クラウドがサービス事業者に与える影響とビジネスへの提言、JISAが公表


 一般社団法人 情報サービス産業協会(JISA)は10日、クラウドコンピューティングがシステム開発などの情報サービス事業に与える影響や課題を整理した「クラウドコンピューティングが情報サービス事業者に与える影響とビジネス拡大に向けての提言」を公表した。全82ページのPDFとしてWebサイトに公開している。

 同レポートの特徴は、(1)顧客に最も近い立場で情報システムを開発するSIerなど情報サービス事業者の視点に立っていること、(2)開発現場での実践経験に基づき現実的な対応策を示していることにあり、クラウドコンピューティングのメリットだけに焦点を当てた多くのレポートとは一線を画すとしている。

 例として、インフラ開発については「人月ベースの場合、作業をスピードアップすればするほど売上は減少するため、クラウドによる作業効率化は案件単位でみると売上減につながる。しかし、作業期間の短期化によって多くの案件に対応できるようになるため、機会損失やアイドル期間が減り、ビジネスを安定させることができる」などと言及。

 アプリケーション開発については、「開発の工程によって必要な開発環境のリソースは変動するが、クラウドで必要なリソースをオンデマンドで確保することにより、開発環境の構築や維持に関するコストを最適化できる」などとするほか、パッケージベンダーやデータセンター事業者が得られる効果と影響などにも言及している。

 一方、利用者に対しては、クラウドコンピューティングの導入では、コストの低減や開発期間の短縮、情報資産コストの軽減などにメリットがある一方、ライセンス体系の複雑さ、データの分散配置によるリスク、ネットワークの遅延、障害発生時の原因追及手法が難しいことなど、クラウドならではの新たな課題についても認識した上で、クラウドの導入を検討するよう提言している。

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(川島 弘之)
2011/8/11 14:09