情報爆発・クラウドで必要なデータマネジメント、研究・普及団体が発足

ベンダー企業・ユーザー企業約20社で


左からJDMC理事の平野洋一郎氏(インフォテリア)、同理事の木内里美氏(大成ロテック)、同理事の三澤智光氏(日本オラクル)、同会長の浜口友一氏(NTTデータ)、同理事の三浦壽男氏(富士通)、同理事の金井啓一氏(日本テラデータ)
データマネジメントとは

 データや情報のマネジメントに関する社会的認知を高め、企業や行政機関などがデータマネジメントを実践するための土壌を創ることを目的に、一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム(以下、JDMC)が18日、設立された。発起人は20社以上のベンダー企業・ユーザー企業。

 同団体の目的は、企業や行政機関に蓄積されるデータを効率よく活用できるよう、データの汚れなどを排除し、データマネジメントの概念を普及・実践すること。重要な情報・ビジネスデータを明確にし、それが正しい状態で、必要な人がいつでも使用できるように、生成・蓄積・活用・破棄に至るデータライフサイクルをきちんと回していく、その土壌をつくり出すことだ。

 多くの企業・組織では、全社を横断してデータを的確に収集・管理・分析・活用する仕組みや組織を持たず、データの精度や鮮度を保てずにいる。データのコード体系整理、マスタ統合、名寄せも進まず、その結果、「国内や海外の事業所における現在の売上や製品在庫はどうか」「最も取引量の多い資材メーカーはどの会社で、そこからはどの品番の部品をいくらで仕入れているか」「自社の売上高に最も寄与している顧客はどんな属性を持つ人か」といった、本来なら経営上の基本的情報となるべきデータを可視化できないでいる。

住所に@マークが混じっていたり、生年月日が未来の日付になっていたり、入力ミスに起因するデータの汚れの例入力が正しくても取引先で見積もりの表記が異なる場合もあり、データの効率的な利活用を妨げている

 問題は、ユニークな個人・企業コードが社会に存在しないことだ。また、後々データをどのように活用するかを念頭に置かず、ベンダーもユーザーも目の前のシステム開発にばかり目を奪われ、個別最適のシステム化が進められている点も挙げられる。

データが汚れる直接的な要因組織的・社会的な要因も

 「これらは以前から指摘され続けている問題だ。加えて最近は“情報爆発”が現実のものとなり、これまで以上にデータを部門間・企業間をまたがって統合・相互利用する仕組みが求められている」と、JDMC理事 日本テラデータ コーポレート・エバンジェリスト/エグゼクティブ・コンサルタントの金井啓一氏は語る。

 一方でクラウドの普及により、データマネジメントへの関心が高まっている現在、こうした課題に「研究」「普及・啓発」の二面から取り組もうというのがJDMCである。

 「この問題には、データを専門に扱う組織や担当者が不在であること、投資判断の軸が効率化のみで、データマネジメントの効果に対する意識が希薄であった、など体制・意識の欠如も起因している。これらの課題を解消し、データマネジメントのあるべき姿に向かうべく、研究と普及・啓発の取り組みを進めていく」(同氏)。

 具体的な目標は、「データの適正な処理・活用手法」「データ関連製品・サービスの評価」「データマネジメント実施組織・体制の整備」「人材の育成」「国内外のデータ規約・標準の調査・提言」を実現すること。鍵となるのはユーザー企業の参加で、「データを実際に活用するのはユーザー企業。広く参加を呼びかけていく」(同氏)としている。

 ユーザー企業としては、すでにアスクル株式会社、株式会社インプレスビジネスメディア、カシオ計算機、協和発酵キリン、大成ロテックが参加を決めている。今後はベンダー企業・ユーザー企業それぞれ50社を目指すほか、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)との連携も視野に、ユーザー企業の拡大に努めるとしている。

 すでに「調査研究活動」と「普及・啓発」を柱とした活動内容案も検討されており、5月以降具体的な研究テーマを策定していく予定。

 金井氏は「企業情報システムのためのコンソーシアムの枠を超え、社会的な影響力がある斬新な活動を追求する。また企業個別の利害を超え、オープンな活動を志向し、コンソーシアム内外の有識者や有力団体とも積極的に連携を図る」と意気込みを述べている。

活動内容案3月31日現在の参加会員企業
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(川島 弘之)
2011/4/19 06:00