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富士通研、特性の違う通信網に適用できるWAN高速化技術を開発

 株式会社富士通研究所は16日、特性の異なる通信網に適用できる、WAN高速化技術を開発したと発表した。従来の2倍の速度向上を実現するという。

 今回開発されたのは、モバイル網と国際網といった、データ欠落や遅延などの特性が異なる通信網を含むWANに適用可能な高速化技術。従来のWAN高速化技術では、WANの両端に一対の高速化装置を設置することが多く、WAN内に特性の異なる通信網が含まれることが考慮されていなかったため、WANによっては最大性能を引き出せない場合があったという。

 しかし新技術では、WANの中に高速化装置を分散配置することで、各装置間のネットワーク特性に応じて、コントローラが最も適した通信プロトコルとその適用区間を自動選択できるようにした。

 具体的には、各WAN高速化装置で、プロトコルを変換するのに必要な中継遅延時間、各装置間のネットワーク特性、ポート番号や中継するデータのモニタリングにより推定した通信アプリケーションが転送するデータサイズ、といった情報をコントローラに送付。コントローラは、装置間のネットワーク特性から推定される各高速プロトコルの通信性能を算出し、中継遅延時間および算出した通信性能から、推定データサイズを転送するのに要する時間が最小となるよう、最適な論理区間と、その区間に適用する高速プロトコルを決定する、といった手順になる。

分散型WAN高速化技術

 富士通研究所では、開発した技術をソフトウェアに実装し、学術情報ネットワーク「SINET4」や無線LANサービス「eduroam」を利用して、国立情報学研究所(NII)と評価検証を行ったが、モバイル端末を利用して国内から海外のクラウドサービスを利用した場合に、従来のWAN高速化技術と比べて約2倍の通信性能を確認したという。

SINET4を利用した評価検証

 この技術を利用することにより、リアルタイム性への対応や高画質化などで、今後さらなる増加が見込まれる通信トラフィックに対して、効率的にネットワーク帯域を利用できる通信インフラが構築可能になるとのこと。

 富士通研究所は、開発した技術を2015年度中に実用化できるよう進めていく考え。またNFV(Network Functions Virtualization)に適用すると、ファイアウォール、キャッシュ、ロードバランサーなどのさまざまな通信機能と連携し、きめ細かい通信サービスが提供可能になることから、NFV上での実現方式の検討も行っていくとしている。

石井 一志