内田洋行、知的生産性向上目指す「ウチダ・ビジネス・クラウドサービス」

第1弾にEvernoteと連動した「書撮りくんEN」


内田洋行の柏原孝社長(左)と米Evernoteのフィル・リービンCEO(右)
Evernoteと連動した内田洋行のOAボード「書撮りくんEN」。ベースとなる書撮りくんMCIIは4500台の累計出荷実績を持つ
書撮りくんENの運用イメージ

 株式会社内田洋行は19日、同社のクラウドサービスを統合する「ウチダ・ビジネス・クラウドサービス(UBCS)」(仮称)を推進することを発表した。

 その第1弾として、米Evernoteが提供するオンラインメモサービス「Evernote」と連動することで、手書きアナログ情報を、検索可能な文字情報に変換、蓄積することができるOAボード「書撮りくんEN」を開発し、6月20日から発売する。

 ウチダ・ビジネス・クラウドサービスは、クラウド・コンピューティングにおける各種有料サービスや、ソーシャルネットワークサービスなどに代表される無償サービスなどを独自に連携させ、個別のサービスだけでは得られない利便性と価値を提供することを目指すという。

 企業や教育現場において求められる顧客対応、企画立案、アイデア創出のほか、マネジメントなどの活動において、情報共有やコミュニケーション、ディスカッションといったシーンで、より使い勝手に優れたクラウドサービスを提供するものとしている。

 内田洋行 オフィスエンジニアリング事業部長・朝倉仁志執行役員は、「ウチダ・ビジネス・クラウドサービスの開発コンセプトは、クラウドサービスと、ITデバイスを親和性のある形態で結びつけ、その機能だけでなく、運用までをトータルにデザインするもの。知的生産性活動において、さまざまなサービスを提供するものになる。企業における第2の脳ともいえる役割を果たす製品へと成長させたい」と位置づける。

 ウチダ・ビジネス・クラウドサービスの第1弾として提供する「書撮りくんEN」では、接続されたAndroid端末から、アイコンボタンを押すだけで、OAボード上に記述されたすべてのイメージをあらかじめ設定されたクラウド上にあるEvernoteのディスクスペースに格納。さらに取り込まれたイメージは、オーリッド(本社大分県)が提供するクラウド型デジタイズサービス「O-RID-KYBER(オーリッドカイバー)」を通じて、テキストデータに変換し、Evernoteに格納できる。

 これにより、OAボードから取り込んだイメージデータや、変換されたテキストデータを閲覧、検索できるとともに、情報を加工、編集することで、プレゼンテーションツールやレポートなどに再利用できるという。

 「まずは会議のシーンでの生産性向上を実現することを目指した」(朝倉執行役員)。

 書撮りくんENは、5月10日からベータ版を提供。6月20日から出荷する正式版の価格は、Android Tabletと、ソフトウェア(書撮りくんENソフト、デジタイズサービス)を含んで、30~40万円を予定しており、3年リースによる月額1万円程度での提供も計画している。

 中小企業、大手企業、教育機関などを対象に、初年度4500台の販売を見込む。既存の販売チャネルに加えて、新規チャネルの開拓も進める。


スキャンをしている状態。複数の人が書いた文字や、横書き、縦書きも含まれているO-RID-KYBERにより、これをテキストにすぐに変換してくれる
また、ボード上に張りだした資料やそこに文字を書き込むといった会議にありがちな状況も、そのままEvernoteにあげることができる内容はそのままEvernoteで共有。会議に遅れてきた参加する人は、移動中にこの資料を自分のスマートフォンで確認したのちに会議に参加するといった使い方もできる

内田洋行の柏原孝社長

 第2弾以降の製品としては、グループウェア関連企業との連動などにより、会議に関する召集や予約、資料を集めるといった領域にフォーカスしたサービスを用意するほか、今後は、セキュリティレベルを引き上げたようなサービスも提供していくことになるという。

 内田洋行の柏原孝社長は、「内田洋行は、半年前から有識者を交えて、クラウドに関する事業化を検討してきた。また当社は、かねて、企業や教育現場における知的創造性の場を提供することに取り組んできたが、その価値向上に向けて、技術検証、マーケット検証を進めてきたのが、ウチダ・ビジネス・クラウドサービスとなる。今回の発表を第1弾として、今後、当社ならではのクラウドサービスとして、内容を発展させていきたい」とした。

米Evernoteのフィル・リービンCEO

 また、米Evernoteのフィル・リービンCEOは、「Evernoteは、3年前にサービスを開始して以来、これまでに850万人が利用し、毎日3万人ずつ新規ユーザーが増えている。Evernoteにとって、日本は特別な市場であり、全世界のアクティブユーザーの28%が日本のユーザー。そして、もっとも活発に利用しているのが日本のユーザーの特徴だといえる。日本語版は、昨年3月にローンチしたばかりだが、大変好評であり、日本のパートナー各社のクオリティの高さ、細部の心配りに感心している。内田洋行は中でもクオリティの高いパートナーであり、クリーンで、シンプルで使いやすいサービスが提供できる。今回の製品は、ビジネスと教育の両方に提供できる製品であり、さらに、今回のパートナーシップは始まりにすぎないと考えている。クラウドの成功の要素は、ユーザーと情報の間の障害物を取り除くという点。100年の歴史を持つ内田洋行が取り組んできたのは、その部分だったともいえる。今後のパートナーシップが楽しみである」とした。

 なお、内田洋行は、ウチダ・ビジネス・クラウドサービスの推進、開発に当たって、米Evernoteと、Evernoteサービスを組み込んだアプリケーションを開発するソリューションパートナーとして提携。プレミアムライセンスの販売も開始する。

関連情報
(大河原 克行)
2011/4/19 15:39