トピック

脱SIで明朗会計を実現、中小企業に寄り添ったクラウド化支援サービスとは?

企業の大部分はすでに、何らかの形でクラウドサービスを利用しているといわれているが、社員数の限られた中小企業においては多くの場合、SaaS利用や既存システムをそのままクラウド環境に移行するクラウドリフトにとどまっている。移行に伴うコストの不明朗さや面倒を見てくれるベンダーの不足など、課題が山積しているからだ。どうすれば、クラウド移行に踏み切れていない中小企業の課題を解決し、クラウドシフトに導けるのか。

NTT東日本
サービスクリエイション部
クラウド・サーバ&アプリケーションセンタ
ストラテジー&コンサルティング部門
シニアスペシャリスト
白鳥翔太氏

中小企業のクラウドシフトを阻むものとは

スケールのしやすさや運用管理の負担軽減など、クラウドサービスのメリットは多くのIT担当者に周知されており、システムの新規導入や更新を行う際にクラウドサービスの利用を優先して検討する「クラウドファースト」という考え方が、日本企業の間でもすっかり定着した感がある。

ベンダーから提供されるサービスのほとんどがクラウドサービス、もしくはクラウドにも対応した製品となっており、オンプレミスからクラウドに移行していく「クラウドリフト&シフト」は、ますます進んでいくことが予想される。しかし、一部の中小企業では、クラウドリフト&シフトに踏み切れていない状況にあるという。

例えば、IT担当者の数が少なく移行作業に割けるリソースが足りない、移行ノウハウがない、移行コストが不透明で限られた予算からは捻出しづらい、クラウド移行を支援してくれるベンダーがいない、といったさまざまな課題が中小企業のクラウド移行を阻んでいる。一部業務システムでSaaS型クラウドサービスを利用している程度で、サーバー類については、いまだクラウド移行に踏み切れていない企業が多く残っているのが現状だという。

「社員が50人を超えるくらいの規模になると、ファイル共有のアクセス権限を管理したくなります。簡易なSaaS型クラウドサービスでは要件を満たせなくなります」と、NTT東日本 サービスクリエイション部 クラウド・サーバ&アプリケーションセンタ ストラテジー&コンサルティング部門 シニアスペシャリストの白鳥翔太氏は指摘する。中小企業でも自社でサーバーを管理する需要は大きいという。

とはいえ、ITに詳しい担当者がいない企業では、要件を満たしたITシステムを自前で構築するのは難しい。一方、SI(システム構築)ベンダーに構築や運用を頼むと、コストがかさむし不透明だ。「中小企業が必要とするシステム基盤をパッケージ化した安価なサービスが求められています」(白鳥氏)。

こうした需要に応えるサービスが、NTT東日本が提供する「クラウド導入・運用サービス」である。ユーザーが求めるシステム基盤をパブリッククラウド上に構築するクラウドSIと、これを運用するMSP(マネージドサービスプロバイダ)のサービスを一貫して提供する(図1)。

図1:「クラウド導入・運用サービス」の全体像

クラウドSI/MSPをメニュー化して明朗会計で提供

「クラウド導入・運用サービス」の特徴は、パブリッククラウド上にシステム基盤を構築して運用するために必要なサービス群をメニュー化/カタログ化し、明朗会計で提供していることにある。これが短納期と低価格を実現させている。

例えば、要件定義のためにヒアリングしてパラメータシートを設定する「構築設定支援」が1時間あたり1万6500円、パラメータシートをもとにネットワーク設定やセキュリティ設定などの基本設定を施す「クラウド基本設定」が1契約あたり11万円、仮想サーバーやストレージなどクラウドが用意している標準サービス群をパラメータに沿って設定する「サービス設定」が1サービスにつき5万5000円など、細かく定価が設定されており、予算が組みやすくなっている。

パブリッククラウドとしては、Amazon Web Services(AWS)またはMicrosoft Azureを利用できる。サービス設定の対象は、AWSがAmazon EC2(仮想サーバー)など40サービス、AzureがVirtual Machines(仮想サーバー)など29サービス。業務アプリケーションのようにユーザーごとに異なるシステム要素についても、定価ではないが打ち合わせのうえ費用を決める。サーバー/ストレージや全ユーザーに共通的なミドルウェアなど、サービス内容に差がない要素については、共通する設定と運用内容を抽出し、定価ベースでパッケージ化した(図2)。

図2:「クラウド導入・運用サービス」のサービス提供範囲

NTT東日本は、システムの利用コストを下げるうえで一番重要なポイントとして、リソースの使用率を把握することを挙げている。使用率が低いサーバーを大量に契約するのは無駄だからである。サーバー負荷が上がる時だけリソースを拡張する使い方や、コンテナ/サーバーレス技術の活用なども有効だという。

