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“Analytics of Everything”の時代に備えよ――、IoTとクラウドへのシフトを進めるTearadata

Teradata PARTNERS 2015レポート

 「変化は、存在し続けるために非常に重要なプロセスだ。そしてデータは変化のためのオポチュニティを提供する。データを分析することでその価値はよりいっそう高まっていく」――。

 10月19日(米国時間)、米国アナハイムで開催されたTeradataの年次ユーザーカンファレンス「Teradata PARTNERS 2015」のオープニングキーノートで、TeradataのCEO マイク・コーラー氏は、データアナリティクスの可能性についてこう言及している。

 データウェアハウジングの老舗企業として、通信や金融、流通といった分野で世界中の大企業ユーザーを顧客にもつTeradataだが、「2020年までに世界中で500億のデバイスがつながる時代になる」(Teradata グローバルデータ分析部門担当プレジデント ハーマン・ウィマー氏)という劇的な変化の中にあって、同社もまたこれまでの姿勢を大きく変えることを迫られている。本稿ではPARTNERS 2015でTeradataが行ったいくつかの発表の中から、同社の“変化”を如実に示す2つのアプローチ――、IoT(Internet of Things)とクラウドの戦略について検証したい。

TeradataのCEO マイク・コーラー氏

Teradata Listner:IoTアナリティクスに特化したKafkaベースのマイクロサービス

 今回の発表で最も注目されるのはやはりIoTソリューションのインテリジェントなソフトウェアクラスタ「Teradata Listner」だ。Kafkaをベースに、Cassandra、Elasticsearch、Firehoseといったリアルタイムなストリーミング処理を得意とするオープンソースで構成されており、Twitterでも使われているクラスタ管理プラットフォームのMesos上に構築されている。

 Listnerは、センサーやWebからのアクティビティ、ソーシャルネットワークの通知などをイベントとして受け取ると、Kafka/Firehoseを経由してマルチストリーミング処理を行い、その結果をRESTでもって各ターゲットシステムに書き出す。ターゲットはTeradata DatabaseやAster(Teradataの分析ソリューション)、Hadoopなどプラットフォームを問わない点が特徴だ。ターゲットの場所はオンプレミスでもクラウド上でもいい。もちろんAWSなど他社のクラウドプラットフォームでもかまわない。

Teradata ListnerはKafka、Cassandraなどで構成されるマイクロサービスアーキテクチャのソフトウェアクラスタ。IoTデータのリアルタイムストリーミング処理に特化している
Teradata Labsのプレジデント、オリバー・ラッツェンバーガー氏

 Teradata Labsのプレジデントであるオリバー・ラッツェンバーガー氏は「Listnerはデバイスの“声”に耳を傾け、声が発せられた(イベントが発生した)と同時に自動で分析までをサポートするセルフサービス」と説明している。全体的な印象としては、Amazon KinesisをKafkaをはじめとするオープンソース技術で再構築したようなイメージだ。

 Listner自体はソフトウェアクラスタなので、Teradataアプライアンスはもちろんのこと、コモディティなハードウェアやクラウド上でも稼働させることができる。データストリームやターゲットの管理はGUIダッシュボードで可能だ。Teradataは同社のIoTインテグレーションサービスの一環としてTeradata Listnerを提供するとしており、単独のパッケージとしてて販売する予定はない。

 「数百億のデバイスがつながる時代が来ようとしているのに、現在ではセンサーデータのうちたった1%しか分析されていない。このままではIoTにおいてもデータのサイロ化が起こってしまう。それは絶対に避けなければならない。つながるだけでなく、リアルタイムに分析までできてこそIoTは価値をもつ」とハーマン氏は強く語る。

 モノのデータが分析までたどり着かないのは、モノの数が多すぎてインテリジェントに処理できない点が大きい。セルフサービスにこだわり、「どんなデバイスの声も聞き逃さない」(ラッツェンバーガー氏)というTeradata Listnerは、IoTが抱えている課題に対し、Teradataが示した現時点での最適解と言うことができる

Listenerにはストリーミングデータやターゲットを管理できるGUIダッシュボードも用意されている
Listnerで構築可能なIoTシステムのユースケース。ソーシャルの通知や自動車にとりつけたトラッキングシステムをリアルタイムに関知してインテリジェントに定型処理や予測分析、その後のアクションまでを行うことが可能に

(五味 明子)