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約6割の企業がビッグデータ活用を組織的な検討課題と認識~NRI調べ

期待は大きいが社内体制整備が喫緊の課題

 株式会社野村総合研究所(NRI)は25日、ビッグデータ利活用に関する企業アンケート結果を発表した。約6割の企業がビッグデータの活用を組織的な検討課題と認識していることが分かった。

 2012年7月~8月に、売上高200億円以上の企業における経営企画部門、および情報システム部門それぞれの担当者を対象としたアンケート調査(回答は228社・242件)。

約6割がビッグデータを自社の検討課題と認識

 ビッグデータ活用が組織的な検討課題に挙げられているかどうかを尋ねたところ、「全社レベルの検討課題(23%)」または「特定部門、部署レベルの検討課題(34%)」との結果となり、合わせて57%がビッグデータ活用を組織的な検討課題と認識していた。

「貴社ではビッグデータ活用が、組織的な検討課題にあげられていますか」

 こうした課題認識は、BtoB企業(49%)よりBtoC(64%)において高く、加えて企業規模が大きいほど高くなる傾向だった。特に売上高1兆円を超える企業では84%と、この傾向が顕著に表れた。

「ビッグデータ活用が組織的な検討課題にあがっている」との回答割合(属性別)

活用の期待領域は広く、GPSやICカードのデータにも活用意向

 企業活動において、ビッグデータ活用がすでに進んでいる領域として多く挙げられたのは「マーケティング(26%)」「経営管理(20%)」。有望と思われる活用領域として上記2つ以外に「商品企画・開発」「戦略策定」「営業」「販売促進」などが挙げられ、今後のビッグデータ活用に期待が持てる領域として位置付けられている。

「既にビッグデータの活用を検討中、あるいは活用中の領域があれば、お知らせください(左)」「貴社がビッグデータを活用する場合、どのような領域が有望と思われますか(右)」(ともに複数回答)

 なお、ビッグデータとして現在分析に活用されているのは、「顧客情報・取引履歴など(50%)」が最も多く、ついで「Webログデータ(34%)」が挙げられた。今後活用していきたいデータとしては「SNS(現在活用している8%、今後活用したい32%)」や「GPSデータ(同6%、同14%)」「ICカードデータ(同3%、同10%)」が上位に挙がった。

ビッグデータ活用のためには社内体制整備が喫緊の課題

 ビッグデータ活用の社内的な推進体制に関して「既存部署(58%)」や「個人担当者レベル(31%)」での活動と位置付ける企業が多く、「新設部署(4%)」や「組織横断のチーム、タスクフォースなどの時限的組織(16%)」といった専門の社内組織を設立しているという回答は限定的。また、その検討を担当する社員数は「1~5名(47%)」「6~10名(25%)」と10名以下とする回答が約7割を占め、現時点では必ずしも大規模なリソースを投入して取り組みを進めている企業は多くないことがうかがえる。

「ビッグデータの活用に向けて、どのような体制で検討・活動を行っていますか」(複数回答)

 ビッグデータ活用の取り組みが進んでいない理由として「具体的に何に活用するか明確でない(61%)」「投資対効果の説明が難しい(45%)」を課題として挙げている回答が多いことに加え、より具体的な課題として「担当者のスキル不足(45%)」「ビジネスとデータの両視点で検討できる人材の不足(36%)」「担当者の人数不足(32%)」「受け皿となる組織が存在しない(29%)」のように、ビッグデータ活用を推進できる体制が整っていないことが明らかになった。

「今後、貴社でビッグデータの活用を進めていく場合、どのようなことが問題・課題となりそうですか」(複数回答)

活用先進企業は「実証実験」「外部企業との取り組み」などを並行して実施

 すでにビッグデータの活用が進んでいる一部の企業においては、「実証実験の実施」「外部企業との取り組み」「関連システムの企画・開発」を並行して進めている。これらはそれぞれ「自社ビジネスにおける活用可能性の検討」「社外にあるデータや高度な分析スキルの確保」「データを収集・蓄積し、分析するシステムの構築」につながる。

「ビッグデータの活用に向けて、具体的な検討・活動を行っていますか」(複数回答、売上規模別)

 NRIは、ビッグデータ活用を実現するには「ビジネス」「分析」「IT」の3視点をもって検討を進めることが重要と考えており、これを具備した推進体制を整備するためには、社内のみならず社外を有効に活用していくことも重要だと指摘。そして、ビッグデータ活用の実現に向けた効果的なアプローチとして、まずは実証実験などを通じた取り組みで、ノウハウを蓄積していくことを提案している。

(川島 弘之)