「クラウド導入・運用サービス」では、リソースを無駄なく使うためのサイジングも実施する。ヒアリングを行ったうえで、ユーザーのワークロードに適したシステム構成を決める。ヒアリングでは、ユーザーが自前で設計したシステム構成が適性かどうかを判定するアセスメントも受けられる。

なお、NTT東日本は、クラウドにアクセスするためのネットワークサービスも提供しており、「クラウド導入・運用サービス」と組み合わせて利用できる。例えば、インターネットを介さずにVPNと閉域網を経由してAWS/Azureに接続する回線サービス「クラウドゲートウェイ クロスコネクト」などを用意している。

中小企業のデータ管理需要を汲み取りサービス化

構築プロセスが従来のSIとは異なることも、短納期と低価格に寄与している。「要件定義を経て設計するという大きな流れはSIと変わりませんが、個々の工程で推奨パラメータを用意しパッケージ化することでわかりやすくしています」(白鳥氏)。そのため、相談を持ち掛けてから利用開始までのリードタイムは1~3カ月と短い。

具体的には、数多くの機能の中から、中小企業のユーザーにとって共通するものを、あらかじめベストプラクティスとしてピックアップしている。反対に、設定しておいた方がよいけれども忘れてしまいがちなセキュリティ設定などは、最初から標準設定として組み入れている。定義済みの構成で構築することから、要件定義のドキュメントを残す必要もない。

さらに、サービスの提供体制においては、同じエンジニアが要件定義のヒアリングから構築まで一貫して責任を持つ。これにより、情報伝達などの無駄を無くしている。構築後の運用は運用チームに任せることになるが、最初の相談からカットオーバーまで同一のエンジニアが担当する。担当者の顔が見えることも、中小企業にとっては安心材料だ。

白鳥氏は「中小企業であっても業務データは、カントリーリスクや責任共有モデルなどの観点からSaaSのファイル共有サービスではなく、自社の管理下にある環境でしっかりと管理すべきです」と指摘する。このうえで、「サーバーのイニシャルコストや保守費用だけではなく、設備コストや運用管理コスト、その他オンプレミスで可視化されないコストといった点で、オンプレミスやデータセンターよりもパブリッククラウドが優れています」という。

また、ファイルを共有する需要や、従業員の増員にともなうファイルへのアクセス権限管理の需要が出てきたら、ID管理やセキュリティ管理などのガバナンス管理機能の運用が付いたクラウドサービスが有効だと指摘する。

システムの運用時は稼働状況を監視し、トラブル発生時には1次対応を実施する。システムの負荷が高くなりリソースが足りなくなった場合は、事前の取り決めの通りに、リソースを一時的に増やして対処するといった運用も自動でやってもらえる。セキュリティパッチの適用など、日々の運用も代行する。

企業ごとにITリテラシは様々だが、いずれの場合も「クラウド導入・運用サービス」のメリットは大きいという。例えば、NAS(ファイルサーバー)しか使ってない企業でも、場所を選ばず使える、容量を気にせず使える、強度なセキュリティで守られるといったメリットが期待できることから、クラウドでファイルを管理する需要がある。IT技術力に長けた企業も、サービスインしたWebサービスの運用を外部に任せることで、本来の業務に専念できる。ファイルサーバーを導入する際のモデルケースは、図3の通りである。

「クラウド導入・運用サービス」を利用してパブリッククラウド上にファイルサーバーを導入するモデルケース

全国でサービス提供可能な体制を整備

クラウドSIやMSPのサービスを提供するベンダーとしては、クラウド専業のインテグレータもいる。しかし、こうしたクラウド専業インテグレータの多くが、人材が東京に集中している。一方、NTT東日本は全国でサービスを提供するための体制が整っている。

さらに、2023年10月付で組織を変更し、顧客の種類ごとに複数の部署に分散していたクラウドエンジニアを1つの部隊に集約した。これにより、クラウドエンジニアの提供体制を強化した。

クラウド専業インテグレータとのパートナシップもある。クラウド専業インテグレータは新興企業が多いことから、24時間365日の運用体制が整っていなかったり、イノベーター・アーリーアダプター層をターゲットにしていることが多い。こうした取りこぼしてしまいがちな案件をNTT東日本の「クラウド導入・運用サービス」でカバーする。

NTT東日本は、以上のような中小企業のクラウド化を支援するサービスを展開するとともに、専門のIT担当者不足に悩む中小企業のITシステム全般について、相談に乗ることのできる体制を整えている。そもそもクラウド化すべきか、クラウド化すればどのようなメリット、デメリットがあるのか、といった初歩的なものからクラウド化のメリットを最大限に引き出す方法まで、NTT東日本をIT部門のITパートナーとして活用することも可能だ。

<お問合せ先>
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
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