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検索と広告の次はAIとクラウド Google I/Oのメッセージ

専用ハードを備える高速な深層学習クラウド

 AIはGoogleの戦略にとって決定的に重要だという。Moor Insights & Strategyのアナリスト Patrick Moorhead氏は「GoogleはAIに賭けざるを得ない。MicrosoftとFacebookがそう遠くない後ろから迫っている」とComputer Worldに語っている。また、Technology Business Researchのアナリスト、Ezra Gottheil氏は「彼らは世界の誰よりも多くの、人間とコンピューターのやり取りのデータを持っているのだ」と述べ、GoogleがAIを追求するのは当然としている。

 Google I/Oの基調講演でPichai氏は「われわれは、次世代の構築のため10年を費やしてきた」と語り、AI分野のコンピューティングを加速するために2つの方策を進めると説明した。一つは「機械学習システムのコアコンポーネントのオープン化」、もうひとつは「Google Cloud Platform(GCP)を通じた機械学習機能の開放」だ。

 前者で大きいのは昨年11月、クラウドで利用できる深層学習(ディープラーニング)のライブラリ「TensorFlow」をオープンソース化している。オープンソースの深層学習ライブラリは他にもあるが、TensorFlowへの開発者の関心は極めて高く、GitHubで最も活発なプロジェクトになったという。

 これにはAmazonも刺激を受けたようで、半年後の今年5月12日に自社の深層学習ライブラリ「DSSTNE」(Deep Scalable Sparse Tensor Network Engine)をオープンソース化すると発表している。複数GPUの処理への対応などが特徴で、AWSの「g2.8xlarge」GPUインスタンスで動作させた場合、TensorFlowの2.1倍高速だとアピールしていた。

 だが、Google I/Oでは新たに「TensorFlow」専用のハードウェアアクセラレータ「Tensor Processing Units(TPU)」が発表された。「ムーアの法則の3世代分、通常であれば7年かかる進歩を達成した」もので、単位消費電力当たりの性能はGPUよるシステムの10倍という。Amazonを突き放した格好だ。

 TPUは、GCPとTensorFlowを基盤とするクラウドベースの深層学習プラットフォーム「Google Cloud Machine Learning」でも採用されている。同社はTPUを外販する考えはなく、自社クラウドの差別化要素としている。クラウドで提供する高速な深層学習は、特にエンタープライズ向けのビッグビジネスになると期待されている。

 では、エンタープライズへの取り組みはどうなのだろう。

(行宮翔太=Infostand)