KDDIウェブコミュニケーションズ、クラウド電話API「boundio」正式サービス

~クラウド電話API世界最大手のtwilioと提携で基本合意


KDDIウェブコミュニケーションズ代表取締役社長 山瀬明宏氏

 株式会社 KDDI ウェブコミュニケーションズは4月10日、クラウド電話 API「boundio(バウンディオ)」の正式サービスを提供開始すると発表した。利用料は基本料金が月額1575円、プラス利用時間1分ごとの従量課金となる(固定電話向けは1分15ポイント、携帯電話向けは1分25ポイント(1ポイント=1円)。

 boundioは、インターネット上から電話をかけることができる、クラウド電話APIを提供するサービス。公開されたAPIをウェブサイトやアプリケーションに実装するだけで、050番号による電話発信など、電話を使った自動サービスが利用可能になる。

 主な機能は、(1)050番号による電話発信、(2)アップロードした音声を再生する再生機能、(3)テキスト文字列を音声ファイルに変換できる音声合成機能の3つ。これらの機能を利用することで、ECサイトで会員登録の際に電話を使って認証を行ったり、あらかじめ登録した日時にリマインダーとして自動音声で電話をかけたりといったサービスが簡単に構築可能になる。

 また、今回正式サービス提供にあたり、音声関連機能を拡充。ベータユーザーには不評だった音声合成エンジンを、テレビ東京の「もやもやさまぁ~ず2」番組中でも使用されている女性の声の音声合成エンジンに更新。より自然な発話が可能になったという。音声合成APIによる音声アップロード操作も可能となり、音声合成APIからそのまま接続して音声を読み上げるといったことが可能になった。

 オプション機能も拡充し、「着信転送」と「自局電話番号変更」の2つの機能を用意した。着信転送はたとえば、レストラン予約をウェブサイトで受け付け、ユーザーに自動で予約内容確認の音声電話をかけるようなサービスの場合、ユーザーが日時の変更希望などで折り返してかける電話が受信できるよう、自動発信したboundioの050番号以外に転送する、といった使い方ができる。「時局電話番号変更」は、登録時の番号を変更したい場合に利用する。

 使用料は、基本料金月額1575円のほか、通信料が別途かかる。通信料は1000ポイント1000円として、1000ポイント単位でクレジットカード決済で前払い購入する。固定電話あては15ポイント/分、携帯電話あては25ポイント/分が利用ごとに引かれる仕組みだ(1ポイント=1円)。

 機能面では今後、現在は電話を発信する機能だけだが、受信機能や、SMSの認証機能などを提供していく予定だという。

boundio 3つの基本機能boundioの仕組み。オレンジ背景の部分をすべてboundioが担うため、サイト制作者は、数行のスクリプトを書くだけでウェブから電話をかけるシステムを作れる正式サービスにあたって、転送電話などのオプションサービスを追加。音声合成エンジンも変更した


「中小企業を元気に、エンジニアを超ラクにしたい」

 KDDIウェブコミュニケーションズ代表取締役社長 山瀬明宏氏は発表会で、「KDDIウェブコミュニケーションズは15年間、中小企業を支援しようという目的の下に事業を展開してきた。エンジニアやデザイナーの作業負担を軽減することが、中小企業を支援することになると考えている。これまでホスティングのCPI、クラウド型ホームページサービスJimdo、クラウドサービスのCloudCoreと3つのサービスを提供してきたが、そこに今回のクラウド電話APIサービス boundioが加わることになる」と述べ、新サービスであるboudioは、同社事業の柱のひとつとなるサービスだとした。

 また山瀬社長は、「今回提供するクラウド電話APIは、ネットと電話を楽につなげるもの。PearlやPHPでプログラミングする必要もなく、電話の技術的スキルを持たず、制御方法を知らなくても、電話を使ったサービスが作れるAPIプラットフォームとなる。サイト構築の際に、APIを含むスクリプトを数行加えるだけで利用できる」として、エンジニアやウェブデザイナーが非常に楽に利用できることを強調。

 競合については、「電話を使ったサービスはboundioだけではなく、他に2社がすでに提供しているが、これらはコールセンターなどの自動システムをSI業者を通じてソリューションとして提供するサービスで、大企業向け。われわれのターゲットはあくまで中小企業で、対象が異なる」として、インターネットと電話をつなぐという意味では同じだが、導入コストも導入期間も、導入にかかる手間もまったく違うboundioはこれまでにないサービスであると述べた。

従来型の他社サービスとの比較boundioの位置づけ

 ただし、「国内ではboundioだけだが、海外では5年くらい前からこうしたサービスを手掛ける事業者が複数存在する。中でも、twilioが世界最大のサービスとなるが、設立は5年前と新しい会社であるにもかかわらず、5年間ですでに3300万ドルの資金調達を行っており、投資家にも注目されている」と海外の状況を説明した。

 また山瀬社長は、電話を使ったウェブサービスで、パーツとしてどのくらい利用されたかというマッシュアップのランキングにおいてTwillioは340件でトップとなっているのに対して、Skypeが2位だが利用は28件と、圧倒的な支持を得ていると紹介。

 電話を使ったサービスに限らず、全ジャンルでのランキングでも、1位がGoogle Mapsで2362件、次いで2位がTwitterで695件だが、こうした全世界でよく知られたサービスと並ぶランキングでもTwilioは340件で7位と10位以内に入っており、日本ではこれからだが、グローバルではすでに有力なサービスとなっていることを説明した。開発コミュニティも、twilioの開発者コミュニティへの登録数は2010年の下半期から3年弱ですでに10万人に達しているという。

