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日本ヒューレット・パッカード、新たなインフラビジョン「コンポーザブル・インフラストラクチャ」とその製品群を発表

 日本ヒューレット・パッカード株式会社は29日、同社の提供するインフラストラクチャに関する新たなビジョン「HPコンポーザブル・インフラストラクチャ」について記者会見を開催。あわせて、同ビジョンに基づいた製品群を発表した。

 コンポーザブル・インフラストラクチャとは、柔軟かつ俊敏に組み立て可能なインフラストラクチャのことを指す。日本ヒューレット・パッカード エンタープライズグループ事業統括 HPサーバー製品統括本部 統括本部長の橘一徳氏は、「ITシステムは、多様なワークロードに対応することや、環境の変化に対応できる俊敏性、またコスト削減による効率化が求められている。そのためには、ワークロードにあわせてリソースを柔軟に切り出し、仮想・物理環境を問わずマシンを構成し、ソフトウェア定義型のインフラストラクチャとして汎用的に活用できる共通基盤が必要だ」と述べ、それを実現するのがコンポーザブル・インフラストラクチャだと説明した。

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズグループ事業統括 HPサーバー製品統括本部 統括本部長 橘一徳氏
HPがコンポーザブル・インフラストラクチャを推進する背景

 その実現に向けた取り組みを、同社では「Project Synergy」として推進している。今回発表する製品群は、同プロジェクトのフェーズ1となる「ソフトウェア自動化」に焦点を当てており、ITインフラへの統合されたAPIの実装とオーケストレーションツールの連携を実現するものだ。

 その製品群とは、エンタープライズ向け統合クラウドソリューションの新バージョン「HP Helion CloudSystem 9.0」と、統合管理ソフトウェアの新バージョン「HP OneView 2.0」、そして中規模仮想環境向けハイパーコンバージドアプライアンス「HP ConvergedSystem 250-HC StoreVirtual(CS 250-HC StoreVirtual)」だ。

Project Synergyのロードマップ
コンポーザブル・インフラストラクチャを実現する製品群

 それぞれ全く新しい製品ではないが、「コンポーザブル・インフラストラクチャが実現できるよう、個別のツールとして提供していたものをまとめた製品群だ。既存のIT環境を生かしつつ、一部をバージョンアップするだけでコンポーザブル・インフラストラクチャに近づくことができる」と、日本ヒューレット・パッカード HPサーバー製品統括本部 エンタープライズサーバービジネス開発部 部長の中井大士氏は述べている。

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズグループ事業統括 HPサーバー製品統括本部 エンタープライズサーバービジネス開発部 部長 中井大士氏

 HP Helion CloudSystem 9.0は、2014年10月にリリースしたエンタープライズ向け商用OpenStackディストリビューション「HP Helion OpenStack」を採用し、管理性を強化した。また、従来の「VMware ESX」および「Red Hat KVM」に加えて「Microsoft Hyper-V」もサポート対象となり、さまざまな仮想環境に対応したほか、「Amazon Web Services」や「Microsoft Azure」などのパブリッククラウドとも連携できるようになった。

 HP OneView 2.0では、サービスレイヤーからITインフラの展開が可能となるよう、HP Helion CloudSystemのみならず、インフラ構成管理ツール「Chef」と連携できるようになった。また、管理対象サーバーへのファームウェアアップデートがオンラインで実施可能となったほか、大量のシステム管理を想定し、親テンプレートによる複数の子プロファイルへの一括アップデートを可能とするなど、サーバープロファイルの更新を簡素化した。

 CS 250-HC StoreVirtualは、コンポーザブル・インフラストラクチャに適したアプライアンスとして、2Uのプラットフォームにサーバー、ストレージ、ネットワーク機能を統合して実装した。ハイパーバイザーや導入管理ツールはプリインストールして提供するが、ストレージの種類や容量、CPU,メモリなどの選択肢も多く、「アプライアンスとはいえ構成には柔軟性を持たせている」(中井氏)という。

 こうした製品群に加え、日本ヒューレット・パッカードでは、カスタマイズ型保守サービス「HP データセンターケア」のオプションとして、自動化環境の構築や運用をサポートする「HP データセンターケア インフラストラクチャ オートメーション」も同時に発表。さらには、従量課金サービス「HPフレキシブルキャパシティ」の対象機器としてCS 250-HC StoreVirtualを追加しており、ギガバイト単位での従量課金の見積もりを11月に開始する予定だという。

 なお、橘氏によると、Project Synergyのフェーズ2では「Infrastructure as Code(コードによるITインフラの管理)」を目指し、フェーズ3では「継続的なサービスデリバリ」を実現するという。また、フェーズ4では次世代のコンピュータインフラとなる開発中の技術「The Machine」を市場投入する。The Machineはコンポーザブル・インフラストラクチャの究極の姿で、2020年にはリリース予定だという。

藤本 京子