年内には国内企業ユーザーの30%でWindows 7導入へ

~日本マイクロソフト、パートナーコンファレンスを開催


日本マイクロソフトの樋口泰行社長

 日本マイクロソフト株式会社は9日、東京・芝公園のザ・プリンス パークタワー東京において、「マイクロソフト パートナーコンファレンス 2011」を開催した。

 同コンファレンスは、毎年1回、同社のパートナー企業を対象に開催しているもので、最大規模となる今回の開催では1200人のパートナー企業が参加。これを皮切りに、全国7カ所で開催される。

 予定時間から遅れ、午後1時20分から開始した基調講演では、日本マイクロソフトの樋口泰行社長が、「日本マイクロソフトの新年度事業方針」をテーマに講演。今年7月から始まった新年度の事業方針を紹介するととも、クラウドビジネスへの取り組みなどについて説明した。

 冒頭、樋口社長は、「日本時間の12時過ぎから、マイクロソフトのオンラインサービスが停止し、ご迷惑をおかけしている。この件について、おわびを申し上げる。米カリフォルニアの原子力発電所2基が緊急停止したことが影響しているとみられる」などと説明した。なお、コンファレンスの締めくくりのあいさつでも樋口社長は、この件について言及。「午後4時30分時点で完全に復旧した。ご迷惑をおかけした」とあらためて謝罪した。

 

2011年度は「着実に進化を遂げた1年」

2011年度は着実な成果を上げたという

 まず樋口社長は、今年6月に終了した同社2011年度の取り組みについて触れ、「着実に進化を遂げた1年」と総括。「Windows 7、Office 2010の導入/利用促進」、「クラウド事業の本格化」、「社名変更と本社移転、より日本に根付いた企業へ」、「グローバルレベルのパートナーシップ」、「ソリューションビジネスの加速」の5つの観点から説明した。

 「Windows 7およびOffice 2010は、大変評価が高い製品であり、現時点で国内企業の23%にWindows 7が導入されている。これが年内には30%に達すると予測している。米国ではさらに進展しており、今年中に42%にまで進むことになると予測している。また、クラウドパートナーは国内で1000社を超えており、グローバルなパートナーシップにおいても、トヨタ自動車や富士通といった例が出てきている。お客さまを熟知したパートナーとの連携がマイクロソフトにとっては不可欠。最近になって、パートナー各社から、ようやく法人ニーズをきっちりととらえたエンタープライズビジネスができるようになったという声をいただいている。会社としても、この3年間でかなりまとまってきたと考えている。コンサルティングチームの増員を図り、引き続き、エンタープライズビジネスにも取り組んでいく」と語った。

 このなかで樋口社長は、2011年度において、日本法人が世界第1位の子会社として、社内表彰されたことを公表した。

 

新年度は3つの観点から取り組む

 続けて、7月から始まった2012年度の方針について説明をはじめた。

「デバイス/コンシューマ」での施策

 樋口社長が新年度の重点テーマとしたのは、「デバイス/コンシューマ」、「クラウド」、「ソリューション」の3点。そして、お客さま・パートナーからの信頼を得ることが大切であるとした。講演は、3つのキーワードから進むことになった。

 「デバイス/コンシューマ」では、魅力ある新製品の投入が不可欠とし、Windows Phone、Windows スレートPC、KINECT for Xbox360の3つをあげながら、「この分野ではチャレンジャーの立場である。特にWindows Phone 7は、従来のWindows Mobile 6とは違う流れの製品であり、ゼロから作り直したもの。Exchangeなどとの連携、Office製品が利用できるという点を含めて、企業ITシステムと最も親和性が高いスマートフォンである。最後発であり、まだアプリケーションの数は少ないが、日本では60数本のアプリケーションが対応している。投入まで時間がかかり、追いかける立場となったが、これからキャッチアップしていく」としたほか、「Slate PCは、顧客との接点で利用される端末である。また、PCは今後も生産性が求められる部分で、その地位は揺らがないと考えている。業務のコアの部分にはPCが必要であり、継続的にPCの価値訴求を行っていく。一方、7月から社内体制として、コンシューマ・パートナー・グループを新設して、デバイス/コンシューマ事業を推進していくことになる」などとした。

 また、「クラウド」では、「東日本大震災以降、プライベートクラウドに対する要望が高まっており、それに対する取り組みを強化していくほか、Office 365の販売開始、Intuneの次期バージョンの投入などを含めて、フルスタックでのクラウドサービスを提供していく。さらに、すべてのパートナー会社にクラウドを扱っていただけるようにするほか、パートナークラウドの本格化に取り組みたい。さらに異業種との連動によるクラウドサービスの展開などにも力を注ぐ」などとした。

