EMCジャパン、震災で直面したIT-BCPの課題と対策を説明
新サービスとして「IT-BCPアセスメントサービス」を提供開始
EMCジャパン マーケティング本部 マーケティング・コミュニケーション部 部長の笛田理枝子氏 |
EMCジャパン株式会社は14日、「20年間の災害対策実績から見た3.11以降のIT-BCPのあり方」と題した記者説明会を開催した。東日本大震災という未曾有の災害を経験した今、企業はIT-BCP(事業継続計画)にどう取り組んでいけばよいのかを説明した。また、あわせて、新サービス「IT-BCPアセスメントサービス」を6月から提供開始したことも発表した。
説明会ではまず、EMCジャパン マーケティング本部 マーケティング・コミュニケーション部 部長の笛田理枝子氏が、東日本大震災の発生時におけるEMCの緊急対応について述べた。「震災の発生した3月は、日本企業の多くが年度末を迎え、EMCジャパンでも通常月より1.5倍の納品が予定されていた。その中で当社は、地震発生から2時間後には、グローバル全社でサプライチェーンの緊急体制を整備。破損製品の代替品の緊急手配や、被災地域対応のための保守部品の重点配置、国内輸送方法および輸送ルートの確保などによって、3月末日までにすべての納品を完了した」という。
財務的な支援としては、被災したリース契約の顧客への契約期間延長に対応したほか、被災によって資金繰りが負担になっている顧客には、新規導入契約時の支払い据え置き期間を提案。さらに、グローバルで震災についての情報共有体制を徹底し、地震発生直後から社内テレビ「EMC TV」や社内会議、情報共有サイトなどを活用して、震災の現状報告や義援金の呼びかけなどを行ったという。「ボストン本社では、桜の木の植樹が行われるなど、EMC全社で日本を最優先で支援する機運が高まっている。今後も、継続して日本復興に向けた支援活動を行っていく」との考えを示した。
EMCジャパン マーケティング本部 プログラム推進部 マーケティングプログラム・マネージャの若松信康氏 |
続いて、EMCジャパン マーケティング本部 プログラム推進部 マーケティングプログラム・マネージャの若松信康氏が、東日本大震災におけるIT-BCPへの影響について、「通常、IT-BCPは、災害などが発生した後、BCP発動、業務再開、業務回復、全面復旧というフェーズで進められる。しかし、今回の震災では、電力問題や燃料不足による二次被害の影響拡大や、人・モノの移動が長時間困難であったことなど“想定外”の事態に直面した。そのため、想定外のシナリオに対する意志決定の遅れや、業務としての復旧ができないといった課題が顕在化し、IT-BCPが機能不全に陥ってしまった」と説明する。
そして、こうした課題が顕在化した背景として、(1)運用とリソースの分断、(2)可視化できていない、(3)テストしていない/できていない、(4)人員不足による精神的重圧--の4つの要因を挙げ、「震災後、多くの企業がIT-BCPの見直しを検討し始めているが、これからのIP-BCPでは、必要最低限のコストの中で、サービスレベルを順守しながら、必要なシステムとデータを保護していくことが基本検討要素になる」(若松氏)と指摘している。
東日本大震災におけるIT-BCPへの影響 | 災害対策実装時の基本検討要素 |
機能性、経済性の高いIP-BCPに向けた検討ポイントとしては、「短期的な取り組みでは、レプリケーション統合や重複排除バックアップによる災害対策運用の統合・効率化が重要になる」と若松氏。具体的には、(1)統合によるシンプル化、(2)整合性管理による業務としての復旧と継続性維持、(3)可視化によるデータ保護環境・リスクの事前把握--という3つの取り組みによって、運用者の負担と災害対策のリスクを軽減する必要があるという。
一方、中長期的には、「ITインフラ全体の最適化によって、本番サイトのメタボを解消し、リスクの根源を解消することが必要だろう。サイロ化したメタボ型本番サイトを、そのまま災害対策サイトにしたのでは、運用コストは膨らむばかりだ」(若松氏)と、ITインフラの最適化による効率化された災害対策環境が求められるとしている。
これからのIT-BCPの検討ポイント | IT-BCPアセスメントサービスの特徴 |
また、説明会の中で若松氏は、今回の震災で直面したIT-BCPの課題を解消し、有事に確実に機能するIT-BCPを最短で実装するための新サービス「IT-BCPアセスメントサービス」を6月から提供開始したことを発表した。
このサービスは、EMCが蓄積してきたインフラ全体最適化のノウハウを生かし、ビジネス分析に基づいた確実な復旧手法を定義。さらに、現行のコスト内で運用できるプランを策定し、最短3か月でIT-BCPのアセスメントを完了する点が大きな特徴だ。
若松氏は、具体的なサービス内容について、「まず、要件定義で、ビジネスインパクトの分析や、リカバリーグループおよびサービスレベルの定義を行う。次に、相互依存関係分析で、インターフェイスの分析やアプリケーションの改修方針などを決めるとともに、現状のインフラ環境をすべて洗い出し、最適なDR、バックアップ方式やアーキテクチャを検討し、提案する。そして、ROIを分析し、短期的・中長期的なロードマップを作成していく」と説明している。