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極地研、南極・北極域の観測データ解析の新システム構築

気候・海洋変動のメカニズム解明へ

 株式会社日立製作所(以下、日立)は26日、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所(以下、極地研)における、人工衛星や南極域・北極域の観測地から送信される観測データを解析するための「極域科学コンピューターシステム」の構築を完了したと発表した。2月1日から稼働を開始する。

 近年、人工衛星での広域観測や観測技術・データ転送技術の向上により、日々生成される観測データはますます増加している。極地研は、この大量データをより短期間で高精度に解析するため、従来システムから演算性能を大幅に向上した今回のシステムに刷新した。

システムの外観

 同システムは、たとえば地球環境に大きな影響をおよぼす南極域・北極域における気候・海洋変動のメカニズムを解明する研究に活用され、地球における将来的な気候変動予測への貢献が期待される。また、オーロラ現象と太陽風による磁気圏変動の因果関係など、宇宙空間の環境変化を解明する地球磁気圏物理分野の研究にも活用される。

 極地研に所属する研究者のほか、極地研と共同研究を行う大学や関連研究機関に所属する全国の研究者にも公開し、共同利用する方針だ。

システムの概要図

 同システムは、日立のスーパーテクニカルサーバー「SR24000モデルXP1」を74ノード採用し、従来システムの約5.6倍となる合計40.4TFLOPSの総合理論演算性能を有する。また、自然界に近いシミュレーション解析に必要となる物理乱数を演算するノードには「SR24000モデルXP2」を1ノード採用した。

 そのほか、ユニファイドストレージ「Hitachi Uniried Storage 100シリーズ」で合計約210TBのストレージ環境を実現しているほか、日立独自の分散共有ファイルシステム「Hitachi Striping File System」を採用し、高速なデータ転送によって複数ノードによる並列処理の高速化を実現している。

 これらにより、膨大な観測データをこれまで以上に高速かつ高精度に解析できるほか、解析結果のデータを十分に格納できる環境を実現したという。

 極地研は「極地に関する科学の総合研究と極地観測」を目的に、1973年に創設され、2004年に大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構を構成する研究所の1つとして発足。宇宙圏、気水圏、地圏、生物圏および極地工学の5分野において、基礎研究や共同研究を行うとともに、南極・北極観測の中核的機関として各種業務を推進している。