東芝、想定外の機器に接続すると記録データを瞬時に無効化する2.5型HDDを製品化


瞬間データ無効化技術を搭載した2.5型HDD(MK6461GSYG)

 株式会社東芝は13日、想定外の機器に接続されると記録データを瞬時に無効化する機能を搭載した2.5型HDDを製品化し、6月下旬から量産を開始すると発表した。製品ラインアップは、「MK6461GSYG」(記憶容量640GB)、「MK5061GSYG」(同500GB)、「MK3261GSYG」(同320GB)、「MK2561GSYG」(同250GB)、「MK1661GSYG」(同160GB)の5機種。サンプル出荷は4月下旬より開始する。

 新製品の発表にあたり、ストレージデバイスを取り巻く市場環境について、東芝 執行役常務 ストレージプロダクツ社 HDD事業部 事業部長の錦織弘信氏が説明。「クラウドの普及やクライアントデバイスの多様化などにより、データ量が爆発的に増大する中で、今後もストレージデバイスの市場は大きく成長していくことが見込まれる。ストレージの用途としては、従来のエンタープライズ向けHDDに加え、高速処理に対応するエンタープライズ向けSSD、膨大なデータを蓄積するローコストのニアライン型HDD、さらには外付け型のモバイルHDDのニーズが高まり、HDDとSSDが共存して市場拡大をけん引していくことになる」との考えを示した。

東芝 執行役常務 ストレージプロダクツ社 HDD事業部 事業部長の錦織弘信氏今後のストレージ事業戦略

 そして今後のストレージ事業戦略として、「多様化する市場ニーズに対応し、エンタープライズ向けHDDからエンタープライズ向けSSD、ニアライン型HDD、モバイルHDDまで、すべてのストレージ領域をカバーする製品ラインアップを展開していく。HDD、SSDをワンストップで提供できる唯一のメーカーとして、2013年度にはモバイルおよびエンタープライズ市場において20%以上のシェア獲得を目指す」との方針を述べた。

東芝 ストレージプロダクツ社 HDD事業部 ストレージソルーション推進部 参事の中島一雄氏

 次に、東芝 ストレージプロダクツ社 HDD事業部 ストレージソルーション推進部 参事の中島一雄氏が、今回発表した新製品の特徴などを説明した。「新製品は、全方位で展開する当社のストレージ戦略において、さらなるセキュリティ向上のニーズに対応する付加価値製品となる。独自の暗号化技術をベースに、想定外の機器に接続するとHDD本体が自動でデータを無効化する、世界初の機能を搭載している。これにより、HDDが盗難された場合でも、特別な対策をすることなく情報漏えい防止を図ることができる」という。

 具体的には、HDD本体が、搭載されたデジタル複合機やPOSシステム、パソコンなどの機器と認証を行い、あらかじめ決められた機器以外のシステムからアクセスされた場合に、自動でデータを無効化する。機器の認証には、乱数を利用して毎回異なるデータの受送信を行う「チャレンジレスポンス方式」を採用し、認証ごとに異なるレスポンスで搭載機器を判定することで、盗聴による認証コード解析を防止。HDDが盗難され、想定外の機器に接続された場合には、HDD自体が暗号化データの解読に必要な「暗号鍵」を自動消去し、データを瞬時に解読不能にすることで無効化する。

想定外の機器に接続するとHDD本体が自動でデータを無効化する新機能チャレンジレスポンス方式

 「当社は昨年、HDDへの電源供給が遮断された場合に自動でデータを無効化する独自技術として『Wipe technology storage(以下、Wipe)』を開発したが、省電力モードになるとデータが無効化されてしまうなど、運用上で課題が残っていた。また、HDDが持ち出された時だけデータを無効化したいという要望も強かった。今回、こうした課題を解決するため、『Wipe2』として機能強化し、機器認証を行ってデータの無効化を判断する機能を実現した」(中島氏)としている。

 また、新製品は、「想定外の機器に接続された時にデータを無効化するモード」のほかに、「搭載機器からの指示でデータを無効化するモード」、「電源供給が遮断された時にデータを無効化するモード」を設定することが可能。さらに、それぞれのモードにおいて、「無効化するエリア」と「無効化せずに暗号化状態で保存するエリア」を設定でき、これらの設定をHDD上のエリアごとに組み込むことで、装置に適した情報漏えい対策を図ることが可能となる。

 環境にも配慮した設計になっており、RoHS指令への適合と本体全体のハロゲンフリー、アンチモンフリーを実現。また従来、機器リース後の返却時や機器廃却の際には、保存されているデータを無効化するのに数時間かかっていたが、新製品では、データ無効化を瞬時に行うことが可能となるため、廃却での作業時間短縮による省エネ化、およびストレージ再利用の促進を図ることもできる。

 同社では、デジタル複合機、POSシステム、パソコンなど向けに、新製品をラインアップすることで、高度なセキュリティレベルが求められる顧客のニーズに応えるとともに、今後、この技術を応用したSSDの製品化も検討していく。さらに、東芝ブランドでも新製品を搭載したデジタル複合機、POSシステム、パソコンなどを企業向けに展開していく計画。

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(唐沢 正和)
2011/4/14 06:00