に、ロボ・ガレージ代表取締役社長である高橋智隆氏が登壇。RoBoHoNに電話がかかり、それに応答するデモを行うと会場は大喝采となった。
高橋氏は、「現行のスマートフォンに搭載されている音声認識機能は、思うように使われていない。それは四角い機械に音声で話しかけることに抵抗を感じる人が多いからだ。ロボットに対してであれば、話しかけることにちゅうちょせず、音声認識機能を利用できる」という持論を紹介。ロボットの形状とすることで、テクノロジー活用は違う方向に進む可能性があることを示唆した。
この高橋氏のデモに対しては、初めてRoBoHoNを目にしたのであろう外国人参加者の反応が良く、「ロボット電話という新しい製品を欲しいと思うか?」という司会者の問いかけに、会場のほとんどの外国人参加者が手をあげた。
サイバーセキュリティーでは、2020年開催の東京オリンピック、その前に開催される2018年の平昌オリンピックに向けた取り組みをはじめ、法令とセキュリティ規制、国家安全保障とサイバーセキュリティー、セキュリティ侵入に対する新しい法令と規制といったテーマでセッションが行われた。
サイバークライムでは、サイバークライムと戦うための各国法執行機関との取り組み、サイバー脅威に立ち向かうための産業全体の取り組み、情報と脅威インテリジェンス共有のための枠組み作りといったテーマでセッションが行われた。
テーマごとのセッションのほかに、7日の夕方のセッションには、甘利内閣府特命担当大臣が登壇し、マイナンバー制度をテーマについて話した。甘利氏は、「日本の経済成長にはマイナンバー制度の利活用が欠かせない」とマイナンバー制度が日本経済に欠かせないものだと強調した。
その上で「国民にはマイナンバーに対する漠然とした不安が広がっている。より一層の個人情報の保護、情報セキュリティの確保を行い、国民の理解につとめる」とサイバーセキュリティー強化によって、マイナンバーを安全に利活用する意向をアピールした。