 パートナークラウドとしては富士通とのAzureにおける提携を例にあげたほか、異業種とのパートナーシップでは、角川グループの映画チケットの販売サイト「ムビチケ」を紹介。「詳細はお話しできないが、業界クラウドといえるような商談がいくつも出ている」と語った。

 さらに、「クラウドが企業の本格導入フェーズに入っている」とし、震災後のニーズの変化としてリモートワークや可用性、省電力に関心が集まっていること、グローバル競争力強化の基盤として注目されていること、日本マイクロソフトのサポート向上、可用性確保、品質向上といった体制強化に対する要望があることなどに触れた。

 「ソリューション」では、競争力のある製品、サービスの継続的提供のほか、パートナーとのエコシステムの拡充、サポート体制の強化をあげ、「堅牢なデータベースを提供できるようになるなど、ミッションクリティカルシステムへの対応強化、グローバル経営を可能にするIT基盤構築の支援が鍵になる。売って終わりではなく、お客さまの要求に最初から最後まで応えるソリューション提供が必要。製品や技術がいいというだけでは、会社の姿勢が問われる。お客さまはどんなことを求めているのかといったことを吸収し、お客さまに対する貢献を、パートナー各社と一緒になって実現したい」などと語った。


「クラウド」の施策「ソリューション」の施策

 

日本には2100万台のWindows XPが存在

日本マイクロソフトのエンタープライズパートナー営業統括本部 五十嵐光喜統括本部長

 樋口社長に続いて、日本マイクロソフトのエンタープライズパートナー営業統括本部・五十嵐光喜統括本部長が、具体的な取り組みについて触れた。

 五十嵐統括本部長は、全世界に3億台以上のWindows XPが存在していること、1億9000万台のOffice 2003搭載PCがあること、7500万台以上のInternet Explorer 6があることを示しながら、「日本でも2100万台のWindows XP搭載PCが依然として利用されている。こうした古いPCを移行させる必要があり、それをパートナー各社と図りたい。お客さまのスムーズに移行を支援するためにDDPSと呼ばれる新たなパートナー支援制度も実施する」などとした。

 そのほか、「これまでのビジネスの継続の先にWindows Phone 7がある。接続性、機能性、セキュリティという点で、企業ユーザーには最適の製品。パートナー各社のエンジニアのスキルを活用させてもらいたい」などとした。

 クラウドについては、まずOffice 365について言及。Office 365はリリースから3カ月を経過し、グローバルで25秒ごとに1顧客を獲得していること、北米が最も顧客数が多く、次いで日本の顧客数が多いこと、さらに国内では3カ月で約100社の販売パートナーが増加し、800社規模になったことなどを紹介した。

 さらに、Dynamics CRM Onlineでは、圧倒的なコストパフォーマンスと開発生産性の高さを背景に、Salesforce.comからのリプレースが多いこと、クラウドとオンプレミスの展開選択肢があることなどを強調。Windows Intuneでは、リモートサポートによるPC管理に優れていること、資産管理に迅速に対応できることなどを示しながら、10月18日から次期バージョンを投入するとした。


Office 365の順調な進ちょくをアピールDynamics CRM Onlineの特徴Windows Intuneの特徴

 また、五十嵐統括本部長は、「顧客の経営課題と求められる提案」として、「お客さまの事業部門と新規ビジネスを立ち上げる」、「経営の可視化」、「持たざるIT パートナークラウド」、「ワークスタイルの変革」の4つのポイントをあげ、そのなかで、Azureを活用することで新規ビジネスの立ち上げを支援できること、SQL Serverを利用して、経営の見える化をワンストップで提案できること、Hyper-VとSystem Centerの組み合わせにより、仮想化のテクノロジーコストがVMwareよりも低価格で済むこと、Lyncによるフレキシブルなワークスタイルを実現し、マイクロソフト全体では、これにより年間212億円以上のコスト削減を実現していることなどを説明した。

 また、オンプレミスの自社運用環境で所有しているライセンスを、パートナークラウドに移行して活用できる新たな「ライセンスモビリティ」と呼ぶ仕組みを提供することも明らかにした。

 「これにより、自社運用をしている企業ユーザーは、既存の投資資産を捨てずに、パートナークラウドを新たな選択肢にできる」などと語った。


仮想化テクノロジーコストの比較パートナーとこれらのソリューションをドライブしていきたいという
関連情報
(大河原 克行)
2011/9/12 06:00