海外では5年くらい前からbaoundioと同様のサービスが提供されており、twilioが最大手ウェブサイトでツールとして多く利用されているランキング。Google Mapsやtwitterなども入るランキングで、twilioは7位に。海外ではすでに普及しつつあるサービスであることがわかる

 日本市場では、「日曜日の夜中に、エンジニアが電話を使ったウェブサービスを作ろうと思ったら、カードでサインアップしてすぐ使える」といったクラウド電話APIサービスはboudioが初となり、「米国から5年遅れているが、これから巻き返したい」と山瀬社長はコメント。目標の数字として、初年度売上げ1億円、開発者数3000人を挙げた。また5年後の目標として、売上20億を挙げ、「この数字は自社サービスのみの数字」だとして、今後競合も出て、市場は急拡大するとの見通しを示した。

 さらに、発表会でKDDIウェブコミュニケーションズは、グローバルで見れば現在のboundioもまだ価格面などでやや高く、こうした壁を越えるためにも、世界最大手のtwilioと提携すると発表。3月末に基本合意し、詳細はまだ発表段階にないとしているが、日本国内でのマーケティングで提携協力していくことは間違いないとしている。



boundioの5年間の見通し初年度売上げ1億円、開発者数3000人を目指す


boundioを使ったサービス事例

 発表会では、boundioを使ったサービスの例もデモを交えて紹介された。OpnePNEの開発者として知られる手嶋屋の代表取締役社長 手嶋 守氏は、Boundioを使った社内メッセージングサービスを紹介。SNSを利用して、メッセージ文で「@相手のID 本文」とした場合にはSNSメッセージを送信、@を2個重ねて「@@相手のID 本文」でメールを送信、@マーク3個の「@@@相手のID 本文」では電話をかけ、自動音声で伝える。

 社内でSNSを導入しても、営業スタッフが見てくれなかったりといった問題がありがちだが、状況に応じて自動音声による電話をかけて確実に伝えることができる。

 株式会社ソフトクリエイト 取締役副社長執行役員 ECカンパニー代表 林 雅也氏は、同社のBtoB取引向けのパッケージ「ecbeing」で採用するとして、デモを披露。ecbeingでは会員登録時の認証サービスにおいて、オプションサービスとしてboundioを利用した電話による認証を取り入れるという。

 具体的な手続きとしては、会員登録時に、電話番号を登録して、登録の最後に実際に登録した電話番号をコールするボタンを設置。ユーザーがボタンを押すと、boundioを使って電話をかけて、自動音声で暗証番号を読み上げる。この暗証番号を、会員登録ページで入力することで、本人認証を行う。

 林氏は、「BtoBサイトなどでは、いろいろな人がウェブから申し込みをしてくる。競合他社の取引価格を探るため、競合他社を騙って登録申し込みを行うといった例もある。通常は営業が実際に足を運んで与信を行うといった形になる」とBtoBサイトの会員登録の手続きを説明。

 「ウェブでの認証は、登録メールアドレスに確認用URLを入れたメールを送り、クリックされたら本人認証済みとして正式登録といった手段しかなかった。boundioは、実際に利用している電話番号を登録する必要があり、心理的な面も含めて、身元を保証する手段として非常に有効」と、オプションとして同社サービスにさっそく組み込んだ理由を語った。

手嶋屋 手嶋社長のデモ。@ひとつでSNSメッセージ、ふたつでメール、みっつでboundioを利用して音声合成し、電話をかけるソフトクリエイトのデモ。住所などを登録した後に表示される、boundioを利用した電話認証画面。電話のマークをクリックすると登録した電話番号に電話がかかってきて暗証番号を読み上げる。読み上げた暗唱番号をウェブで入力する

 面白法人カヤックのこえ部 プロデューサー 鈴木啓央氏は、同社のこえ部のサービスは会員数50万人で日本最大の音声コミュニティであると紹介。こえ部のサービスでは、ユーザー全員が利用するサイト内の大通りとして「メインストリーム」があるが、そこで流された音声を登録した本人が聞き逃したりといったことがあるため、boundioを利用して、メインストリームに自分のコンテンツ掲載が予約されると、事務局から電話がかかってくる仕組みを作ったという。4月にコアユーザーへトライアル提供し、5月に有料のプレミアム会員限定の機能として提供する予定だ。

 鈴木氏は、6月以後に、たとえば自分のコンテンツにコメントがつくとおめでとう電話がかかってくる、登録から何十日といった区切りで電話がかかってくる、誕生日に声優や芸能人から電話がかかってくるなど、さまざまなサービス展開が考えられるとコメント。「声のサービスなので、自動電話をかける場合も、運営の声も合成ではなく、生声を録音するなどこだわっていきたい」と述べた。

 また、株式会社リザーブリンクの営業推進セクションマネージャ 野村武志氏は、同社の予約クラウドにおけるboundioの利用をデモ。同社の予約クラウドサービスは、レストラン、美容院、病院などから大手量販店の業者向けイベントスペース予約など広く利用されているが、予約サービスにおいては、確認の電話だけでなく、たとえば予約時間の3時間前にリマインダーとして電話をかけるなどの利用方法が考えられるとした。同社ではboundioを使った電話サービスはオプションとして追加料金を取る形ではなく、実際にかかった課金のみを請求する形で提供する予定だという。
 

スマートフォンで利用者が伸びている「こえ部」画面。声をテーマとするサイトだけに、boundioを使ってさまざまな展開が考えられるというリザーブリンクの予約クラウドを利用した美容院予約画面の例。予約確認の電話や、音声電話によるリマインダーサービスなどを提供する予定だという


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